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獄門学園〜可憐なる姉妹決戦〜  作者: ワサオ
第二章 獄門学園
16/66

16.その頃祐は?


 廉達が獄門学園に収容された頃──

 祐はヘリが飛んで行った方角へと、何も考えずにひたすら自転車を漕いでいた。

 山道辺りを漕いで、気づいたら夕日が沈みかけていて、綺麗な光景が広がっていた。


「本当は綺麗と言いたいが、そんな事言っている暇ねぇよな」


 だが、今はそんなに見ている暇はなく、真っ直ぐと道路しか見ておらず、自転車に向き合っていた。

 でも、少しだけ体力を使って疲れていた。自販機を発見して、一旦自転車を止めて休憩する事に決めた。

 お茶を買い、勢いよく飲んだ。だらしなく飲んでいる祐の口からお茶が垂れていた。口の周りのお茶を拭き取って、のどの渇きも収まり気分は爽快だ。


「しっかし、ここは何処だろうな。適当にここまで来たが、全く場所がわからないな」


 もうすぐで日が沈み夜になるが、泊まる事も考えていない。それにお金もあまりなく、森の中だから野宿になるかと覚悟していた。スマホで地図を見たい所だが、そんな機能を祐は知らなかった。

 殆ど廉が調べて、教えてあげていたからだ。

 完全に困り果てた祐はお茶を飲み干し、ゴミ箱に入れようとしたら、半分に折られた木の看板が倒れているのを発見した。


「何だ、この看板?」


 看板を拾い上げると、『この先三キロ先に』と途中で文字が途切れていた。


「向こうに、何かあんのか?」


 とにかく行ってみようと、祐は再び自転車に乗り、その方向へと向かった。

 そこから数分経ち、その場所へと到着した。


「ここは、町だよな?」


 殺風景な山に囲まれた風景が広がっている町であった。

 大きな畑があり、コンビニなどもなさそうな田舎町だった。昼から食べていないから腹が激しく鳴っていた。


「……これは困ったな、力が出ない。このままじゃあ──」


 腹が減って困った祐は、自転車から降りてゆっくりと町を眺めながら歩いていた。何か食べ物屋がないか探していた。

 ファミレス・回転寿司・ラーメンなど様々な食べ物が浮かんでくるが、この町には一切なかった。

 家の付近なら、すぐ近くにコンビニがあったが、全然ない。道の向こう側も光が電柱以外見えなかった。

 考えれば考えるほど腹が鳴り、段々イライラしてきた。


「くっそぉぉぉ……腹は減るのに店がないなんて」


 イライラが顔にまで出てきた祐。足取りも重くなり、まるでガンを辺り構わず飛ばしているヤクザのようだった。

 歩いていると農業を営んでいる麦わら帽子の腰の悪そうなおじいちゃんがいた。

 畑でキュウリやミニトマトなどの野菜を育てているのを見て、祐の頭の中にキュウリの浅漬けや生のミニトマトが浮かんできて、勝手にヨダレが流れ始めた。

 こう見えて野菜は食える祐である。廉に好き嫌いは許さないと、嫌いだったピーマンやナスなどを工夫して食べやすく調理して食べさせた。そして今では普通に食えるようになった。

 頭の中ではもう食べられると思い込んで、ガンを飛ばしている顔から、ヨダレを垂らしながら不気味な笑みを浮かべておじいちゃんの元へと歩いて行った。


「お、おじいちゃん……」

「ん? どうしたんだい?」


 おじいちゃんが返事をして振り向くと不気味な笑みの祐を間近で見てしまった。

 それを見た瞬間、急に腰が治って素早く何処かへと逃げていった。


「お、おゆるしおぉぉぉ!!」

「ちょっと待ってくれ!! 野菜を恵んでくれぇぇ!」


 盗むわけにも行かないので、先に進む事にした。

 その後も歩き続けるが、一向に食べ物屋が見つかる事はなく、町の外れへと出た。

 腹が減った祐は、また自販機が見えてきた。すると、遠くの道路から猛スピードで何かが接近してくる気配を感じた。


「ん?」


 そしてその方角へと目を凝らして見ると、ライトを一つだけ照らしている謎の乗り物が接近してきた。

 だが、暗くて何が来ているかは分からない。

 徐々に接近してくる乗り物、でもバイクのエンジン音なども聞こえてこないから、何なのか予想もつかなかった。

 そしてやっと見えた祐は衝撃を受けた。


「あれは!?バイク!」


 その正体は自転車を猛スピードで漕いでいるショートヘアの制服姿の女子高生だった。

 しかも女子高生はサングラスを掛けており、ニヤリと笑いながら、こちらに向かって漕いでいた。


「暴走族……とは違うのか?」


 女子高生は祐の服装を見つめると、自転車のカゴから細長い鞭を取り出した。


「そうら!」


 祐の真横を通り過ぎた瞬間、鞭を祐に向けて直線上に伸ばした。いきなりの攻撃に対応できず、祐の腹に手ごと巻きついた。


「うわっ!?」


 その女子高生は速度を緩めることなく、祐をコンクリートに引きずりながら、何処かへと向かっていく。祐は背中が引きずられて、悲痛に叫んでいた。


「いたたた!! 削れる、削れる!!」

「さぁ!! パーティの始まりだ!!」


 だが、祐の声は届く事はなく、引きずられて行った。

 祐が引きずられて行くのを、さっき祐と出会った老人は自販機の隅から、震えながら見ていた。


「かわいそうに。彼女らに捕まるなんて……」


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