静かな夜と二人の語らい
菊乃屋の成功で、天下統一エージェンシーの名は業界に知れ渡る。次のクライアントとして、地元の老舗酒蔵「清龍酒造」からオファーが舞い込む。だが、電王社も同じ酒蔵を狙い、黒田龍一自らが動くとの情報が入る。家康は刀(実は100均の模造刀)を手に、「太郎よ。次の戦は、電王社との正面対決じゃ。民の心を掴むのは、某か、黒田か。試される時が来た」と告げる。
太郎は家康の背中を見ながら、胸を高鳴らせる。「じいちゃん、俺、絶対負けない。天下統一エージェンシー、天下取るよ!」チームは新たな戦に向けて、夜通し作戦を練る。渋谷の雑居ビルに、希望と闘志の灯がともる。
一方、電王社のオフィスでは、黒田がワイングラスを傾け、笑う。「徳川家康?面白い。だが、この業界は俺の戦場だ。天下統一エージェンシー、まとめて潰してやる」
戦国の知恵と現代のデジタルが融合した天下統一エージェンシーの戦いは、さらなる高みへ。電王社の策略と、家康の調略が交錯する中、太郎たちの旗は、まだ高く掲げられ続ける。
### **第三章: 過去の傷と新たな誓い**
#### **1. 静かな夜と二人の語らい**
9時25分、渋谷の雑居ビル。天下統一エージェンシーのオフィスは、夜の静寂に包まれていた。窓の外ではネオンが瞬き、遠くで電車がゴトゴトと走る音が響く。オフィスの蛍光灯は半分消され、机の上にはコンビニ弁当の空容器と缶コーヒーが散乱。太郎はノートパソコンを閉じ、背もたれにドサッと凭れた。「はー、今日もバタバタだったな…。清龍酒造のプレゼン資料、なんとか形になったぜ」と呟く。
家康は窓際のソファに座り、100均の模造刀を手に渋谷の夜景を眺めていた。I♥TOKYOのTシャツにスーツのジャケットという奇妙な格好だが、その眼光は戦国の覇者のものだ。「ふむ。清龍酒造か。酒は戦国の世でも兵の士気を高め、民の心を繋いだ。次の戦、電王社との正面対決じゃ。気を抜くな、太郎」と低く言う。
太郎は缶コーヒーを手に立ち上がり、家康の隣に腰掛けた。「じいちゃん、さすがにちょっと疲れたよ。松月堂、菊乃屋と勝ってきたけど、電王社の黒田さん、マジでヤバいって。リスト盗まれたし、絶対なんか仕掛けてくるよな…」とため息をつく。家康は刀を膝に置き、静かに頷いた。「黒田龍一、戦国の梟雄・斎藤道三の如し。策を重ね、民の心を惑わす。されど、太郎よ。戦は敵の強さではない。己の心が試されるのだ」
その言葉に、太郎の胸がズキンと疼いた。電王社での日々、上司に潰されたアイデア、クライアントに突き返された企画。夢を諦め、ただのサラリーマンとして流されていた自分。「…じいちゃんさ、いつもドンと構えてるけど、戦国時代ってほんとにキツかったんだろ?天下取るって、どんな気持ちだったの?」と、ふと尋ねた。
家康の目が遠くを見るように揺れた。しばらく沈黙が続き、ネオンの光が彼の白髪を青く染める。やがて、ゆっくりと口を開いた。「太郎よ。某は天下を取ったが、その道は血と涙に塗れていた。戦国の世は、信じた者に裏切られ、愛した者を失うことの連続じゃ。特に…わしの息子、信康のことは、今も心を抉る」
太郎は息を呑んだ。家康の声には、初めて聞くような重い響きがあった。「信康…?じいちゃんの息子って、なんか歴史で習った気が…」と呟くと、家康は目を伏せ、刀の柄を握りしめた。「うむ。某の長子じゃ。勇猛で、民に愛された男だった。されど…某の手で、その命を奪ったのだ」




