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獄門学園〜可憐なる姉妹決戦〜  作者: ワサオ
第一章 学園騒動
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5.教頭

 二人が学校の周りを走っているのを、ブラインド越しに見ている頭が薄毛のスーツの中年男性が校長室にいた。


「あのガキ共め! 我が校を評判を下げるような事を!!」


 憎しみが篭った低い声、そして怒りに震えている手。


「許可さえもらえばあんな奴ら、すぐに学安に連絡してやるのにぃぃぃ!!」


 ブラインドを戻して、校長室内をうろちょろと徘徊して、校長の豪華な椅子に座り込んで、椅子を窓の方へと回転させた。


「ちっ、アイツさえいなければ、私が校長になるのにぃぃぃ!」

「アイツって誰の事ですか? 教頭?」


 後ろから優しいおじいちゃんの声が聞こえてきて、嫌な予感がして教頭はすぐに振り向いた。


「こ、校長!?」


 そこにいたのはこの学園の校長の皇校長である。教頭は焦りながらすぐに、椅子から立ち上がって綺麗に戻して、背筋を立てた。そしてゴルフクラブをスーツの中に隠して、ゴマを擦り作り笑いをしながら校長に寄り添った。


「何で校長がここに?」

「今日の朝礼のプリントを取りに来ました。それより、教頭も何でここにいるんですか?」

「わ、私は朝礼のリサーハルを……」

「なら、リサーハルをしましょう」


 校長はニコニコしながら、自分の椅子に静かに座って、教頭も校長の机の前のソファに座り込んでリハーサルをした。

 教頭が紙を見ながら朝礼の内容を説明する。


「今日の朝礼ですが、生徒たちにもっと学安の事を知ってもらうための話をしようと思います。それと、最近学園内の器物を破壊する輩がいるので、それを名指しで全校生徒の目の前で叱ろうと思うのですが──」

「学安の事は十分に話したはずです。これ以上はもう話さなくてもいいでしょう。子供たちに恐怖を与えるような教育を私はしたくないのですよ」


 皇校長はこの学園に来てから七年ほどが経っていた。今まで、この学園では数年に一人くらいは学安のお世話になっていたが、皇校長が来てからは未だ一人も学安に連絡していないのだ。

 校長自身は学安の存在をあまり快く思ってはいなかった。何かに怯える生徒を見るより、もっと自由な学校を作ろうとしているのだ。


「ですが、現状を知っているでしょう! 特に万丈祐と紅羅輝聖燐の二人です! 校長がよく知っているでしょう!あの不良生徒!」


 校長室内にある備品、よく見ると壺はひび割れており、無理やり接着剤で直されていた。壺の周りには破片の屑が散らばっていた。

 他にも高級な皿が中華屋さんの皿にすりかえられていたり、歴代の校長先生の写真に落書きされていたりとかなり荒らされていた。


「校長、何故学安に連絡しないんですか! 我が学園の恥です! 我が学園にはあの様な不届き者はいりません!」


 そう言うと校長は教頭を見て、冷静に言った。


「教頭……学安が言う反学園的生徒は、教師に対する暴力、または威圧的態度。または授業の妨害、いじめ。ですが、彼女らは未だにそのような事件は起こしておりません」


 教頭の記憶の中には校長の言う通り、いじめの報告、授業妨害、教師へと暴力など、事件性のある事はやってはいなかった。


「くっ……ですが、校長などの備品を壊しているんですよ!」

「あれくらいは可愛いものですよ。前校長からも、自由こそが学園があるべき存在と長らく教えていただいたんですよ。何がともあれ、生徒たちからも話は聞きませんし、私は彼女らを通報する気はありません」


