序.そして魔王は降臨す――
誤字、脱字、おかしな文章は見つけ次第修正します。
黒宮秀兎こと俺は魔王だった。やる気の無い無気力な魔王様だった。
別に世界を滅ぼすわけでもなく、世界を征服するわけでもなく、極東の島国、絶対中立国『日本』のとある場所の魔王城にて、自由に、気ままに、だらだらと人間生活を満喫していた。
たまに勇者やら騎士やらがやってきて「魔王死ねー!」という展開になるのだが、まぁだてに魔王をやってるわけでは無いので「嫌じゃー!」と適当にあしらったりもした。
魔王城にはたくさんの人がいて、俺は彼らと共に暮らしていた。
そんな魔王城に一人のお姫様がやってきた。
ヒナ・ラヴデルト・フリギア。
彼女は世界最大の軍事大国『フリギア』の第三皇女様にして、《光の姫君》という伝説級にすごいお姫様だった。
かくゆう俺も《闇の皇帝》という伝説的にすんげぇえええ魔王様だった。
二人は光と闇を身体に宿した、対の存在だった。
そして彼女は俺に結婚しようと言った。
俺は困惑した。何言ってんのこの人?
しかし周囲は何故だか賛成一直線。成り行きで式を挙げ二人はめでたく結婚した。
それから色々と紆余曲折があり、平和に、それまで通りに、自由に、気ままに、楽しく毎日を過ごし、まぁ俺自身もまんざらでもないなーと思い始めていた。のだが。
俺こと魔王は裏切られてしまった。
裏切られて封印されてしまった。
闇の、奥の奥の奥の奥の奥に。
誰も来ない孤独の城に。
裏切ったのは親友たちだった。
といっても俺は彼らが親友だという事は忘れていたのだが。
曰く「闇が地上にある限り争いは無くならない」らしい。
彼は平和な世界が欲しいらしい。
争いの無い、平和な世界が欲しいらしい。
理由はわからないが、その目標は共感できる。
彼らは俺を裏切ったつもりかもしれないが、俺は全部知っていた。
裏切る事も、全て。
知っていた上で俺は封印された。
魔王城の皆の記憶を消し、世界にある俺の痕跡を消し、俺は世界から姿を消した。
でも俺は何かを忘れている気がするのだ。
大事な大事な何かを忘れている気がするのだ。
それは思い出さないといけない物のはずなのだ。
忘れては行けない物のはずなのだ。
それも思い出してやっと、この物語は始まるというのに……。
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