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《9》絶望少女。

誤字脱字などありましたらご報告くださいませ。

 夜。

 満月。

 闇夜の浮かぶ、鳥。


 否、それは人だ。


 ボサボサの髪に、緩みきった瞳。だらけきった服装に、覇気の無い雰囲気。

 魔王、黒宮秀兎。

 彼は、宿泊している宿を抜け出し、闇で満たされたグドログッセンの上空を飛行魔術で軽やかに飛んでいた。

 目的地は首都グッセンから離れた郊外の屋敷――グリーデン公の屋敷だ。


「…………」


 魔女は宿ですやすや寝ている。

 ここまで澄み切った闇夜だと、闇の魔女である彼女は精神的にも落ち着き、深い眠りにつくのである。

 

「……ごめん」


 誰が咎めるわけでもない。けれど秀兎は、謝った。

 

 郊外とはいえ、グリーデン公の屋敷はそれほど遠くない。

 近くにあった木に降り立ち、ビーチェの部屋を探す。




 ◇◆◇




「痛ッ……」


 身体が痛い。

 まったく、今日は面白い事があって良い気分だったのに、台無しだ。

 罰とはいえ、今日は一段と酷かった。

 

「…………」

 

 何も、考えるな。

 どうせ、もう終わるのだから。

 何も、考えるな。

 

 無言でベッドに飛び込む。


 眠りにつこう。

 全てを忘れよう。

 夢の中へ。

 …………。

 

「……私の眠りを妨げる愚者は、一体何処の誰?」


 その時、そっと部屋の窓が開いた。




 ◇◆◇




「…………や」


 魔王は、軽い会釈をして、少女を見る。


「あら、魔王様。一体どうしたの?待ちきれずに私を攫いに来てしまったのかしら?」

「はは、いや……」


 魔王は、何かを言おうとする。

 

「まぁ、お前とのお喋りは、少し楽しかったなぁと思って」

「で、お喋りをしに来たなんて事は、ないでしょう?一体どうしたの?」

「…………」

「…………」

 

 沈黙。


「…………」

「…………」


 やがて。


「……いや、まぁ、なんていうかねぇ~。なんつ~んだろな、ああ~」

「…………」


 魔王は、少しだけ頭をかいて。

 

「んじゃま、無駄は省いて、単刀直入に言うわ」

「ええ、私もそうしてくれるとありがたいわ。もう眠くて死にそうなの」



「お前、無理してるだろ」



「なんの事?」

「お前、俺と話してるときや自分の事を話してるときもニコニコしてたけど、無理してる」

「無理なんかしてないわ。貴方とのお喋りは純粋に楽しかったし、母のこともそれなり思い切りがついている」

「誤魔化してるんだよ。お前は今でも後悔してる。無理して自分の気持ちを誤魔化してる」

「だから私は……」

「それでも、お前は絶対無理している」

「…………」

「さっき言っただろう?「まぁ私の場合、未練というか、羨みというか、そんな感じなのかもしれないけど」って」

「……聞こえていたのね」

「聞こえていたさ、意味が解んなかっただけ」


 でもお前と話して解った。と魔王は言う。


「お前は、あんな事を言ってしまうほどにニンゲンに憧れ、ニンゲンじゃない自分、自分の力に絶望してる」


「…………」

「自分が普通のニンゲンだったら、自分が母親よりも劣っていたら、そんな思いを抱えてる」

「…………」

「ニコニコ笑っているのはその「思い」を忘れるため。自分を誤魔化す為」

「…………」

「結局お前はまだ迷ってる。母親への申し訳無さとか、母親に会いたいと思う気持ちとか、色々思って苦悩している」

「……そうね。苦悩しているわ。結局のところ、私はなにも決めれらない、弱々しい生き物なの」



「だから、お前は、この屋敷を潰すのか?」



「―――――――――っ」


 少女の頬が、引きつった。


「なんとなく言ってみたが、正解か」

「……酷い人」

「何とでも言え。そこまで苦悩して、絶望に浸った人間が最後に行うのは、逃避だからな」

「……逃避、ね」

「復讐といってもいいな。因縁の場、人間を葬る。記憶から葬る。違った視点で見れば、それは『決着』なのかもしれないけど、結局のところそれは逃避さ」

「………………」

「………………」

「……で、貴方は私の『逃避』を未然に防ごうとしているのかしら」

「………………」

「確かに私は明日、この家を潰すわ。この場所には、因縁があり、私の絶望と、苦悩の思い出がつまっている。復讐なんて綺麗な物じゃないわ。完全に『逃避』よ」


 でもね。と少女は言う。


「私には、重過ぎる『思い』なの。苦悩や、絶望が、もう心を押しつぶしてしまいそうで、耐えられない。だから逃げるの」


「………………間違ってる」


「ええ間違っているわ。逃げると言う行為は、間違っている」

「…………」

「だからって、このままでいたら私は死んでしまうわ。いいえ、現に今も死にそう。心が悲鳴を上げているわ」

「…………それでも、間違っていることには、変わりねぇだろ」

「…………」

「断言できるかもな、間違ってる」

「――――――――――なんだって……」

「あん?」

「なんだって、言うのよ……!」

「だから、俺は間違ってるって……」



 そして少女の思いが、爆発した。



 少女は魔王に飛び掛る。


「なんだって、言うのよ!」

「……っ」

「貴方に何が解るの!?私でも無いくせに!ねぇ、私の何が解るの!?」

「……わかんねぇよ」

「そうだ!私でも無いくせに!知った風なことをペラペラと!私が迷っている?はっ!迷っているに決まってる!母親への申し訳無さ?母親に会いたいと思う気持ち?あるに決まっているでしょう!」

