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第一容疑者


「おや・・・おやおやおや。再び奇遇ですな、姫。くぅひひひッ」

「ーーー縦文字(たてもんじ)!?」


 C館の中庭を調査している最中、1階教室の窓が ガラリッ と開き、中から縦文字が顔を覗かせた。

 突然の縦文字の登場に 声をあげて驚いた足立(あだち)田中(たなか)(とまり)模糊月(もこづき)の4人。

 だが、それ以上に驚くべき事が、4人の視界に入って来た。


「・・・あの、縦文字くん・・・それ」

「ーーーむむ?」

「あ! ホンマや!!」

「人形・・・?」


 縦文字が現れた教室の奥に、等身大の人形が飾られてあったのだ。ちょうど、成人男性と同じくらいの大きさ・・・170センチくらいはあるだろうか。


「おい・・・縦文字・・・そのデカい人形・・・」


 4人を代表して足立が その等身大人形について触れる。すると縦文字は、「むほッ!!」と奇声を発して、黒縁のメガネを くくぃ と上げる。


「姫・・・さすがはお目が高い。コチラは、ワタクシが設計し、自ら作り上げたリアル等身大ドールですぞ! 武道で得た人体の知識を詰め込んだ至極の1品でしてな、関節や内臓、重さといい、かなりリアルに作り込んでおるのです!」


 意気揚々と、自らが作り上げた等身大人形について話し出す縦文字。


「・・・ふーん」


 だが、ある一言を除いて そのほとんどが足立たちには届いてはいなかった。

 その一言とはーーー。


「重さのも普通の人間と同じ・・・ね」


 ちらり と他3人の顔をそれぞれ見た足立。

 どうやら、他の者も考えている事は同じようだった。

 その事をアイコンタクトだけで感じ取った足立は、「よし」と短く呟いてーーー、


「逮捕」


 と縦文字の逮捕を他3人に命じた。


何故(なにゆえ)!?」




***************




「なるほど なるほど・・・そう言う訳でございましたか」


 C館1階にあるドール研究所にて、足立たち一派に お縄になった縦文字は、深くうなずきながら これまでの経緯に納得した。


「・・・ですが、神に誓って怪事件の犯人はワタクシではありません」


 その上で、きっぱり と幽霊自殺の件と関わりがない事を明言する縦文字。


「ーーーおそらく、他に犯人・・・黒幕となる人物がおりましょうぞ」

「つまり・・・お前の共犯者がいると?」

「姫、違いまする」


 いまいち噛み合ってない縦文字と足立の話し合いに耳を傾けながら、田中、泊、模糊月の3人は縦文字の巣であるC館1階のドール研究所を まじまじと観察する。


「ーーーと言うか、すごいな。これ」


 田中が感嘆の息を漏らして見上げる棚は、天井スレスレの背が高いものだった。

 その高い棚に、びっしりとフィギュアの(たぐい)が飾られてある。

 何処かで見た事あるようなキャラクターのフィギュアから見た事がないフィギュア。さらには、男性女性の区別もなければ、ケモ耳少女からゴツい男まで、キャラクターの種類は多岐に渡っている。


「くっひひひッ。流石は田中氏。彼らの良さが分かるとは・・・慧眼お見事ですぞ」

「いや、良さとかは分からないけど・・・よく、これだけ集めたなー・・・と。縦文字くんのドール研究所って同好会の括りでしょ? 部費だってまともに貰えないのに、よくこれだけの数 揃えられたね」

「くっひひひッ。資金繰りの問題など、崇高な目的の前では無きにひとしき小事。いくらでも手はあります。それと、ひとつよろしいですかな田中氏」

「なに?」

「彼らはワタクシが1から愛情を注いで産み出した存在であり、購入したものではないので あしからず」

「えっ!? これ、全部作ったの!? 自分で!?」

「えぇ とも」


 再び、棚に飾られてあるフィギュアの数々に目を向ける田中。その数は、優に100体を超えている。


「確か、、ドール研究所って縦文字くんと もう1人しか居なかったよね・・・その2人だけで これ全部を・・・?」

「確かに、並大抵の事ではなかったですぞ。産みの苦しみという奴ですな」

「やべぇ・・・(色んな意味で)」

「なるほど・・・分かったぜ」

「! 先輩?」

「どないしたんや、一華(いちか)?」


 田中と縦文字の会話を聞いていた足立は、ある事に気がついたようだ。

 足立は近くの棚に近づいて、飾られてあるフィギュアを ひとつ手に取る。

 そしてーーー、


「縦文字。お前、実は殺し屋だな」

「はぁ?」

「何言うてんの?」

「なんと!?」


 突拍子のない事を言い出した。


「いや、正確には お前は殺し屋だった。だが、いつしか人の命を奪う道を歩んだ事を後悔して 足を洗ったんだ」

「そんな・・・ワタクシに その様な()むなる過去は・・・」

「惚けなくていい。この無数の手作りフィギュアが証拠だ」

「!? 彼らが!?」

「お前は、今まで殺して来た人たちの魂を供養するために、殺して来た人たちの数だけフィギュアを作ってるんだろう?」

「ーーーッ!!?」

「んな、供養菩薩みたいな目的でフィギュア作る奴いないだろ」

「せやんな。それで供養してもらった方も困りもんやろし」

「み、宮本武蔵したいですね・・・」

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