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獄門学園〜可憐なる姉妹決戦〜  作者: ワサオ
第一章 学園騒動
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7.廉の怒り

 その頃、廉は教室でお嬢様タイプの友達と勉強をしていた。多くの友達が四方八方から廉に質問に繰り出した。


「廉さんは、昨日勉強したのですか?」

「えぇ少しだけ」

「テストのご自信の方は」

「全然大丈夫よ」


 どんだけ質問されようとも、廉は顔色一つ変える事なく、質疑応答をしていた。だが、廉の頭の中では祐がまだ来ない事が少し気になっていた。聖燐に追われているとは言え、いつもはもっと教室に早く来ていたのに今日はやけに遅かった。早く来ないかと待っていた。


「廉さん? どうかしましたの?」

「いえ、何でもないわ」



 祐はまだ聖燐にしつこく追われていた。未だに外を走り回り、必死に逃げる祐だが、聖燐は諦める様子はなく、鬼の形相で追いかけてきた。


「待てや! 待て!」

「待てって言って待つ馬鹿はいねぇよ!」


 長い渡り廊下に差し掛かると、聖燐が距離を詰め、渡り廊下の屋根の柱へと飛び蹴りを食らわし、柱に大きなひびが入った。


「おい! 何でも破壊するな!」


 聖燐は聞く耳を持たず、更にどんどん柱を破壊していき、渡り廊下を渡り終えた途端、全部の柱が破壊されて、屋根が崩れ落ちてきた。

 祐は落ちてくる屋根をかわして、即時走りなおした。


「学校壊す気かよ!お前は!」

「知るか!」


 聖燐は舌打ちをして、再び走り出した。


「ちっ!」

「危ねぇ!」


 後ろから教頭が追いかけてきて、二人に叫んだ。


「また、お前らか!」

「俺じゃねえよ! 聖燐だよ!」

「問答無用!」


 祐はまた逃げた。そして聖燐が鼻息を荒くして追いかけていった。二人は教師たちの駐車場に差し掛かった。祐が後ろを見ながら走っていると、前に転がっていた小石に躓いて、転んでしまった。


「痛っ!」


 祐は聖燐を見ながら、ゆっくりと後退した。すると、背中が車に当たって手を後ろに弄り、後ろを確認すると、キラキラと光り輝いた高級そうな外国製の車が停めてあった。


「あ?」

「私のランポルに汚い手を触れるな!!」


 それは教頭の車だった。それも『ランポル』と言う超高級車であり、最近涙を飲んで二十年ローンで買った大切な車だった。それが今、自分が一番嫌っている生徒がペタペタと触っている姿に教頭も鬼の形相になって重い腰を上げて迫ってきた。


「ガキども! 動くんじゃねぇぞ!」


 教頭の声は二人の耳には入ることもなく、片手で拳を鳴らし、もう片方の手で木刀を構える聖燐がゆっくりと祐に近づいていた。それに二人はこのランポルが、教頭の車なんて知った事ではない。


「へっへっへ……覚悟しろよ祐!」

「やめろ! 私の車だ!!」


 そして聖燐が木刀を振り下ろした。祐は倒れた状態から、手をバネのように地面から伸ばして、空中で一回転して車の上に乗って攻撃をギリギリ避けた。避けられた木刀の攻撃は止まることなく、運転席にめり込んでガラスが割れた。更にハンドルが外れ落ちた。


「あっ……あぁ……」


 無惨に破壊されたランポル──教頭は口を開けて、その場に膝をついた。買った日の思い出が走馬灯の如く頭によぎった。出会って数日なのに、初めて学校に乗ってきたのに、一日で破壊された。車から落ちてきたハンドルが教頭の前に転がってきて、周りを何周かしてから教頭の前で倒れて、教頭は完全に真っ白に燃え尽きた。


「そんな……ランポルが……」


 そんなことを知らない祐は車の上に乗り、聖燐が祐に木刀を振り、避けるたびにどんどんランポルを破壊され、姿が変形していく。


「オラオラオラ!!」


 更に車に攻撃を加えて、今度はタイヤが脱輪して、教頭の前に転がってきた。

 そして木刀が深く刺さって抜けなくなり、聖燐が引き抜こうと必死に引っ張っている間に祐は車から飛び降りてさっさと逃げていった。


「じゃあな!!」

「おい! 待てや!」


 祐は教頭の燃え尽きた姿を見て、気軽に話しかけた。


「どうしたんですか、教頭? さっきの元気はどこにいったのですか?」

「ら、ランポルが……」

「らんぽる? 何すかそれ? 疲れて変な事を言い始めてるのか?」


 ランポルの意味がよく分からない祐にとっては、何言っているんだか分からず、何故燃え尽きているのかも理解できなかった。面倒くさくなって祐は先を急いだ。


「じゃあ、教頭バイバイ!」

「ランポル……」


 そして木刀を抜いた聖燐が祐を追って、教頭がいる方向へと向かい、教頭を無視して転がっていたハンドルを蹴り飛ばして、外のゴミ箱にシュートされ、見事にゴールした。そのまま聖燐は気にする様子もなく、祐を追いかけていった。


「……あぁ」


 教頭は重い腰をゆっくりと上げて、おぼつかない足で学校内へと向かった。生気を感じず、まるでゾンビのような足取りになった。



 廉は他の生徒たちと、勉強を続けていた。すると、外から何かが破壊された音を廉だけが気づいた。もちろん、廉には分かっていた。これは祐の仕業だと。


「廉さん? どうかしましたの?」

「……いや、何でもないわ。勉強を続けましょう」


 祐が聖燐と喧嘩して、何かを壊したのは考えなくても分かっていた。


「祐……」


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