夢現
「起きて!」
夢の途中で起こされる。
「襲われてる!」
スズユフミの緊張した声。
何者かが争う音。
ナハライズミ達が誰かと争ってるのがうっすらと見える。
「じっとしていろ!」
ナハライズミの声が響く。
時折り聞こえる獣の唸り声。
スズユフミを庇うように伏せる。
心臓はまさに早鐘を鳴らすように鼓動し、喉が渇く。
怖いんだな。
そりゃそうだ。
命を狙われるような経験は無い。
敵の姿が少しだけ見える。
ありゃ何だ?
獣のような耳。
尻尾。
ナハライズミの振るう槍と打ち合ってる腕の先には……爪か?
時折り金属音がして火花が飛び散り、一瞬だけその異様な姿を照らす。
前世の記憶にあるな、ありゃ狼男か?
他の三名の護衛もやり合ってる。
物音だけだが。
俺は固唾を飲んで見ていることしか出来ない。
あんなのとやり合ったら秒で叩きのめされる自信はある。
「ナハライズミに伝わるように頭に浮かべて」
スズが俺に耳打ちする。
「獣の鼻を撹乱するから」
「わかった」
俺の思念を感じとるナハラ達。
タイミングよく敵と距離を取る。
スズは何か小袋をそれぞれの方へ投げた。
「!」
狼男らしき人影が明らかに挙動不審になる。
鼻を押さえ、くぐもった声をあげつつ、頭を激しく振るう。
ん?カメムシみたいな匂いが漂ってきたぞ。
こりゃ臭い。
そして敵は素早く逃げていく。
ほっとした瞬間、後ろから引っ張られ、浮遊感。
抱きしめられ、気分は上方向へバンジージャンプ。
あ、これ捕まったな。
耳元で聞こえる女の声。
「捕まえたぁ」
俺の意識は暗転した。