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獄門学園〜可憐なる姉妹決戦〜  作者: ワサオ
第四章 再会
37/66

37.学園生活?

 食事が終わり、全員が列になって女性隊員に別の場所に連れていかれた。

 そこに近づくと、いくつもの部屋の中から湯気が立っていた。


「おっ? やっとシャワーを浴びられる!」


 シャワーを浴びられると飛び跳ねる聖燐。

 部屋に入れられると、そこは狭い更衣室と狭い縦長いシャワールームで、他の囚人には丸見えで、シャワーが五十個も設置されており、更に常備されている使いかけの石鹸だけがあった。

 廉たちに隊員は告げた。


「一人五分までだ!」

「一人五分!? もう少し時間をくれよ!」

「ダメだ、他の囚人たちの時間の関係上、これだけしか無理だ」

「そんなぁ……」


 部屋の外には他の囚人たちも列になって待機して、洗い終わった囚人は更衣室に置かれている細く、薄く、ゴワゴワとしたタオルで身体を拭いて、着替えて出ていかなければならない。

 廉は不機嫌な聖燐に優しく言った。


「当分はこれで我慢しましょう。他の皆んなも我慢出来るなら、私たちも出来るわよ」

「……でもよぉ」

「私だってあんな石鹸だけで、洗うのは嫌だけど、生きるためよ。それにほら、他のみんなも」


 芽依も燈も出っ歯も恥じらいもなく、抵抗もなく、普通に服を脱いでいた。

 芽依は小学生のように勢いよく脱いで、シャワールームへと飛び込んだ。


「やっほー!!」

「ほら、私たちも脱いで、行きましょう。時間がないわ」

「あぁ、分かったよ。これで我慢するしかないな」


 廉と聖燐も服を脱いで、身体を洗いに行き、隣同士にシャワーを浴びた。

 流石にシャワーは綺麗で暖かく、シャワーを出すと聖燐は思いっきり両手を広げて、久しぶりの恵の雨を喜ぶように口を大きく開けて身体と口の中にシャワーをぶつけ浴びていた。

