最終章.罪滅ぼしの姫
どうして、こうなってしまったの?
私は、そう嘆く。
私はただ、過去を、あの忌まわしい過去を忘れたかっただけなのに。
罪を、彼を裏切ってしまったという罪を、償いたかっただけだった。
いや、今さら贖罪なんて表現で言うのはずるい。
そう、私は忘れたかっただけだ。
あの忌まわしい記憶を、過去を、消し去りたかっただけだ。
結局私は、自分の事しか考えていなかった。
結局私も、神と同じだったという事だ。
ずるい。
嫌らしい奴だ、私は。
醜悪で、卑しい。
「それでも俺は、お前が――――」
彼の言葉が、脳裏に響く。
涙が溢れる。
「なんで、なんで……っ」
涙が溢れる。
私は、自分の拳を、地面に叩きつける。
それでも、あの叫び声が止む事は無い。
「う、ううう、うぁ、うあぁあああああぁぁあああああ――――ッ!」
叫び声が聞こえる。
苦しむ声が聞こえる。
私の所為だ。
私の所為で、こんな事に……!
もう止めてと叫んでも。
それでもあの叫び声が、止む事は無い。
月が啼く。
神の亡骸に、紅い紅いそれが、集まっていく。
叫び声が聞こえる。
ごめんなさいと言いたいけれど。
その声はもう、届かないのだ。