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獄門学園〜可憐なる姉妹決戦〜  作者: ワサオ
第二章 獄門学園
14/66

14.獄門学園内

 

 廉たちは烙印を入れられた後、別の場所に連れて行かれた。

 聖燐は隊員に担がれて廊下を進み、近未来的な空間から段々汚らしい場所へと移り、ガラス越しのエレベーターに乗せられてどんどん上へと上がっていった。


 十階に上がり、ドアが開くと場所は外へと変わった。

 ひんやりとする風が吹き荒れ、まるで高層ビルのような場所で近くに他の塔が密集しており大迫力の光景だった。

 下は真っ暗で闇しか見えない。落っこちたら一溜まりもないだろう。

 さらに大きな廊下を歩かされて、一つの扉の前に立った。

 ドアの上には小さく『D〇一』と書かれていた。隊員がドアの前にあるパネルを操作すると、ドアがゆっくり開き、廉たちはその中へと押し込まれた。


「さぁ入れ!」


 中に入れられて、廉は塔の全貌を見て唖然とした。


「これは……」


 円状で出来た塔で、円の中央には大きな空洞が出来ており、通路と檻は円の外側に設置されている、

 更に天井はガラスで出来ており、太陽の光が差し込み、暖かな日差しと隙間から風が流れ込んでくる。

 全体的に汚らしく、コンクリートの壁は汚れていたり傷がついていたりと不衛生な空間である。

 物音一つ聞こえず、静かな雰囲気でどの檻にも囚人は入っていなかった。


「ここが……塔の中」


 今いる場所は十階で上は二十階まであり、全長五十メートル以上もある巨大な塔である。一階に囚人が入れる檻の数は六個あり、一つの檻には二人まで入れる。他の階に行くには、中央の空洞に各階二個の階段が設置されており、それで上下の行き来が可能になっている。

 廉と気絶している聖燐は、十八階へと連れて行かれた。十八階の空いた檻へと連れて行かれた。そこは暗く、窓もない、そして清潔感が全くない空間であった。ベッドが二つだけあり、和式便所と洗面台があるだけの鉄格子で外から丸見えな質素な檻。


「さぁ、ここに入れ!」


 隊員に檻の中に押し込まれた廉。聖燐も雑にベッドに投げ込まれた。そして颯爽にドアを閉められて、タブレットによる操作をして、カチッと鍵が閉まる音がした。それと同時に、背中に引っ付いていた磁石のリングは解けて、やっと手が自由に戻った。

 隊員は外から廉に伝えられた。


「今日からお前らは、この塔に過ごしてもらう。後一時間もすれば他の囚人たちが戻ってくる。その時にでも、獄門学園での過ごし方でも教えてもらえ」

「……ちょ、ちょっと待って!」

「寝ている奴にも後で教えてやれ」


 大雑把に説明して、挙げ句の果てに説明を投げ出した隊員を止めようとしたが、無視して面倒くさそうに立ち去って行った。

 廉は諦めてベッドに座り込んだ。


「硬い」

 

 ベッドは硬く、そして汚い。いつも家で寝ているフカフカの暖かいベッドとは真逆で、まるで石の畳の上にいるように冷たく、敷き布団も薄く、ゴワゴワしていた。

 残念がっている廉。すると、気絶していた聖燐がゆっくりと頭を抑えながら起きてきた。


「いててて……頭が痛え」


 起きてまだ頭痛が続く聖燐に廉は少しだけ心配そうに近づいた。


「まだ、立たない方がいいわよ」

「何が起きたか教えてくれ……」

「貴方の背中に烙印を押そうとしたら、貴方が暴れるからスタンガンを撃たれたのよ。自分の背中を触ってみなさい」


 聖燐は自分の背中に手を突っ込んで触った。変な感触とともにヒリヒリと痛みもあった。


「いっつ……!」

「私も残っているけど、まだ触らない方が良さそうね……」

「チキショウ!」


 聖燐は臆病な自分に怒りを感じて、急に立ち上がって外の鉄格子を殴りつけた。鉄格子に拳が当たった瞬間、バチッと大きな電気が鳴り、聖燐の身体に強力な電流が襲いかかった。


「うぎゃぁぁぁ!!」


 聖燐の髪は逆立ち、身体がブルブルと大げさに震えた。鉄格子には超強力な電流が流れていた。

 これは脱出する可能性を考慮されて作られた鉄格子であり、隊員が持つタブレットにより解除されない限り、電流が流れ続ける。そして手を離すと、身体中から煙が上がって倒れた。


「だ、大丈夫!?」

「く、くそぉ……小賢しい真似をしやがって……出せ!!  あたしを出しやがれ!!」


 誰もいない塔の中に聖燐は我を忘れて限界まで叫んだもちろんこの二人以外いないので誰の返事も来なかった。ただ聖燐の叫びだけが虚しく棟にこだましただけであった。


「あまり無理しちゃダメよ。私も貴方も体力が無いんだから、今はまだ休んでいた方が……」

「くっ、その通りかもな」


 やっと状況を把握した聖燐は怒りを胸の中に押し込み、ゆっくりと自分のベッドに戻った。

 俯いて暗い顔をしている廉を見つめて、口を開いた。


「あんた、祐と喧嘩して落ち込んでいるんだろ?」

「いきなり何よ。落ち込んでなんか……」


 脈絡もなく言ってきた聖燐に無視を決め込もうと壁に顔を向ける廉。

 気にする事無く、聖燐は続ける。


「顔で分かるって。祐とそっくりの顔だから、落ち込んでいる時の表情はある程度分かるんだよ。中学生の時から祐を見てきたが、本当にそっくりな顔だよな」

「……似ているってあまり言わないでよ。あんなのと」

「学安に捕まりそうになった祐を庇って、リボンを付けて身代わりになった奴がよく言うぜ。学校ではあんなにあたしや祐を嫌っていたようだが、本当は祐の奴の事が大好きなんだろ」