 教頭はゆでだこのように顔を赤く膨れ上がって校長室から出て行った。出ていった教頭に校長も頭を抱えていた。


「くぅ~!」


祐は聖燐にしつこく追われていた。祐は疲れ果てて、学園から少し離れた体育館へと逃げていった。体育館の二階ギャラリーの椅子に座って少し休んでいた。


「ふぅ……本当にしつこい奴だぜ……」


 呑気に大きく足を開いてだらしなく休んでいると、背後から視線を感じた。もう誰がいるかは分かっており、その視線に嫌気を感じながら、ゆっくりと後ろを振り向いた。


「万丈祐! 覚悟!」

「うおっ!?」


 聖燐が思いっきり木刀を振り下ろしてきた。

 祐はすぐに反応して木刀を両手で真剣白刃取りした。

 聖燐は力強く押し込んで、祐に一撃喰らわそうとするが、祐はその力を超える力で木刀を挟み込んでいた。

 受け止めた祐に、聖燐はニヤリと笑っていた。


「やるな! 流石はあたしのライバルだ!」

「お前のライバルじゃねぇよ! オラ!」


 真剣白刃取りから、木刀を両手で握りしめて、聖燐ごと持ち上げた。そして一階の体育館床に投げ飛ばした。

 聖燐は空中で何回転もして、頭から地面にぶつかりそうになった。だが、聖燐も祐に負けないほど運動神経が良く、綺麗に受け身をとって地面に着地した。


「へっへっへ、お前が倒すまであたしはやられないって言ってるだろ!」


 聖燐の諦めない姿勢に、祐も段々面倒くさくなってきた。


「ちっ……諦める気はないのか!」

「あぁ、あたしはない! 一対一で勝負をしろ! どっちが強いかの勝負だ!」

「……めんどくせぇな……」


 スマホの時計を見ると八時三十二分を指していた。

 朝のHRは八時四十分。更に授業は九時丁度に始まり、一時間目に数学の小テストがある。少しでも早く廉の元に行って、テストの勉強をしたいのである。


「しょうがねぇ、やってやるさ! だが、俺が勝ったらすぐにどっかいけ!」

「分かった! ガチンコ勝負だ、手を抜くなよ」

「抜くもんかよ。すぐに終わらせてやる」


 両手をバキバキと鳴らして、一階体育館へと飛び降りて聖燐と二メートル圏内に入り、二人は睨み合った。

 聖燐の顔から笑顔が溢れてきて、胸の鼓動が高まり、息を荒げて身体中からアドレナリンが大量に出てきた。一種の興奮状態になっていた。


「さぁ、やろうぜ」

「瞬殺だ」


 祐もさっさと終わらせたい為、拳を構えて戦闘体勢を取った。体育館からは時計の針が、ゆっくりと振動する音が小さく聞こえて、時計の針が三十三分をなった。

 その瞬間、祐が先に動き始めた。一直線に進み、拳を強く握りしめた。聖燐は近づいてくる祐を迎え撃つ為に、木刀を構えて微動だにせずに待ち構えた。

 祐が真正面より攻撃を繰り出すも、聖燐は寸前でかわし、至近距離で木刀を真っ直ぐと祐の胴体向かって突いた。

 祐は木刀の突きを左手で掴み止め、お互いに顔を近づけてにらみ合った。

 聖燐は笑っていた。祐と戦う事が生きがいな聖燐にとって、この戦いが楽しくてしょうがなかった。聖燐が祐の木刀を掴んでいる方の腕を蹴り上げて、隙が出来た所を腹に突きの一撃をくらわせた。


「ぐはっ!!」


 真っ直ぐと突き飛ばされた祐は、体育館の壁を突き破り、器具室へと突っ込んだ。その場に破片混じりの砂煙が舞った。祐はすぐに器具室から飛び出て、バレーボールを片手に現れた。


「やはり、その剣術やるな」

「毎日自己流の鍛錬をしているんでね!」

「ふん、ならお前が木刀を使うなら、俺はバレーボールだ!」


 少年サッカーで鍛えた蹴りをボールに食らわし、綺麗なカーブを描いて、的確に聖燐の元へと飛んでいく。すると、聖燐がバッターの構えを見せた。


「飛んできたボールはこうやるんだ!」


 聖燐は野球のボールを打つように、フルスイングをした。野球ボールより、はるかに大きなバレーボールを打ち、そのままボールは円を描いて、体育館のガラスを突き破った。


「やっば……」

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