「ほたる」
ほたるを見に出掛けた。少し遠出して。
小さな公園である。
水のせせらぎが心地よく、街灯も、ほたるが集まる場所には置かれていない。
真っ暗な公園には、水辺に突き出すような形で、橋がかけてある。橋というより、スロープと言った方が、正しいのかもしれない。
先客が二名。
あかりは無いから、顔は見えない。姿と、声だけ。
目の前を、ほたるがひかる。
「すぐそこで、ひかっていますね」
たくさん、居るわけではない。
ぽつぽつと、くらやみに点ずるひかりが、知らせてくれる。
ひかって、消えて、また元のくらやみ。
飛んでいるものも、ひかって、消えて。またひかった時には、瞬間移動のやうに、場所を変えている。
ここ数日、エネルギーを吸い尽くされるやうな、生活を送っていた。
そうだったから、どうしても、ほたるを見たくなった。