「み、見てたの?」


 顔をまた赤らめて顔を晒した。

 聖燐も廉の慌ただしく目線を合わせようとしない仕草に思わず笑ってしまった。


「はは……そんな嫌っている祐に対しても優しい所もあって、いい姉貴持ったな……あいつ」

「貴方に私の何が分かるのよ……それに貴方、祐とどうゆう関係なのよ。中学の時から喧嘩していたイメージしかないわよ」

「あたしと祐か? 簡単に言うと、ライバルだな……あの時の話だ」



 中学一年の秋、あたしはまだ不良じゃなかった。今は強気だが、昔は気弱な性格だった。

 その性格もあって、学校での問題児であり同じクラスのブス不良ども五人の対象になった。

 その日も屋上に呼ばれて、金を取られそうになっていた。


「おい! 金は持ってきただろうな」

「い、いや……もうお金が」


 あたしは胸ぐらを掴まれてドアに叩きつけられた。痛かったが、それよりも恐怖の方が強く、痛みを考えている暇もなかった。


「持ってこなかったら、どうなるか分かっているよな!」

「ひぃ!」


 殴られる事を覚悟したら、屋上出入り口の上から誰かが飛び降りてきた。


「おい、誰だ。弱い者イジメしているのは?」


 それが赤いリボンを頭に結びつけていた祐だった。授業をサボって、屋上で寝ていたようだ。


「祐の野郎か!」

 

 彼らは何か祐を知っていて、焦りの表情が見えていた。

 あたしを掴んでいる不良以外の不良たちが祐を囲んで睨んできた。


「正義のヒーロー気取りか!?でも、複数の相手は出来るかな?」

「あぁ、出来るさ!簡単な事だ!」


 まさに一瞬のような出来事だった。祐はニヤリと笑った。

 不良一人の背後に瞬時に回って、首に肘で軽い一撃を加えて倒した。

 そして、周りを囲む不良たちにも見えない速度で腹に一撃加えて、全員を倒した。あたしは驚きのあまり、目をまん丸にして見ていた。


「一撃で倒した……」


 そして祐は不良の前に立ち、手のひらを出して、手招きをした。


「さぁ残るはあんただけだぜ。今ならこいつの前で土下座したなら許してやるよ」


 明らかにその不良は祐を前にして怯えていた。

 そしてあたしを突き倒して祐に殴りかかった。

 顔面に迫るパンチを真正面から突っ込み、ギリギリで受け流して、不良の腹へとパンチを食らわせた。突っつくような一撃だった。

 不良は目が白くなり、祐にもたれ掛かるように倒れた。その時の祐はヒーローそのものだった。彗星の如く現れ、傷を負うことも無く蹴散らした。


「あ、ありがとう……」

「こんくらい良いって事よ。俺の名は万丈祐、お前は?」

「紅羅輝聖燐です。一年です」

「何だよ、同じ一年じゃねえか。タメ口でいいよ」

「う、うん……」


 そう笑いながら言って、出入り口の上に登ってまた寝始めた。あたしは祐に憧れた。

 それから自分も強くなろうと、アクション系の映画やアニメを見て、見様見真似で武術の練習をした。そりゃあ大変だったさ。あんなそんじょそこらのアクション映画を超えるような喧嘩を見せられて、憧れる憧れないやつなんていないだろう。

 それから祐に隠れて修行をしてあたしは二年生になった。強くなった自分を見て欲しかったからだ。髪を金色に染めて、あたしを虐めていた不良どもをボコボコにした。あの木刀で──そしてその学園のトップに上り詰めた。


「あたしの強さ思い知ったか!!」

「くっ……」


 そして、強くなったあたしは祐の前に再び現れた。でも、それがあたしと祐の運命を変えた。

 夕日の帰り道、あたしは一人で帰っている祐を見つけた。久しぶりに見たが、とても綺麗だった。雰囲気も違い、とても清楚に見えた。その日の祐はリボンをしていなかったが、とにかく祐に強くなった自分を認めてもらおうと勇気を出して話しかけた。


「ゆ、祐! あ、あの時、助けてもらった紅羅輝聖燐だよ! 覚えているか!」

「誰、貴方……」

「え、あたしは──」

「貴方みたいな変な不良、私なんかの知り合いにいないし、知らないわ。人違いよ、さよなら」


 絶望した。祐は私の事を忘れていた、それに変な不良とも言われた。憧れていた人に人違いと言われて、一瞬死のうとも思った。

 それからあたしは祐を恨んだ。その後話しかけた時は、普通に接してくれた。あのわざとらしい演技に更に腹が立った。


「よぉ、聖燐! 停学してたら久しぶりに見た気がするな、イメチェンした?」

「よくもあたしを忘れて、それに変な不良って馬鹿にしやがったな!」

「はぁ、何だそれ? 俺は何も言ってないぞ」

「覚悟!」


 そこからあたしと祐のライバル関係が出来た。


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