戦の始まり
数日後、太郎は家康を電王社に連れて行くことにした。家康はスーツを着せられ(「この首絞め布、なんじゃ!」とネクタイに悪戦苦闘)、偽の社員証を首に下げていた。オフィスに入ると、同僚の山田花子(25歳、クリエイティブディレクター)が目を丸くする。
「太郎、このおじいさん、誰!?コスプレ!?」
「いや、えっと…うちの遠い親戚の…家康さん!インターンで来たんだ!」
「インターン!?70歳過ぎて!?」
花子は笑い転げるが、家康は冷静にオフィスを見渡す。電王社の資料を手に取り、パラパラとめくった。「ふむ。この『電王社』、業界の覇者か。されど、クライアントの心を軽んじ、金と力で押すのみ。隙だらけじゃ」
その時、電王社の大口クライアント、老舗和菓子屋「松月堂」の社長・松本剛造(60歳)が来社した。電王社の高飛車な提案(「若者向けに和菓子をエナジードリンクとコラボさせましょう!」)に激怒し、「こんなふざけた企画で、うちの150年の歴史が汚れる!契約は終わりだ!」と吐き捨てて帰ってしまう。
上司の田中部長(45歳、口ひげがトレードマーク)は太郎を呼び出し、「お前、松月堂をなんとかしろ!挽回できなきゃボーナスなしだぞ!」と恫喝。太郎は途方に暮れるが、家康が一歩踏み出した。
「太郎、この『松月堂』を我らが初陣とせよ。某の策で、民の心を掴んでみせる」
「じいちゃん、ほんとにできるの!?和菓子屋の社長、めっちゃ頑固だよ!」
「某を信じよ。戦は、まず敵の心を読むことから始まる」
家康の目がキラリと光った。太郎は半信半疑ながら、なぜか胸が高鳴った。