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再現 ②


「も〜っ、、なんなん。こんな所に いつまでも待たしてぇ〜っ」


 ぶうぶう と愚痴を垂れるのは(とまり)だ。

 と言っても、泊が文句を垂れ流すのは よく理解できる。

 後輩と連れションに行くと言って姿を消した友人に、何の説明がないまま、C館1階の端にあるドール研究所の教室で約40分も待たされているのだ。

 文句を垂れるのも不思議ではない。


「悪いな・・・ちょっくら準備に」


 そんな泊に、友人である足立は素直に謝罪する。


「・・・? なんなん一華(いちか)? やけに素直やん。いつものアンタなら、自分に非があっても死んでも謝らんのに」

「うるせー。私だって謝る事はあるよ・・・」

「ふぅん。珍しい事もあるもんやな・・・って、一華、アンタ・・・顔 真っ青やん!? 大丈夫なん!?」


 今更ながら、足立の顔色の悪さに気がついた泊。

 過去に潜った副作用で、ど貧血状態の足立だ。常日頃の2日酔いの顔色の悪さとは別の不健康さが泊の目に留まったのだろう。


「大丈夫だよ。ちょいと貧血気味でな・・・」

「ちょいちょい、ちょっと座りい。フラフラの状態で立ってたら、転んで怪我すんで」


 そう言いながら、ドール研究所にあった椅子をひとつ足立に差し出す泊。

 だが足立は、その椅子を手で制した。


「いいよ。多分、もうすぐ田中の準備が終わる頃だしな」

「ーーー準備?」


 次の瞬間、がらりッ とドール研究所の扉が開いて田中が入ってきた。

 そんな田中も、ハァハァ と肩で息を繰り返している。まさに疲労困憊状態だ。


「なんなん・・・どないしたんよ《探偵サークル》? みんな疲れ切っとるやん。人知れず街でも護っどったんか?」

「俺らはヒーローですか? と、、そんな事より・・・先輩! 準備が終わりました。多分ですが、うまく行くと思います」

「・・・ん。そうか、そんじゃ、行くか」

「なんや? 行くってどこに行くん?」

「4階の “呪いの教室” だよ。私たちが もう一度、“幽霊の自殺” を再現させてやる」

「ーーーッ!!?」




***************




 先ほど巻き起こった心霊現象ーーー、“幽霊の自殺” を再現すると言った足立に連れられて、再び4階の“呪いの教室”に舞い戻った当事件の関係者の5人ーーー、足立、田中、泊、模糊月(もこづき)縦文字(たてもんじ)


「ちょ、ほんまに再現できんの、一華? ちゅうか、、“幽霊の自殺”の謎は解けたん??」

「あぁー・・・まぁな。ほとんどは解けたよ。ま、百分の一だ。見てくれ」

「“百聞は一見にしかず” と言いたいのだろうか・・・」


 ふんわりとしか覚えていなかった(ことわざ)を盛大に間違えた足立は、呪いの教室の中から廊下にスタンバイしていた田中に合図を送る。

 合図を受け取った田中は、持っていたニッパーで、窓際の手すりに括り付けていた針金をバツンッ と切った。

 その瞬間だーーー。


「窓を見ろ」


 呪いの教室の中にいた足立が、教室側の窓を指差す。

 足立の指に釣られるように、教室側の窓に目を向けた泊、模糊月、縦文字の3人は、突如として上階から落ちてきた “人らしきモノ” を見た。

 それが、上から下へ高速で過ぎ去った少し後、ドンッ という音が どこからか聞こえてくる。


「な、、さっき見た “幽霊の自殺”と同じやん」

「こ、これは・・・正しく、人が飛び降りたように見えますな」


 幽霊の自殺を目の当たりにした泊と縦文字は、すぐさま窓に近寄り下を見る。だがしかし、今し方 落ちて来たモノの姿は地面には見当らない。

 すでに、とっぷりと日が暮れているため、地面の隅々までは見渡せないが、中庭の端に申し訳なさ程度に灯っている街灯の灯りで、地面に何もない事くらいは分かった。


「き、、消えましたぞ!? ワタクシ、確かに何かが落ちて来たのを見たはずなのに!?」

「あん時と一緒や・・・落ちてきたモンが急に消えよった・・・ッ」


 新鮮なリアクションを取ってくれる泊と縦文字。

 彼らは、足立がやってのけたトリックに馴染みがないため、新鮮なリアクションを取れるのだろう。

 だがしかしーーー、


「ーーーどうだ? 見様見真似だが、うまく出来てるだろ? 模糊月」


 今回の怪事件の犯人である模糊月は別だ。

 自分が考えに考え抜いたトリックを、さらり と足立に再現されてしまい、大口を開けて 顔を引きつらせるしか出来ないでいる。


「模糊月くん・・・は? ぇ?? なんで今、模糊月くんが出てくんの??」

「それはな、今回の怪事件の犯人が模糊月だからだ」

「ーーーッ!!」

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