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獄門学園〜可憐なる姉妹決戦〜  作者: ワサオ
最終章 二人の姉妹
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47.更なる決闘


 破片を握りながら恵魔の背後に現れた。


「まだやる気かぁ?」


 そして破片を突き出して、力を振り絞って声を出した。


「……あたしも、恨みで生きてきた。でも、今はその相手を許そうと思っている。そいつはあたしら不良を嫌っている。でも、そいつはあたしに謝ってきた……あたしも謝った。そして、今は普通に話せる仲にもなった。お前みたいに自分の非を見つけようともしない奴に、廉が負けるわけがない! お前は見つける事もせずに、この拳で八つ当たりしているだけだ。ガキだぜ、お前は!」

「ほぉ、よく言ってくれるぜ……お前も廉のやる気でも出させる為の生贄になるか?」

「やってみろよ……あたしを倒してみろ!ガキ野郎!!」


 落ち着いて言っているようにも見えるが、血管が額より浮き出ていた。

 明らかに動揺していた。ゆっくりと迫る聖燐はあるだけの力を込めて破片で突いた。

 だが、簡単に破片へ弾き飛ばされた。


「へへ、避けるなよ。ビビってんのかよ」

「そちらこそ、足が震えて怯えてんのか?」


 聖燐の足は震えており、ビビっているのか無意識に足を下がらせていた。

 さっさと仕留めようと恵魔は、素早く首へと手を伸ばした。


「ったぁ!!」


 その時、聖燐は足を滑らせて体勢を崩した。

 だが、その瞬間に声をあげて足のつま先で恵魔の首を突いた。


「ごふっ!」

「喧嘩はルール無用って事なのは知ってるよな!卑怯とは言わせまい!」


 喉を抑えてえずく恵魔に更に追撃する為に攻撃を仕掛ける聖燐。

 だが、顔面に拳を払った瞬間、恵魔は目を見開いて、舌をだらしなく出した状態で顔を上げた。


「何っ!?」


 驚いた聖燐だが、拳は止まらず恵魔に拳を包み込まれるように捕まれ、力強く引き寄せられた。


「残念。アタシの首はよぉ。鍛え上げられたんだよぉ。そんな突きじゃタンすら吐き捨てられねぇよ!」

「くっそ!」


 恵魔は首の包帯を少し捲り上げて、聖燐に見せつけた。


「な、何だよそれ……」


 聖燐は絶句した。包帯の下の首は黒く変色しており、人間の手で締め付けられたような跡が付いていた。


「こんなんじゃあよぉ。お嫁に行けねぇと、思うよなぁ!おぉ?」

「んなもんで動揺するかよ!」


 聖燐は膝で腹を蹴ろうとしたが、その動きを見破られて足を思いっきり踏み込まれた。


「ぐっ!」

「どうようバレバレなんじゃよ!」


 恵魔に首を再び掴まれて、宙に浮かされたまま、爪を立てた。


「一人くらい殺したっていいよな、廉」

「ぐっ……ぐぁぁぁ!!」


 再び頭を抱えて苦しみ始める廉。

 掴み上げられている聖燐は平然と装って叫んだ。


「自分に乗っ取られるんじゃねぇ!!…… 自分を理性を保つんだ!」

「う……うぐぅあ……」


 聖燐の声は届いていないのか、いまだに頭を抱えて苦悩する廉。


「さぁさぁ、どうする廉ちゃん? このまま、仲間が傷つくのが見たいかぁ?」

「や、やめなさい……その手を……」

「だったらよぉ!殺せば戦う気になるかよぉ!」


 そして廉は頭を抱えながら、立ち上がった。

 目は虚ろなままで、理性は影に飲み込まれたままだった。


「まだ、いけるわよ……」

「立ち上がったか。なら、こいつにはここで退場していただこう。次に行く場所は、あの世かな、それとも病院かな? オラッ!」


 爪で斜めに一撃、身体に攻撃を加えられた聖燐はゴミのように遠くへと投げ、壁に叩きつけられた。


「!」


 廉は真っ先に恵魔へと攻撃を仕掛けた。

 だが、恵魔もすぐに意識を廉へと向けて、拳を軽々と受け止めた。

 更に連続で仕掛けてくる攻撃を受け流して、隙が出来る度に顔面へと攻撃を繰り返した。胸元に一撃爪で服を軽く切り裂かれた。

 だが、廉は恥も感じず、冷静に恵魔を睨みつけた。


「やるぅ!けっ!これは満足させてもらうか!」


 お互いに引く気を見せずに突撃して、再び攻防を再開した。

 接近戦に二人は互いの拳を突き、その度に身体に傷が刻まれていく。

 どちらも止まる事がなく、血が流れようとも攻撃を続けていた。


「誰か止めろよ……」

「あんなの無理に決まってるだろ!」


 周りの囚人達もざわつきが広がっていき、止めた方が良いのではないかと話しているが、こんな二人を止めれるわけなく、ただ見つめる事しか出来なかった。


「……」


 その戦いをひょっとこが、監視していた。手にはトランプを指に挟んでいた。


「予想よりも強いようだな。だが、ここで終わりだ」


