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第4話 コンクリートジャングル

「ガハッ…ガハー!ガハー!!」


「おい!しっかりしろ!」


禍々しい球体に多数の触手を生やした化け物の胴体にチェーンソードを突き刺しそれを引き抜き何度も叩き潰し片付ける、地平線を埋め尽くす程の数だったがその最後の一体を倒す事に成功した……とはいえ代償としてコイツの触手を何本か喰らっちまい片腕も千切れ体の重要な部分を大半やられそのまま膝から崩れ落ちる。

視界に各種のパラメータが瞬時に表示されそれら全てが赤く表示される…つまり死神が超特急でこちらに迫ってるという事だ。


パワード・アーマや俺の『鋼鉄の体』の資材不足による整備不良かつ無謀な連戦のせいでこんなザマになってしまった…万全ならこの程度物の数じゃないってのに…ヒビ割れたHMDのレーダーに敵の反応が表示された、くそ…身体が動かない……間に合わない。


俺は覚悟を決めたが、それは徒労に終わった。


視線にはベキベキベキと音を立てながら敵が真っ二つになっていく光景だ、俺は安堵の溜息を吐きながらこれを行った相棒を見ながらサムズアップをする、さっきのはESP能力者の相棒がサイコキネシスを使ったんだ。


「…ハハハ、ドジ踏んじまった」


「馬鹿!!何で俺を庇ったんだよ!!」


装甲服のヘルメットを脱いだ相棒が大慌てで駆け寄り大粒の涙を流しながら俺を抱きしめる…ははは…これが恵みの雨って奴か


「お前が生身だからだろ、いくら『強化』されてても『機械化』されてる無敵の体の俺の方がタフだから当然だろ…ガハッ」


「僕の事置いてかないでよ……」


相棒はバチバチと弱々しく火花を出しオイルを際限なく垂れ流す俺の身体に気にせず抱き付いて離れない…たく口調が昔の泣き虫に戻ってるしそもそも危ないから離れてくれよ引火する。


俺は相棒の頭に手を置き優しく撫でる、昔よくコイツが泣いて慰める為にやってた様に…あぁコイツがこんなに泣いてるのは第42次領土奪還戦以来か……あの時も酷いボロボロになったなぁ


