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獄門学園〜可憐なる姉妹決戦〜  作者: ワサオ
第一章 学園騒動
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6.ランポルぶっ壊し

「あの校長め……覚えてろ──」

 

 校長の事に怒りを表している教頭。一人駐車場で愚痴っていた。

 その時、何処からかガラスが割れる音と共に、正燐がぶっ飛ばしたバレーボールが教頭の目の前に落ちてきた。


「うわっ!? ば、バレーボール?」


 そして駐車場から遠く離れている体育館のガラスが割れていることに気づき、すぐにそこから飛んできたのを理解した。


「まさかあ・い・つ・ら!!」


痛んでいる腰を上げて早歩きで体育館へと向かった。



 祐と聖燐は次に接近戦を繰り広げていた。聖燐の攻撃を横にかわすと、祐の抉りこむようなパンチが腹に直撃した。

 聖燐は痛みで硬直し、祐は聖燐の顔を強く殴り飛ばした。


「諦めないか!」


 地面に倒れ、鼻血をふき取ってゆっくり起き上がる聖燐。


「そんな簡単に諦めると思ったか」

「困ったヤツだ」


 頰を赤らめた聖燐が立ち上がり、再び木刀を拾い上げた。そして自分の口から垂れ流れている血を制服で拭き取った。

 再び木刀を構えると、一気に祐へと迫り、無造作に木刀を振り回した。祐は後方へと下がりながら攻撃を避けた。そしてまた突きの攻撃を繰り出すも、祐は目の前から消えて、木刀の上に絶妙なバランスで立っていた。


「あたしはすぐ近くにいるぜ」

「くっ……!」


 バカにされたと思って感情が高ぶり、木刀を振り上げようとすると、祐が聖燐の顔を蹴り上げて吹っ飛んだ。聖燐は背中から地面に倒れるも、すぐに手をバネのように跳ねて、体勢を戻した。

 聖燐は木刀を片手に持ち替えた。そしてゆっくりと祐に近づいた。祐も何か仕掛けてると、目を離さないようにしっかりと見つめて、いつでも動けるように構えた。

 無の空間が続き、二人は一定の距離を保ちながら円状に歩き回った。お互いにどちらが先に動くかを考え、じっくりと睨み合った。

 祐には時間がなかった。時間が気になり、一瞬だけ聖燐から目を離して、体育館の時計を見た。聖燐はその一瞬の隙を見逃さなかった。祐が目線を戻した時には、木刀を振りかざした聖燐が目の前にいた。その一瞬に脳の反応が出るまでに至らず、聖燐の木刀で一撃が、祐の頭へと直撃した。足を踏ん張らせて、その場から動くことはなかったが、脳に大きな振動が伝わって、軽い脳震盪が起きたのか動きが鈍くなった。

 頭から血が流れ始めた祐に追撃するように、聖燐は身体を横に一回転して回転力で増した木刀で、祐の横腹を重い一撃を与えた。祐は弾き飛ばされて、壁に激突し、その場に力なく倒れた。


「うぐっ……」

「一瞬の隙は、事故の元って事だよ」


 祐の顔を掴み上げると、思いっきり壁に叩きつけた。壁にヒビが入り、味をしめた聖燐は何度も祐を壁に叩きつけた。


「ぐはっ! ぐふっ……!」


 そして手を離して、再び木刀を振り上げて、一気に下ろした。すると、その木刀を祐が片手で受け止めた。祐が頭から血が流れて、不気味な雰囲気が増している中、聖燐を睨みつけた。


「出しゃばるのもいい加減にしろ!!」


 瞳孔が細くなり、ドスの効いた声が体育館に響き、木刀を適当に投げ捨てた。その声と迫力の効いた顔が恐怖に慄き、足が自然と後ろへと下がってしまった。祐から悪魔のようなオーラが背後から見えた気がした。幽霊とかオカルトを信じない聖燐だが、これだけは信じた。祐に悪魔が宿っていると。


「何なんだ……この異様な雰囲気」


 立ち上がった祐は、先ほど受けたダメージを諸共せずに突っ込んだ。恐怖に動けなくなった聖燐の腹を抉りこむに殴り、足を払った。体勢を崩し、倒れそうになる聖燐の足を掴み、そのままタオルを払うように地面に叩きつけた。

 身体に大ダメージを受け、倒れた聖燐は側に落ちていた木刀の持ち手を持ち、今度は自分が祐の足を払った。そしてボロボロの二人は同タイミングで立ち上がり、ニヤリと笑った。


「祐! まだまだあたしは倒れないぞ!」

「へへ、俺もだ……ん!?」


 まだドスの効いた声で言い、立ち上がった祐が目に入ったのは、八時三十六分を指した時計だった。再び攻撃を仕掛けようとする聖燐に向けて、手を突き出した。


「待て!」


 突如、明るい声と顔に戻った祐。


「時間だ! ここまでだ!」

「はぁ!?」


 聖燐には何の事か分からず、祐が急いでバッグを担いで体育館から出て行こうとした。呆気に取られた聖燐は、すぐに祐を呼び止めた。


「ちょっと待てい! 逃げる気か!」

「俺はテストの勉強があるの。お前に付き合っているほど、暇じゃないんだよ」

「……なんだと!」


 額に血管が浮き出てきて、聖燐の一気に怒りのボルテージがマックスに溜まった。約束を破ろうとしている祐に、激しく激昂した。あっちの事情なんてどうでも良い、とにかく祐と戦いたい一心の聖燐は逃げようとする祐を追いかけた。


「待て!!」

「勘弁してくれよ!」


 二人が体育館の出入り口に向かうと、そこには険しい顔をした教頭が腕を組んで立っていた。そして二人の姿を見るなり、怒鳴り始めた。


「またお前らか! 何度ガラス割れば気がすむんだ!」

「すいません! 教頭!」


 二人のボロボロで、血が出ている姿を見て、開いた口が塞がらなくなった。


「お、お前たち、何だその傷!?」

「二人で体育の朝練ですよ!」


 誤魔化しているつもりだが言い逃れできない程の傷に、嘘とすぐに見破った。


「何故血が出ているのかを聞いているんだ!それに部活に所属してないはずだろ!」

「謝りは後で言います!」


 そう言って祐と聖燐は教頭から逃げるように学校へと向かった。


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