 トランプを投げようとした時──


「おい、邪魔する気じゃねぇだろうな。タイマン勝負をよ!」


 ひょっとこの前に立ち塞がったのは燈であり、血だらけにも関わらず、拳を構えていた。


「まだ立っていたのか?」

「あれくらい、痛くもなんともないぜ」


 燈の身体は震えていた。立っているのがやっとであろう。


「ガチンコを邪魔だてさせるかよ……」

「ちっ、しつこい奴。ガチンコなんてここにはないのさ」


そう言ってひょっとこはトランプを両手から大量に出した。


「またこれで痛ぶられたいか」

「やれるもんなら、やってみせい!今のあたしは修羅とさえ殺し合える!」

「そこまでする価値があの女にあるのか?そこまでして、奴はお前に返してくれるのか?」


ひょっとこの問いに、燈は声を張って答えた。


「謝られた事がない。むしろ、周りに怒りを買い続けたアタシだが、信頼できるダチがいる今、何かの為に役立ちたい気持ちが芽生えた!」

「こんな学園にいる奴がよく言えるな」

「だからこそだろ」



「アタシもいるぞ……」


ひょっとこの後ろから聞こえてきたのは、同じくボロボロになっている聖燐の姿だった。


「そんな血だるまになっても立つ気か」

「こんなの汗のようなもんだ。眩暈がするが、これはただの疲れから来てるだけだ。戦いという名の休憩で元気100倍ってもんよ!」

「こざかしい!」


ひょっとこは両手のトランプは二人に向かって投げ飛ばした。


「行くぞ!」

「おう!」


聖燐と燈は迫るトランプに諸共せずに突撃して、身体が切られようとも構わず、ひょっとこへと接近した。

燈は拳を、聖燐は蹴りを放ち、左右上下からの同時攻撃を繰り出した。


「何っ!?」


ひょっとこは避けられないと確信し、燈の攻撃を避けて、横腹に蹴りを入れて反撃を加えた。

その代わり聖燐の蹴りを背中にモロに受けた。


「ぐっ!」


すぐに回し蹴りをして反撃したが、聖燐は咄嗟に飛び上がって倒れた燈の元に駆けつけた。


「大丈夫か!」

「あぁ、これしき」


燈は聖燐に支えられながら立ち上がり、今の状況を整理した。


「奴め、片方の攻撃を避けて反撃し、もう片方の攻撃を背中で受けよった」

「避けれないとはいえ、背中で受けるなんて……」

「リスクを考えた末の最小限のダメージだろう。慣れてやがるな戦いに」


だが、天燐自身はニヤケ顔が止まらなかった。


「でもよぉ、喧嘩師ならそっちの方が嬉しいのなぁ」

「いつから喧嘩師になったんだよ」

「でも、やりがいがある相手の方がいいに決まってるよな」

「もちろんだ!」


二人は笑みを浮かべて、再びひょっとこの前に立ち塞がる。


「身体ボロボロなのに、よく立つな。やはりタフな奴らだ」

「タフな人間だからこそ、ここで生きていける。それによぉ、鈍っちまうとそれこそタフじゃなくなっちまうのよ!」

「だが、今の貴様らに私を倒せる余力は残ってるかな?」


その問いに二人は互いの顔を見合って馬鹿みたいに笑い出した。

燈がひょっとこに指差して言い放った。


「は、はは!ははははは!ばっかでぇい!」

「何がおかしい」

「余力なんて元よりないんだよ。だが、ダチを想えばこんなの痛くなんてねぇんだよ!」


二人は歩き出してひょっとこへと近づく。

その姿に僅かながら恐怖を感じて、トランプを10枚も投げ飛ばして、二人の身体に刺さり、肌を切り裂いた。


「けっ!んなもんなんじゃい!」

「こんなんで倒れるかよ!」


再びトランプを投げようとした時、焦って落としてしまった。


「すきあり!」

「!?」


燈は咄嗟に走り出し、ひょっとこの首に自分の太い腕を叩き込んで、強烈なラリアットを喰らわした。

小さな身体はいとも簡単に飛んでいき、地面を一度バウンドして顔面から壁に叩きつけられた。

その飛距離に聖燐も口に手を当てて、絶句していた。


「なんちゅうパワーだ。あんなもんまともに喰らいたくないね……」

「さぁ、いい加減その仮面の向こうを見せてもらいだがね。正体を表せよ!」


と身体を持ち上げようとした瞬間、目の前のひょっとこが突然消えた。


「燈!後ろだ!」

「何っ!?」


聖燐の言葉に背後を振り返ると、真後ろにひょっとこの仮面にヒビ入ったひょっとこの姿があり、頬を蹴り、更に顎を蹴り上げた。

だが、燈は怯まずに足を掴んで投げ飛ばした。

ひょっとこは綺麗に着地し、ヒビ割れていく仮面に手を当てていた。


「スマねぇ!」

「良いってことよ!」


二人は拳をぶつけ合い、ひょっとこへと顔を向けた。


「タフなのはお前も同じだ。それでこそだ!」

「まだまだこっちの決闘も長引きそうだな!」


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