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獄門学園〜可憐なる姉妹決戦〜  作者: ワサオ
最終章 二人の姉妹
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44.染まる世界と染まった世界

 あれから少し経ち、朝のサイレンが鳴ると、聖燐がすぐさま起きて、廉を起こしにきた。


「おい! 起きろ!! 朝だぜ!」


 まだ眠気が残っている廉に、聖燐は心配そうに聞いてきた。


「大丈夫か? また寝ちまったからびっくりしちまったぜ」

「心配してくるてありがとう」

「燈の奴もさお前を運ぶ時に手伝ってくれたから、後で礼を言って起きな。とにかく朝だから檻から出ようぜ」

「えぇ」


 聖燐に肩を組んでもらって立たせてもらった。

 そして檻の外へと出してもらい、食堂へと向かった。

 道中、聖燐に連れられている廉は言った。


「ごめんなさいね、前から貴方を見下すような風に言って……」


 自分があんなにも見下して、馬鹿にしていた相手がこんなにも心配してくれた事が、とても嬉しかった。 こんな経験も初めてであり、また心に沁みた。


「良いんだよ。そんくらい何百回も言われ慣れてるからよ。先公に言われるし、陰でも言われている。慣れたさ。それより、大丈夫か? 顔色がまだ悪そうだが?」

「大丈夫よ、私の心配しなくていいわ。それより、燈の様子は」

「あいつは切り傷だけだから、医務室で簡単な手当てをしてもらったから大丈夫だ」

「よかった……」


 二人が話していると、芽依が飛び跳ねながら現れた。現れるなり、心配そうに聞いてきた。


「二人とも大丈夫!? 昨日は大変だったね」

「大丈夫な訳ないだろうが、燈の奴は怪我するし、れ……いや祐の奴も少し体調が悪くなるし……それより、お前は何してたんだ?」

「私疲れて寝ていたんだぁ。だから、気づいたらこんな事態になっててびっくりしたよ〜」

「あんな事起きてたのによく寝てるぜ」


 そう言いながら、廉のもう片方の肩を支えながら一緒に歩き出した。

 そして食堂では聖燐が廉を先に座らせて、廉と自分の二人分を持って運んできた。


「ほい、怪我してる時は、こんな飯でも食うに限る」

「そうだよ、祐お姉ちゃん! 食べないと元気出ないよ!」


 芽衣も水の入ったコップを持ってきて、机に置いてあげた。


「あ、ありがとう……二人とも」

「ふっ。いいってもんよ」

「本当にありがとうね」


 優しくしてくれる二人に思わず、笑顔が溢れた。

 廉たちの前に、身体の至る所に包帯が巻かれている燈と燈に付き添う出っ歯が廉たちの前に現れた。

 燈は座るなり、廉へと話しかけた。


「おまた意識が遠のいたのか? あたしと戦った時みたいに、急に雰囲気が変わったようだが」

「えぇ、また変わってしまったの。自分を忘れてしまって……」

「でも、今回はあたしらを守ってくれたじゃないか。感謝しているぜ」


 頭を下げて感謝を述べた燈。


「……ありがとう。貴方の怪我は大丈夫?」

「こんな切り傷すぐ直るさ」


 何箇所も切られた跡があるものの、もう傷口が塞がり始めており、その耐久度には驚きを隠さなかった。

 二人で話していると、次に出っ歯が廉の元に寄り添って両手を思いっきり握ってきた。


「ありがとう!! 燈さんを守ってくれて本当にありがとう!!」

「いや、私は……」


 情けなく涙まで浮かべながら感謝される廉。何か言おうとしても、それを払い除ける勢いで感謝された。これにも、思わず微笑みが止まらなくなった。


「足元に気をつけろよ」

「そこまでは大丈夫よ。貴方は自分だけを考えて。怒られるわよ」

「労わってやるのが仲間ってもんだろうが。怒られる時は一緒だよ」


 シャワーの時間でも聖燐が心配そうにしてくれた。足元が悪い中、近くにいて一緒に付き添ってくれた。