 廉も隣で顔を上げてシャワーを浴びている。その姿は可憐な天使にも見えた。


「ぷは〜!! やっぱシャワーって気持ちいい!! こんなに気持ちいいのは初めてだぜ!!」

「そうね……とっても気持ちいいわね」

「天の女神だぜこりゃあ!!」


 廉は聖燐の無邪気で気持ちよさそうに浴びている姿を見て、昔の祐を連想させた。

 思わず、無意識に聖燐をジッと見てしまっていた。


「どうした? 人の身体をジロジロ見て?」

「い、いや……何でもないわ」

「そんな目をあたしを見るなよ!」

「んな訳ないわよ!」


 顔を赤らめて聖燐から逸らして、使いかけの石鹸を使って身体を洗い始めると、そこに芽依が子供のように走ってきて、廉の元に来た。


「廉お姉ちゃん! スタイルいいねぇ!!」

「そ、そうかしら?普通に生活してるだけだけど?」

「それにお胸大きい!!」

「ちょっと、勝手に見ないでよ!」


 芽衣は次に聖燐へと飛びついた。


「聖燐お姉ちゃんも見せて!!」

「こっち来るな! バカ!! アタシの身体は見せもんじゃねぇぞ!!」


 廉と聖燐のシャワーは、芽依の乱入ではちゃめちゃな状況になった。

 そんな中、奥から燈がタオルを肩に掛けて、男のように堂々と歩いてきた。

 その身体は男だと言っても、納得のいくほど厚い筋肉が露わになっていた。


「お前ら、早く上がれよ。看守に殴られるぞ」


 そんな身体を見て三人は固まって頷いた。そして唖然とした顔をして、声を揃えて言った。


「う、うん……」



 シャワーを上がった後は、塔の全員五十名ほどが首輪をつけられて、学園の教室と同じ内装の狭い部屋にぎゅうぎゅう詰めにされて、授業を受ける事になった。

 黒板もあり、学校の机や、何故かロッカーも後ろにあった。

 椅子を下げるのもギリギリな部屋なのに全員無理やり入れられた。隣で座った聖燐が愚痴をボヤいていた。


「こんなとこまで来て、授業なんてかったりぃな。サボリてぇよ」

「貴方は前からよくサボってたけど、今回は無理なようね」

「ちぇ」

「それにここで勉強出来るだけ感謝しなくちゃダメよ」

「おう」


 教室の外には武装した隊員が待機しており、教室内の角には監視カメラが仕掛けられている。

 芽依が後ろ席から、ボールペンで突っついて聖燐に話しかけた。


「ここで捕まっている間も勉強しなくちゃいけないし、もし出席しないと夕食貰えないし、今の檻よりもっと酷い場所に連れてかれるらしい」

「マジかよ……サボってたあの頃が懐かしいぜ」


 サボる事が出来ずに、テンションが下がって、机にへばりつく聖燐であった。

 そして聖燐の横の燈と出っ歯も一つ助言をした。


「教員が教卓の前に立ったらすぐに立てよ」

「そうだぜ、もし少しでも遅れたら……」


 二人の言葉に不穏になり出っ歯を見るが、出っ歯は何も言わずに、座り込んだ。


「何が起きるんだ?」


 燈の顔も見るが、何も言わずに座った。

 芽依も見たが、ニッコリと笑って何も言ってくれなかった。


「……とにかく気をつけろってことね」


 そして教室内の雑談が徐々に静まり返り、生徒が全員揃った。

 壁に設置された時計が八時になると、部屋のドアをゆっくり開け登場したのは女性教員であった。


「おはようございます!」


 見た目は普通の綺麗で凛とした女性教員で聖燐もホッとした。


「何だ……もっとゴツいのが来ると思ったぜ」


 教員が教卓の前に立つと、安心して気の緩んだ聖燐以外の生徒全員が一斉に背筋をピンと立てて立ち上がった。


「は、早っ!」

「そこの囚人遅〜い!!」


 急に教員の顔が悪魔のような顔に変貌して、懐から謎のボタンを押すと、首輪から電撃が流れて、聖燐の髪が跳ね上がり、身体全体を電撃が襲った。


「うぎゃぁぁ!!」


 聖燐はその苦しさに首輪を掴みながら、その場でのたうち回っていた。

 

「だ、大丈──」


 廉が助けに行こうとすると、燈が腕を掴んで食い止めた。


「ダメだ行くな」

「で、でも」

「お前も同じ事になるぞ。下手すればこのクラス全員が責任を取らされる。それに教師は全員あらゆる格闘技や武道を習っている戦闘のプロだ。逆らうと骨が何本も折られるぞ」

「……」


 助けに行きたい気持ちがある。だが、それが不幸な結果に移行してしまう。

 そう考えると、廉は動けずにその場にとどまるしかできなかった。


「うわぁぁぁ!! いたたた、ちょっと、やめて!! やめて下さい!!」

「立つのが遅れてすいませんだろ!!」

「お、おぐれでずびばぜん……」


 聖燐が謝るとすぐに顔が優しい顔にころっと変わって、ボタンを離した。

 ついさっきシャワー浴びたばかりなのに、聖燐の身体はもう汗でビショビショだった。


「謝ればよろしい。さぁ楽しい数学の授業の時間ですよ。プリントを渡しまーす」

「何て野郎だ……」

「何か文句で言ったかしら?」

「い、いえ……」


 プリントと鉛筆を配られて、授業が始まった。

 数学の問題を教員が式の解き方などを教えて、それを囚人たちが問題を解いている。至って普通の授業である。

 問題は普通の高校生の問題であり、全員静かに問題へと取り掛かった。

 芽依も燈も出っ歯も黒板を見てノートを取り、きちんと勉強に取り組み、難なく問題を解いていた。

 廉にとってはどれも簡単な問題なのか、他の囚人よりも早く解き終えた。


「ぐが〜!」


 だが、聖燐は机に頭を伏せてぐっすりと寝ていた。 それを見た教員は貴方に血管を浮き出させて、またボタンを押した。

 また電撃が襲いかかって、飛び跳ねた。


「うぎゃぁぁぁ!!」

「ちゃんとしろ!! 問題を解け!!」

「は、はい……」


 これには聖燐も観念し、髪の毛が焦げて跳ね上がる中、問題を解き始めた。

 だが、問題は因数分解で全然分からなかった。中学三年の頃はよくサボっていた為、因数分解が何なのか分からない聖燐であった。

 それに高校も寝てばかりか、サボってばかりでほとんど数学なんて分からず、足し算引き算掛け算割り算などの算数が限界であった。


「何だこれ……因数分解ってなんだよ。展開って何だよ」


 訳の分からない問題にお手上げ状態になり、手を上げて教員に聞いた。


「おい先生! この問題、全然分かんねえよ!!」

「この問題は中学生にならう問題よ、それに黒板に式はちゃんと書いてあるわよ」

「それ見ても全然分かんねえよ!