「ふぅん」

「私でも無いくせに!わかるわけないでしょう!私がこの十数年でどれだけ絶望して!どれだけ苦悩して!どんな思いで過ごしてきたか、貴方に、貴方なんかに、解るはずがない!」


 母の悲惨な死に絶望し。

 自分の存在に絶望し。

 自分の力に絶望し。

 母の思いに苦悩し。

 自分の存在に苦悩し。

 そして結局、なにも決断できないまま、逃げ続けた。

 そして、気付いた時には長い月日が経っていて。

 その逃げ続ける自分に、呆れ果て、苦悩し、逃げる。


「何も解らないくせに!何も知らないくせに!無知蒙昧な輩が、自分勝手に人の心に踏み込もうとしないで!」


 貴方の行為は、完全に人の心を踏み躙ってる!と少女は言った。

 笑わず、ヒステリックに、少女は言った。


「……なんでよ、なんで貴方はそんな事をするの……?もう少しで、もう少しでこの『地獄』ともさよならだったのに、貴方と、魔女と、楽しそうな旅に出られたはずなのに……」

 

 中途半端に、私を、私を助けようと、しないでよ……。と少女は涙を流した。

 

 

 

「…………」

「…………」



 

 なんて、滑稽な話なんだろう。

 凄い。

 凄すぎる。

 絶望し苦悩した少女とか。

 自分勝手に心を踏み潰そうとした自分とか。

 ホントもう、どうでも良いくらい。いや前者はどうでもよく無いけど。



 古代の人は、偉大だ。



「く、くくく、あっはははははは」

「な、なんで笑うの?」


 もうホント、敬意を表したい。

 古代の人は凄い。凄すぎる。

 いやいや、いやいやいや、もうホントにね。


「何がおかしいって言うのよ!」


 

「お前、自分で何言ったか、判ってるよなぁ?」



「え……?」

「撤回しても無駄だかんね、もう俺聞いちゃったもんね」

「な、何を言ってるの?」


 古代の人の『話術』には、もうホント、感服したよ。



「お前、やっぱ救って欲しいんじゃん」



「あ……」


 ラノベっぽく演出して、そのまま話したら、こうも簡単に筋書き通りに進んでくれて、本当に驚くばかりだ。


「聞いたもんね、聞いちゃったもんね。「中途半端に、私を、私を助けようと――」

「きゃー!!」バキッ。

「うぼぉ!」

「な、なななななんて、なんて事!私は!私はぁぁぁぁぁぁ!」

「ぎゃははキャラ崩壊してやんのー」

「誰の所為だと思っているー!」ドンッ。

「うがぁ!」


 が、顔面が、し、死ぬ……。


「うう、人生最大の恥だわ……」

「まぁまぁまぁ、そんなに赤くなっちゃって、ガキだねぇ~」

「うぅ……」

「はは、はははは」

 

 とりあえずまぁ、本心を聞けたという事で、この鼻の痛みは、我慢しようじゃないか。と思った。




 ◇◆◇




「で、結局貴方は何をしに来たの?」


 頬を染め、少しだけむくれた表情でこちらを見てくる。

 可愛い。


「私の逃避を未然に防ごうとしてるのでしょうけど、無駄よ」

「いや別に。お前の復讐劇を防ごうとしてるわけじゃないさ」

「は?じゃあ、何のために?」

「お前と話したかったから」

「……口説き文句?」

「ちげぇよ。お前がどう思ってるのか聞きたかっただけ」


 さっきの出来事が喚起される。

 ビーチェはついっと顔を逸らした。

 恥かしがってる。河合さんだなぁ。


「で、でも、聞きに来ただけって事は無いでしょう?」

「ああ」

「何をするつもりなの?」

「手伝ってやる」

「は?」

「お前の復讐ってヤツを、手伝ってやるよ」

「え……?でも、貴方さっきそれを否定して……」


 そう。

 俺は言った。

 復讐は、逃避であり、間違っている。

 そう言った。


 だが。


「誰がやっちゃいけないなんていった?」


 抑制はしてない。

 間違ってる。でも、やっちゃいけないなんて、言ってない。


「……えぇ?でも、見ず知らずの人間に、そこまでする必要は……」

「お前と話してると楽しい。以上。OK?」

「……………」


 我ながら酷く適当な理由だが、まぁ、俺の人生大半はそんなもんだ。

 別に返答を待つ必要も無い。

 俺はビーチェを退かし、窓を開いてテラスへ出る。


「……楽しみにしてるわ」


 最後にビーチェはそう言い。


「あっそ」


 素っ気無く答えて、俺は屋敷を飛び出した。



 ◆◆◆


 次の日、魔女と魔王は姿を現さなかった。

いやぁ薄い!ものすげぇ薄い!

話的には感動かもしれないけで!地の文が第三者視点だから共感できねぇ!


ところで不幸魔王と勇者嫁!を読み返したんですが……。

誰でしょうね。あれ書いたの。

もう自分で書いたとは思えないっす。あの頃は楽しかった。……っけ?

とにかくご感想なぞ、ありましたら、ね。

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