 そして授業の時間になり、今日も数学から始まった。

 昨日と同じ因数分解の授業となっていた。昨日と同じような問題が出て、廉は聖燐に問題が解けるかどうか心配そうに聞いた。


「問題大丈夫? 教えてあげようか」

「昨日教えてくれたから、この問題は大丈夫だと思う。任せておけ!!」

「あぁ、分かったわ」


 そう言って聖燐は因数分解の問題を自力で解き始めた。

 そんな聖燐を前に、どこかムズムズと痒い気持ちになった。


「よし! 解けたぜ!!」

「良かったわね……」

「あんたのお陰でな!」


 嬉しい事だけど、何か悲しい気分にもなった。やはり、教えてあげたいが、どんどん自分から離れていくような寂しさがあった。

 こうやって成長していくんだ。と廉は感じていた。

 祐なら馬鹿だから何回も聞いてくる。祐ならずっとずっと聞いてくる。頼られているんだととても嬉しいかった。

 何か気分が乗らないな。


「大丈夫か?顔色悪そうだが?やっぱり無理そうか?」

「いえ、大丈夫。少しすれば直るから」

「そうか?」


 そして午前中は、聖燐はキチンと起き続けて、キチンと授業を受けて、怒られる事なく授業が終わった。

 昼の食事も皆んなに見守られながら食べて、とても気分は良かった。

 昼食も難なく終わり、昼の自由時間になった。



 外のスポーツコート。

 燈や出っ歯、聖燐たちがベンチに座っている廉の前に集合した。

 燈が最初に口を開いた。 


「さぁて今日は、何をするかな?」


 聖燐は集まった全員を見渡して、とある疑問を抱いた。


「……芽依はどこに?」

「あいつか? 昼飯食ってた時はいたんだけどな?」


 出っ歯がサッカーボールとバスケットボールが入った籠を廉の前に持ってきた。

 聖燐はボールを吟味しながら言う。


「おっ、サッカーにバスケか」

「えっへん!! あたしが選んだボールだ、感謝しろよ!」


 出っ歯は鼻高く腰に手を当てて自慢気に言った。それに対して聖燐がツッコんだ。


「どのボールでも、一緒だろ……」

「何を言っとるか! ボールの柔らかさなど、燈さんや万丈祐にあうサイズを選んだんだよ」


 廉も楽しそうに見ていると、遠くからサラサラとした真っ赤な長い髪をした女子囚人一人がこちらに近づいてきた。


「あれは……」


 燈はいち早くその囚人を目視した。

 すると、急に目と眉毛を細くして険しい顔になり、いつでも動けるように身構えた。

 そんな燈を見て、廉は軽く聞いた。


「どうしたの? そんな顔をして……」

「離れた方がいい。奴はやばい」


 そう言っていると、その囚人は燈や聖燐、出っ歯らの中を堂々と通って廉の前に足を止めた。

 傷がついた制服、ここでの喧嘩でボロボロになったであろうと予想がつく。


「私に何か用? !?」


 廉を問いを無視して、周りに睨みを効かせた。

 その姿に全身鳥肌が立った。顔面愚か、手も足も全てが傷だらけであり、顔斜めに大きな切り傷がついていた。


「こいつの顔、傷だらけじゃねぇか」


 虚ろな目をしているが、口だけは笑っていた。その顔に廉は恐怖も抱き、その目から映る自分の姿が一瞬血みどろな光景が見えた。

 そして廉の肩を軽く叩いてきて、軽々しく話しかけてきた。


「よぉ。あんた万丈廉だろ?」

「!?何故私の名前を?」


 ここでは祐と名乗っている廉。廉の名は出したことがない。

 何故彼女は自分の名を知っているのか。理解出来なかった。


「あいつの名を知っているのは廉とアタシだけなはず」


 聖燐も同じ考えだった。

 衝撃を受ける廉を庇うように聖燐が前に出て、その囚人に問い詰めた。


「お前こそ誰だ!」


 するとその囚人は髪を手で靡かせて答えた。


「俺だよ。厚鬼恵巻だよ」


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