「そう言うな…お前に死んでほしくなかったんだ」


「やだよ…死んじゃやだよ……お願い…死なないでよ」


昔の泣き虫が戻った様に大声で泣く相棒を抱きしめ頭を撫でながら落ち着かせ最後の頼みを言った。







「ふぅーん柊結菜ねぇ、良いね可愛い名前じゃん」


にへっと笑いながら膝枕で寝ている相棒…小嵐彩音(こがらしあやね)の頭を撫でる。


「んっ…ぅ……ッッッッ!!?」


「ぐえっ…いっったぁぁ!?何しやがる!!」


ふと…目に涙を浮かべながら目を覚ました彩音は俺の顔を視認した途端顔を真っ赤にし勢いよく顔を殴り付けて来る…本気で殴ってきたせいで壁に勢いよく叩き付けられる。


俺も涙を浮かべながら怒鳴るが意に返さずへたれ込むオタク君こと神無崎晴人(かんなざきはると)の横をすれ違い目に涙を一杯溜めながら俺の胸倉を掴んだ。


「うっっさい!!!!僕の事置いていきやがって!!あんなふざけた事言って……!」


「……俺にとってアレは大事な事だったんだよ」


「うるさい!!僕のお願いよりもあんな事優先した事絶対許さないから………もう置いてかないって約束して」


「ごめん、約束する」


いつの間にか彩音に抱き付かれ涙声でそんな事を言うから俺は何も言えず約束をした……それより


「と言うかオタク君流石にビビりすぎ軽い喧嘩でしょこんなの」


腰を抜かしたオタク君を笑いながら立たせる、たかが軽い喧嘩なのにまるで殺し合いを見た様に怯えちゃって。


「これが軽い喧嘩…?」


身体を震わせながらポツリと呟き…そのまま俺の体を掴みながら叫んだ。


「こんな喧嘩があってたまるかよ!!良いか!俺はオタクで小心者だから喧嘩なんか一回もした事ないけど…ぜっったいに喧嘩で人間は吹き飛ばないし壁にヒビとか入らないんだよ!!てかどうすんだよこの家に住んでから数時間で壊す馬鹿何処にいんだよ!?ここにいますってか!?喧しいわ!!この馬鹿力ロリとデカギャル!反省しろ!!」


「良くそんなに口回るね凄いよオタク君」


「もうちょっと声落とせよ五月蝿い」


わあぁぁ!と声を上げながらとても長い台詞を一度も噛まずに捲し立てるオタク君に素直に褒め、彩音は耳を抑えながら眉を顰めながら言うがそんな呑気な俺達にオタク君は俺達二人のほっぺを捏ねくり回しながら更に捲し立てる、俺は助けを求めて褐色ロリ女神の日向結菜(ひなたゆい)に助けの視線を送ったがこの薄情者の女神はコーヒーを啜った後に和かに手を振りまたコーヒーを飲み出した…クソ、やっぱ神なんかアテにならない。


「もうちょい反省しろ!お馬鹿共!!喧嘩は良いけど今みたいに滅茶苦茶に壊したら暫く飯作らないからな!」


「むぎゅ…えー!酷いよオタク君…俺のベーコンと目玉焼きが…」


「うぎゅ…俺とコイツに飢え死にしろって言うのかお前は…」


俺達のほっぺを捏ねくり回し引っ張られながら、オタク君のお説教は続き、ご飯抜きの脅しに屈した。




数時間後 札幌市中央区



あの後俺と相棒の小嵐が不貞腐れてる姿を見てロリ女神がオタク君に提案してステーキと言う肉を食べれる店に連れてきてくれた……肉!!そう目の前にベーコンなんて目じゃない程の分厚いまるで重戦車のハッチの様だ。


それにしても何て食欲をそそらせる香ばしい匂い…そして血のように赤い断面、そこから滴る汁…こんなもの本でしか見た事がないぞ……確か肉汁って言うんだっけか?それよりも本当にこんなのが存在してたのか。


俺と相棒は何も言わずにその肉とサラダを齧り付き一心不乱に食べ続けあっという間に完食しそのまま飲み物の赤ワインを一息に飲み干し、同時に近くにいた店員に同じ物を注文…それを獣の耳と尻尾を付けた店員は引き攣った顔をしながら戻っていった。


「食い過ぎだ…と言うかギャルとロリが1キロのステーキお代わりって漫画じゃあるまいし」


「…けぷっまぁまぁオタク君この二人はマトモなご飯を食べた事ないんだから仕方ないさ、さてデザートは何にしようかな…おっこのデラックスパフェなんか良いじゃないか」


「食い切れるのかよそんなデカいの、それにしても…俺がいた地球とは違うんだな…獣娘が現実にいるなんて転生してよかったぁぁ」


オタク君が周りを見て感動しながらそんな事を言う、確かに俺がいた世界にもあんな動物的なのはいなかった、高濃度放射線や大気汚染によりタールの様なドス黒い人体に非常に有害な雨に耐える為の脳以外を機械に置き換わっている『機械人』や人工培養により産み出されそれにより放射線や大気汚染の完全耐性と副産物により得たESP能力を持つ『強化人間』が俺達の世界のスタンダードだった。


戦争に勝つ為そして生き残る為に選択肢を絞り最適化された俺たちの世界の人類に比べたらこの世界は選択肢が多く何より自由で……そんな世界とこの世界に似た世界に生まれたにも関わらずその恵まれた世界よりもこの世界に憧れの表情を見せているオタク君にほんの少し俺は嫉妬と怒りを覚えた。

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