ゴミ箱の中の真実
C館の入り口がある表側も、中庭同様、不気味な空気に支配されていた。
陽の光を遮るように、C館の前には他の建物が立ち並んでおり、どんより とした空気が流れている。今現在、陽が沈みかけているため、その不気味さは さらに際立っている事だろう。
足立と田中の《探偵サークル》の2人は、他の者に黙って、このC館の表側に来ていた。
「ーーー先輩。どこへ行くんです? まさか、帰るつもりじゃないですよね?」
C館のエントランスから外へ出た足立に つき従う田中は、行先について尋ねるがーーー、
「帰らんよ。いいから着いてこい」
足立から答えは返ってこない。
代わりにーーー、
「ーーー田中よ。お前、あの音どう思う?」
足立から田中へ、別の質問が飛んできた。
「あの音・・・というと?」
「4階の “呪いの教室”で聞いた、、何か重いものが落ちた時の音だよ」
「あぁ〜・・・あの大きな音ですか」
C館4階の “呪いの教室” 。そこで、何か “人らしきモノ” の飛び降りを見た すぐ後に聞いた、ドサッ という大きな音。
その音の正体など考えるまでもない。
足立に問われた田中は、迷わず答えた。
「俺たちが見た “何か” が地面に落ちた音でしょ? それ以外に考えられませんよ」
「ーーーほんとにそうか?」
「・・・?」
だがしかし、足立は田中と違う考えのようだ。
「私たちが4階の教室で “人らしきモノ” の落下を見た後、すぐに下を見たが、落ちてきたモノは見当たらなかった。聞こえてきた音から察するに、よほど重たいモノが落ちたはずなのに、、だ」
「・・・だから、みんな悩んでるんじゃないんですか? あの4階で見たモノはどこへ消えたのか・・・って」
「私が思うに、4階で聞いた大きな音は、私たちが見たモノが落ちた音じゃない」
「ーーー!」
足立の言葉に、一瞬 驚いた顔を見せる田中。
だが、前を歩く足立は、田中の反応に構わず、さらに話を続けていく。
「きっと・・・別のところから聞こえてきた音だ。私たちは、4階という高所で、上から落ちてきたモノを見たため、後から聞いた大きな音が それが地面に激突した音だと思い込んだんだ」
「えっと・・・それじゃ、、あの落ちてきた “人らしきモノ” と “何かが落ちた大きな音” は、別物だと?」
「んー・・・完全な別物とは言わんが・・・まぁ、それは見たらわかるな」
「??」
この時、足立と田中はC館表側の端っこに来ていた。駐輪場が立ち並んでいるため、エントランスがある入り口からは見通しが効かないC館の端。
そこにあったのは、屋外用の大型ゴミ箱だ。
「お! 私の推理通り、デカいゴミ箱があった」
そのゴミ箱を見た瞬間、足立の顔に笑みが溢れる。
「ゴミ箱・・・うわっ、なんだ?」
屋外用の大型ゴミ箱へ嬉々として近づいていく足立。その後をついて行った田中は、まんまと水溜りに足を取られてしまう。
「うへっ、、汚ねぇ」
どうやら建物の端という事もあり、地面が舗装されたコンクリートなどではなく砂利のようだ。
さらに、最近降った雨で水溜りができており、ゴミ箱の周辺は、さながら沼のようになっていた。
「先輩・・・そろそろ説明してください。どういうつもりなんですか? なんでこんな所に・・・?」
「田中よぉ。なんか気ぃつかねぇか?」
「はい?」
「この場所だよ。分からねぇか?」
「・・・?」
足立に言われた田中は、何かを探すように辺りを見渡す。すると、足立が言っていた事の意味がすぐに分かった。
「ーーーぁ、、ここって・・・ッ」
「そうだ。私たちが幽霊の自殺を目撃した “呪いの教室”・・・その真下だ」
そう、足立と田中が やってきたのは、幽霊の自殺を目撃した “呪いの教室” の通路側の真下。
つまりは、何か “人らしきモノ” が落ちた場所の反対側という訳だ。
「私の推理が正しければ、、このゴミ箱の中に今回の怪事件の真実がある」
「真実が・・・ッ」
次の瞬間、足立はゴミ箱を開けて中を見る。
すると その中にはーーー・・・。




