浮気調査
時下ますますご発展のこととお慶び申し上げます。
さて、唐突なお願いで恐縮でございますが、《探偵サークル》の皆様にご依頼がありお知らせを申し上げました。
つきましては、お忙しい折とは存じますが以下の調査をお願いしたく存じます。
文学部3回生の堀沢 コウスケの浮気調査をお願いします。
彼、堀沢は、私 経済学部2回生の天宮 テンセイと付き合っているにも関わらず、同学部の1回生 辻 ミヤ と不貞な関係を持っております。
《探偵サークル》の皆様には、私 天宮の恋人である堀沢の不貞の証拠の写真を撮ってほしいのです。
あいにく、私 天宮は、現在 病床に耽っており、大学から離れた実家にて療養をしておりますゆえ、メールでのご依頼をご勘弁ください。
なお、調査期間は、本日5月30日から、私 天宮が大学に復帰する6月5日までお願いします。
「ーーーなんだこりゃ?」
文立学園大学の背後に鬱蒼と茂る山・・・その奥深く、まさに野生の宝庫とされる大自然の中にある第2部室棟。
周囲を錆びたフェンスで ぐるり と囲まれた2階建ての横長の建物であり、1階の窓には何故だか鉄格子が嵌め込まれている・・・いかにも隔離施設のような見た目の建物の一室 ーーー、《探偵サークル》の部室にて、足立一華は、1枚の紙を摘み上げて首を捻らせた。
「今朝、俺が作った《探偵サークル》のホームページに届いていたメールを印刷したものです。依頼ですね」
「ふ〜ん。浮気調査の依頼か・・・。受けたのか?」
「いえ、まだです。足立先輩の指示を聞こうと思いまして」
「はーん・・・ウチは依頼主と直接会う事を心情にしているが、まぁ いいか・・・受けろよ」
「・・・! いいんですか? いつもなら 浮気調査なんて依頼、偉そうに断るのに」
「偉そうには余計だよ・・・私ゃ、他人の惚れた腫れたには首を突っ込まない事にしてんだ。昔、同じような事して痛い目にあったからな」
「! あぁ・・・まぁ、確かに」
《探偵サークル》の副部長兼書記の田中 礼司は、何かを思い出すしたように明後日の方向に目をやる。
「昔は、そりゃ酷い目に遭いましたもんね〜」
そして、クスクスと笑いを噛み殺しながら、使い古した長机の対面に座る足立を見る。
「笑ってんなよな、お前ぇ・・・。つぅか、さっきと依頼受けるメールを依頼主に送れ!! パソコン使えんの お前だけなんだから!!」
「はいはい、分かりましたよ」
足立に怒鳴らるように指示された田中は、のそのそ とカバンからノートパソコンを取り出して 起動させる。
その最中、「あっ!」と思い出したかのように声をあげると、もう一度カバンの中を弄り、4つ折りされている 3枚の紙を取り出した。
そして、3枚の紙を対面に座る足立に投げ渡す。
「なんだコレ?」
「依頼書にあった 3人のプロフィールと顔写真です。堀沢 コウスケ。天宮 テンセイ。辻 ミヤの」
「プロフィールと顔写真?」
足立は、田中から投げ渡された 3枚の紙を開くーーー、と、それぞれに顔写真が印刷されており、その下には写真に写っている人物の簡単なプロフィールと行動パターンが記載されていた。
「依頼書に添付されていたモノです。先輩が依頼を受けるようなら渡そうと思ってまして」
田中は、起動したパソコンのキーボードをカタカタッ と弾きながら、「一応、個人情報なんで、先輩が依頼を受けないなら処分するつもりでした」と付け足した。
「ふーん・・・こいつが堀沢で、こいつが辻か・・・この2人が不貞を働いている証拠を押さえりゃいいわけか」
「そう言う事です。まぁ、調査期間は依頼主の天宮さんが療養から帰ってくるまでの間ですし、その間に不貞行為があればですがーーー、と!」
そこで言葉を締め括った田中は、ガタンと、座っていたパイプ椅子を鳴らして立ち上がった。
「返信完了! そんじゃ、さっそく行きますか。堀沢の浮気調査に!」
「・・・おう、そうだな・・・」
こうして、足立と田中は《堀沢 コウスケの浮気調査》を開始した。




