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《3》魔女王女

新キャラ登場。

でも今回の、ちょっと読みにくいかなぁ……。

読みにくかったらすいません。

読んでくれたら幸いです。

感想くれたら嬉しいです。

 

 これは、罠なのだろうか?


「この奥で主はお持ちになられてます」


 和服で美少女で大和撫子な侍女はそう言った。

 目の前にあるのは、(ふすま)だ。

 しかし襖には《天魔覆滅》と書かれた札がペタリと張られている。

 これが結界用のお札なのか、それとも呪札(じゅさつ)なのか、それは解らないが。


「とにかく開いてみるか……」


 と襖の取っ手に手をかけるが。


「イッ」


 ビリッときた。さながら静電気のように。しかし……


「つぅぅぅぅぅぅぅ〜!!」


 威力が半端なかった。


「な、なんだこりゃぁ……?」

「馬鹿め、迂闊に手を出すとは貴様は餓鬼か?おかしな呪札だったらどうする」

「ちくしょ〜……」


 ルシアは呆れた表情で秀兎を見る。

 しかしすぐに《天魔覆滅》と書かれた札を見る。

 そして、


「【術式をカイセキする。ジゴクに堕とされた、アハレナ天使の、そのヒトミを使用する】」


 不思議な口調と、重複するような声音で、そう呟く。

 謳うように呟く。


 彼女が眼を瞑る。


 そして眼を開く。


 それだけ。

 それだけだ。

 魔法陣が出るとか、変な波動が出るとかは無く…………。


 彼女のヒトミに、赤い瞳に、蒼く照り輝く魔法陣が展開された。


 瞳で、魔法や呪いの効果や構造を見る事の出来るようになる魔法だ。


 そのヒトミで、彼女は《天魔覆滅》と書かれた札を見る。


「……ふむ、ん?………………なんだ、これは……?……、……………いやこれは別に…………、む、そうか」


 しかし、何故だかルシアは釈然としない顔をしていて。


「…………なんだぁ?」

「いや、これは単に一回きりの迎撃呪札だ。もう問題無いだろう」


 と、彼女は指を振るう。

 すると、襖が勢い良く「バンッ!」と開かれる。

 その奥には、また襖があるのだ。

 しかしそれも「バンッ!」と開かれる。

 また襖。「バンッ!」

 また襖。「バンッ!」

 また襖。「バンッ!」

 また襖。「バンッ!」

 また襖。「バンッ!」

 また襖。「バンッ!」

 また襖。「バンッ!」

 ま……。



 とそこまでして、やっと「バンッ!」という音が聞こえなくなる。


 

「長ッ!?」

「悪趣味な……」

 

 ルシアは、不愉快そうな顔で指をパチンッと鳴らした。

 

 途端に部屋が、いや目の前の光景に、ヒビが入る。


 亀裂が入っていく。


「な、何?何が起こってんの?」

「いや、あまりにもここの主が私たちを馬鹿にするから反撃してやったのさ」


 景色が、崩れる。

 そして、

 そして現れた光景は、

 そこは、


 そこは花畑だ。


 城の面影なんて無い。代わりに見えたのは小さな家。

 鬱蒼と生えた森も無い。代わりにあるのは色とりどりの小さな花々。

 周りが何処までも何処までも何処までも、平らで一直線。

 永遠に続いていそうな、広い花畑に、ポツンと立つ小屋。

 木製の小屋。

 煙突から煙。

 小屋のテラスに置かれた真っ白なテーブルと真っ白な椅子。

 白と金で構成された華やかなティーカップに華やかなティーポット。

 美しい銀のトレイに置かれたケーキ、クッキー、キャンディー、チョコレート。

 そして、


 そしてそこには、木製の小屋のテラスの真っ白な椅子の上には。


 眼を見張るような、美しい童女が座っていた。




 ◇◆◇



「あら、御機嫌よう」


 童女は微笑みながらそう言った。

 見たところ、彼女は中学生、それもまだ一年生くらいのように小さく、顔も幼い。


 のだが。


 美しく輝く、真っ青な、澄み切った海のような蒼。艶々と照り輝く、美しく長い髪の毛。

 そして蒼海を湛えた瞳。深々と光る、紺碧の瞳。丸っこい、優しげな瞳。

 まるで白魚のような細い指に、恐ろしく綺麗な肌。


 それはまるで、ニンゲンじゃなかった。


 ニンゲンを超越している美貌だった。

 

 しかし魔王は彼女を知っている。

 あの髪の色を、瞳の色を、声音を、視線を、目付きを、口調を、魔王は知っている。


「なぁるほど、だから『性悪女』ね……。俺的には『女狐』とか『腹黒』とかがお似合いだと思うけど」


 そうなのだ。彼女はそういう性格をしている。

 表向き、お上品そうに振舞ってはいるものの、常に野心に溢れ、狡猾に、貪欲に、自分の願い、願望、望みを手に入れていくのだ。

 あの一見ポアポアしてそうな、表情だけ見ると頭の中は万年お花畑のような微笑みの裏では、恐ろしいほどの戦略、知略、情報、思惑が大河をつくり、巨大な渦のような欲望がぐるぐると渦巻いているのだ。


 だが。


「まぁまぁ、二人で私を睨んで、一体どうしたと言うの?」

「よく言う。幻影まで見せておいて睨まれる理由が解らないとは嘘にしても下手すぎるな」

「ちょっとした冗談よ。おふざけだわ。茶でもどう?」

「は、元々そのつもりだろう?」

「一杯300円で」

「ぬかせ、我らに硬貨は不要だ」

「でも等価交換は世界のコトワリよ〜。私は貴方に茶を差し出すの。はてさて貴方は私に何をしてくれるのかしら?」

「話し相手になってやろう」

「ただお話しするだけではつまらないわ、秀兎くんを貸して」

「どれほど?」

「貴方と私のお茶が終わるまで」

「了承した」

「別に変な事はしないわ。ただ退屈しのぎに私の従者と戦わせるだけ」

「ふ、《勝負》か」

「《勝負》よ」

「了承した」


 ルシアと彼女の間に火花が散る。



 さて、ここで俺が戦う事は確定したのだが。

 この、今の会話に、知略や思惑は絡んでいるのだろうか。

 さっきの彼女の説明で言えば、絶対に思惑が絡んでいるだろう。と思う。

 が、単刀直入に言おう。

 答えはノーだ。

 純粋に、今の会話を楽しみ、そして喜んでいる。

 詰まる所、彼女は何処までに思惑が絡んでいて何処までが無邪気なのか、その区別が難しいのだ。

 余計な策略は練らない。

 思い悩まない。

 楽しむ時は楽しむ。

 彼女はそういう奴なのだ。


 そういう《魔女》なのだ。


 いや、ここは素直に《女神》と呼ぶべきか。

 だがまぁ、やはり魔女の方がしっくりくるのだけれど。



 ――《水の魔女》サタ・マギナレッジ・ブルーブレッド。



 ルシアの親友。

 母の親友。

 そして。


 フリギア帝国皇帝陛下の妃様。

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