《14》王城の姫。
今回は、カコバナじゃなくて姫の秘密についてです。
そろそろ伏線回収しないと(汗)
「あー…………」
暇だ。
とてつもなく暇だ。
ここの所忙しすぎて、すごい忙しすぎて、それでやっとの事で全部終わらせて、そしたら何をすればいいのかわからず、途方に暮れてしまった。
中央大陸国家の攻略も、残すところあと六つとなった。
ユールゲン。
グドログッセン。
テペントクロウディア。
ゾルニア。
カルティメイト。
そして、中央大陸五列強国家最強国、アルゼンフォーエムス。
まぁ、実質的に言ってしまえば、ユールゲンも、グドログッセンも、カルティメイトも、もうすでにおちた様なものだけど。
あの「宰相」、ミラン・アルノアードの巧みな交渉術と、武力による脅しと、私の、絶対的な人心掌握術、《光》のおかげで。
そのおかげで、もう何百万と言う人間の命が、亡くならずに済んだのだけれど。
だけど、テペントクロウディアとゾルニアは、中々折れてはくれなかった。
それでもアルゼンフォーエムスよりは、良い。
アルゼンは、最悪だ。
交渉、面会の拒否。しまいには暗殺者を遣すほど。
全面戦争だろうか。
全面戦争、だろう。
はやく、はやくこの戦いを終わらせたい。
……思い出す。
私は、思い出す。
あの日の事を。
あの、彼が闇に沈み、彼の全てが消え、そして、そして私が、約束を破ってしまった、あの日の事を。
◆◇◆
彼の存在が、消えた。
彼に関するありとあらゆる情報が、痕跡が、足跡が、私の周りから消えた。
唯一残ったのは、私の心の中の、彼との記憶だけ。
何が起きたのかわからなかった。
何が起きてしまったのか、理解したくなかった。
ただ。
ただ、思っていたのは。
約束は、守れそうにないという事だった。
だって、現にあの時私は、私はもうすでに、泣いていたから。
果ての見えない別れに絶望して、本当にもう、どうしようも無いくらいに、泣いていたから。
だからすぐにあの場を離れて、そして彼の存在が、痕跡が消えている事に気が付いて、また涙が溢れる。
彼は、もうこの世にいないんじゃないか。
彼は、夢幻だったのか。
なんて思って、彼の、最後の言葉と、微笑みを思い出して。
また涙が溢れる。
酷く心が痛む。
好きだった。
愛していた。
だからこそ、酷く心が痛む。
泣いて、泣いて、でも約束を守るために、堪えようとして。
そうしている内に、疲れ果てた。
涙も、枯れ果てた。
自室のベッドで、横たわる。
無気力に、虚ろな瞳で、虚空を見詰める。
「…………」
……本当は、罪滅ぼしの為に、やってきたのに。
いつのまにか、本当に、心の底から恋をしてしまって。
そんな初めての気持ちに戸惑って。
試行錯誤の繰り返し。
七転八倒の繰り返し。
我ながら、なんと愚かで滑稽なことだろう。
自分にそんな資格は、無いと、わかっていた筈なのに。
筈なのに。
「…………」
でも。
でもやっぱり、あの時も私は、彼を好きだったのだ。
裏切ったからと言って、その気持ちに、ウソは、吐けなかったのだ。
間違えてしまったから。
間違えた選択をしてしまったから、私と彼は…………。
◆◇◆
とそこで気が付く。
「……ん?」
これは、いつの事を言っている?
なんだ?
私は今、一体いつの事を言っていた?
私は、何を話していた?
「つ、罪滅ぼし……?」
なんだ、それは……?
私は一体、一体いつの事を言った?
まるで、夢うつつで喋っていたように、無意識で喋っていたように。
喋っていた内容が、思い出せない。
「な、何……?」
私は今、何を、思い出していた?