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「ーーーぶはっ!!」

「ーーー!」


 水面から出たような声を上げて目を覚ました足立は、そのまま膝をついて息を荒く繰り返す。


「はぁ、、はぁ、、はぁ、、」

「大丈夫ですか?」

「ん・・・あぁ。戻る時間が大したこと無かったからか・・・あんまり辛くはねぇよ。ただ、過去での場所移動が ちょっとばかし疲れただけさ」

「そう、、すか」


 そう言った足立だが、顔は死人のように真っ白になっている。おそらく、過去に戻った反動で貧血気味になっているだけだろうが、見ている側は心配で堪らない。


(ーーーやはり、過去へのタイムリープは危険だ。あまり やさせるべきではないな・・・)


 田中は、ソッ と足立の肩を抱いて彼女を支える。そのまま、車道と歩道の間にある縁石に連れて行いって、彼女を座らせた。


「先輩。もうすぐ、俺が呼んだタクシーが来ますんで、もうちょっと 我慢しててください」

「ん・・・あぁ。ありがとな」


 弱っているのか、足立は やけに素直に田中の言葉を受け入れる。


「そんで、先輩。一応、聞いときますけど・・・」

「なんだよ?」

「今回、知り得たことを警察に話す気は無いですよね?」

「あぁ? あたりめーだろ。《探偵サークル》が いいように出し抜かれたんだぞ。自分のケツは自分で拭く」

「・・・そっすか」


 正直言って、田中としては足立に危険な事をさせたくない。

 浮気の調査対象の堀沢が通り魔的に襲撃された所を見る限り、今回 足立が追う犯人は、かなりの激情型で危険な相手だろう。

 万が一でも、その犯人の怒りが足立に向かう事を避けたい田中は、このまま知り得た事を警察に話して、危ない奴の対応は国家権力に任せておきたい。

 だがーーー、


(ーーーやっぱり、先輩の性格的には “そう” は行かないな。このまま《探偵サークル》だけでケリを付けるつもりだ)


 足立の性格的に、利用されたり コケにされたままなのは 我慢ならないのだ。

 田中は、「ーーーハァ」と、煩わしそうに溜め息を吐いた。


「そんじゃ、先輩。過去に戻って知り得た事を話してください。なんか掴んだんでしょ?」

「ん・・・まぁ、そうだな。まだ確証はねぇが、だいたいの犯人は特定できたよ」

「へぇ、誰ですか?」

「犯人の名前は、もうちょい調べてから話す。ただ、堀沢を襲った奴の原付に 文立学園(ふみりつがくえん)大学(だいがく)のステッカーが貼ってあった。学内の人間である事は確実だ」

「ウチのステッカーが、、ですか」


 文立学園大学の学生は、通学に使う自転車やバイクなどに 大学専用のステッカーを貼ることを義務付けられている。

 これは、外部の者の違法駐車を防止するための処置だ。


「学生に配布されるステッカーには 登録番号が割り振られています。登録番号が分かれば、学生課に問い合わせて、その原付の持ち主を特定できますね」

「あぁ。私もそう思って、番号は記憶しておいた。明日、学生課に聞くつもりだ」

「なるほど・・・でも、それが盗難車だったらどうする気です?」

「そうだったとしても、学内の人間の犯行である可能性は高い。外部の人間が わざわざ大学に来て襲撃用の原付を調達するとは思えんしな。それにーーー、」

「ーーー、そうか! ウチの大学は、駐輪場には必ず防犯カメラが設置してある。仮に盗まれた原付だったとしても、盗んだ奴を特定する事は容易いですね」

「あぁ」


 文立学園大学は、田舎の広い土地をふんだんに使った のびのびとした大学だ。

 だが その影響で、学内が広大になり過ぎて、大学施設間の移動が非常に面倒だという難点も併せ持つ。

 そのため文立の学生は、大学内でも自転車移動が許されており、それに伴い、ほぼ全ての大学施設に駐輪場と盗難防止の防犯カメラが設置してある。

 仮に、堀沢の襲撃に使われた原付が 大学内の駐輪場から盗まれた物ならば、盗んだ犯人が防犯カメラに映っているはずなのだ。


「まぁ、あとは大学の外で原付が盗まれていた場合が面倒だが・・・どっちにしろ犯人は ほぼ特定出来たようなものだ。むしろ、重要なのは証拠の方なんだがー・・・」


 足立は そう言いながら、ちらり と田中に目を向ける。


「田中よぉ、堀沢が担ぎ込まれた病院 分かるか?」

「え! ぇえ・・・救急隊員が運ぶ病院の名前を言っていましたし」

「そうか。それなら・・・」


 次の瞬間、足立は にたり と相好を崩す。


「私が考えた罠で、犯人を嵌められるかもな」

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