 確かに黒板に式が書いてあるが、全然分からなかった。

 むしろ難しすぎて頭がこんがらがってきた。鉛筆を机に叩きつけて諦めて匙を投げた聖燐に、教員は再びボタンを押そうとした。


「ちょっと待て、待て待て!! 押すなよ! でも分かんねぇんだよ!!」

「とにかく解け!!」

「くっそ……この首輪さえ無ければ」

「何か言った?」

「何でもないっス」


 完全に困り果てる聖燐を見て、廉が手を上げた。


「先生、少しこの子に問題を教えてもいいですか」

「……いいわよ。その代わり、答案丸写しは貴方にも電撃を食らわすわよ」

「分かりました」


 廉は鉛筆片手に聖燐に椅子ごとちょっと近づいた。そして優しく語りかけた。


「少しなら教えてあげるわよ」

「え? いいのか」

「えぇ、教えるのは得意よ。祐に毎日のように教えてたからね」

「た、確かに」


 申し訳なさそうに廉に教えてもらう事になった聖燐。

 廉の教え方はとても分かりやすかった。祐に昔から教えていたのもあって、問題の意味が分からずに頭を抱える聖燐に対して、困り顔や怒り顔を一切見せずに、丁寧に教えた。

 この手の事は祐で慣れている廉だから出来た事である。


「この式は──」

「……あぁそうゆう事か」


 その姿はまさに姉が妹に勉強を教えている姿だった。違和感がなく、燈も芽依もその姿に見惚れていた。

 苦難の末、何とか聖燐は問題を解く事が出来た。


「この式をさっきと同じように解くと、問題の答えが出るわ」

「よっしゃあ!! 出来たぁぁぁ!!」

「祐も覚えがいいわね」

「よく言われるよ!やれば出来るってね」


 ノートに書かれた数式を教員に答えを見せると、教員は頷いた。


「よし!!」


 問題が解けて嬉しそうに机の上を飛び跳ねる聖燐を見て、自然と微笑みが出た廉。

 珍しく自分でも笑っているのを気づいてはいなかった。

 聖燐の喜ぶ姿がどこか小さい頃の祐を連想させてしまう。


「あんたみたいな人も、笑う事あるんだな。初めて見た気がするぜ」


 自分でも笑っている事を気づいていなく、思わず顔を赤くして、自分の口を押さえた。


「やっぱりあんたは良い奴だな。感謝するぜ」

「……ありがとう」


 そして無事に一時間の数学の授業が終わり、一旦十五分の休み時間が挟まれた。

 午前は三回の授業と二回の休み時間があり、十一時三十分までする事になっている。


「二限目は社会で、三限目は英語だよ」

「三限目まであんのかよ……」


 苦手な教科が多いと言うか、勉強そのものが苦手な聖燐はやる気をなくして机に顔を伏せた。


「それから昼食を食って、外での運動タイムだ」

「よっしゃあ!! それまで頑張るぞ!!」


 外で運動する事を楽しみにパワーアップして、目が一気覚めた。

 そして次の授業は社会。言っていたそばから寝そうなるが、廉や燈たちに起こされながら、授業を受けていった。

 何とか廉たちの助力で、社会も乗り切った。休み時間になり両腕を上げて大きく欠伸をした。


「貴方、何でそんなに寝るの? 昨日も結構寝ていたでしょ?」

「まぁ結構寝たんだが、話聞いていると段々眠くなるんだよな……子守唄のように。むしろ、他のみんなは何で眠くならないんだ?」


 この問いに燈が腕を組んで答えた。


「本来の学校なら六限目までだが、ここでは三限だけだぜ。そう考えると自然と授業を受けれる。少ないなら頑張ろうとってな。三限乗り越えれば、昼食食って後夕方まで自由時間だ。そこでコミュニティを作ったり、別に勉強する者、読書する者、スポーツを嗜む者、色々な過ごし方があるもんさ」

「……そうだけど、授業と言う存在が眠気を襲ってくるんだよ」

「首輪を見れば、嫌でもやる気になるぜ」

「まぁ、確かに……三限終われば天国だから、乗り切るか」


 そして英語の時間も何とか乗り切って、やっと昼食にたどり着いた。

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