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《7》困惑する勇者姫

はじめに。

この物語は、完全に脱力であり、真面目なシーンにおいて真面目な回答が返ってくるとは限りません。


 

 お祭り。

 そこらじゅうから楽しそうな声が聞こえてくる。

 クアトロリア王女の謁見の間は、上流貴族たちが集まるパーティー会場になっていた。

 

「ラヴデルト陛下。彼らがクアトロリアで最も優秀な男子でございます」


 クアトロリア王は跪きながらそう言った。

 言い終わると同時に、彼の後ろにいた五人の男が顔を上げる。

 まぁやはり、イケメンだった。


「…………」


 王城の玉座に座っていたヒナは、内心で溜め息をついた。

 併合してはこうやって優秀なイケメンを見てきているヒナにとって、もうおそらくほとんど同じ顔に見えるのでは無いだろうか。


「陛下。どうです、お気に召した方はいましたか?」


 と、宰相のミランは聞いてくるのだけれど。

 正直言ってもうイケメンは見飽きたよー。


「クアトロリア王、残念ですが私は彼らと結婚するつもりはありません」


 こういうのはバッサリしておかないと、後々しつこい。


「ですが優秀な人材は喉から手が出るほど欲しい。貴方たちは日本の為に頑張ってください」


 と、そんな毎回のように繰り返してきた恒例行事みたいな物が終わる。

 いつも通り。

 このまま夜までパーティーは続き、祭りは続き、笑顔が絶えない国に……。


 と、そこで、この城の兵士が慌てて飛び込んできた。


 慌て具合からして、ただ事ではない。

 

「何事だ!」


 クアトロリア王の声が響く。



「申し上げます!北、マルデクロイツ貴国の方角から、りゅ、《竜》が……!」



「竜だとッ!?」

「それもただの竜ではありません!銀です!銀色の竜が!王城に向かってきています!」


 銀竜。

 銀竜!?

 銀竜といえば、災いをもたらす事で有名な怪物じゃないか!


「な、何てことだ……」


 クアトロリア王は慄き、貴族たちも慌てだす。


「な、何故……」

「どうなっている!」

「伝説の、伝説の化け物がぁ!?」

「災厄の前触れよ!」


 などと、軽くパニック状態に陥りかけている。

 が、そこで


「静かに!」


 ミランは、威圧的な、それでいて荘厳な声で、言った。

 場が、静まり返る。


「私たちには勇者姫様がついておいでだ。伝説の化物などおそるるに足らず!そうではなかろうか!」


 その言葉だけで、貴族たちの不安が、ある程度消える。

 

「そうです。私が、銀竜の災いから皆さんを護ります!」


 貴族たちの不安が消え、勇気、希望が植えつけられる。



 ヒナは立ち上がり、北の風景を一望できるバルコニーへと歩き出した。

 続いて遠征に来ていた騎士団長のエルデリカとミランが彼女の後を追う。

 

「ヴァーリエ。もしもの時は頼むぞ」


 ミランは小声で言う。

 

「もちろんだ。だが伝説の銀竜ともなると、どうなるか……」

「なんだ、やけに弱気だな?」

「別に。戦った事のない相手に臆するのは至極当然の事だろう?」

「まぁそりゃそうだ」

「ただ……」

「ただ?」


「あの銀竜、攻撃をしてくるわけではないと思う。私は人一倍殺気に敏感だが、北の方からは殺気を微塵も感じなかった」

 

「……ふむ」


 彼女のそういっているのなら、多分そうなのだろう。


 では一体、何が目的なのだろうか?



 ◆◆◆



 災いを呼ぶ竜。

 かつて繁栄していた大国が、その竜の住処を侵し、怒りに触れ、滅ぼされたという伝説があった。

 意味的に、「むやみに竜を刺激するな」、とか「自業自得」とか、そういう意味が込められた話らしいのだけれど、まぁ伝説を後世に伝えるのは所詮人間なわけで、伝えていくうちに右に左に曲がり捩れ歪み本来の形を失うのは、やはりしょうがないのだ。

 

 だからといって、本来の意味を忘れて良いわけでは、ないのだけれど。


 銀竜。災呼(さいこ)の竜。さいこ、つまり最古(さいこ)の竜だ。

 そう、災いを呼ぶ竜は、この世に存在する竜の、始まり。

 そして、銀竜に関するいくつかの古文書に書かれた銀竜のステータスは、どの竜の及ばないほどだ。

 

 起源にして、頂点なのだ。


 しかし、臆病なのか絶滅したのか、銀竜の目撃情報は、ここ100年なかったはず。

 そんな、今の時代にいるかどうかもわからない竜が、銀竜。

 その銀竜が、現れてしまった。

 

 荘厳な銀翼。

 威風堂々たる風貌。

 巨大な体躯。

 

 とても、災いを呼ぶような竜には、見えなかった。

 限りない神聖さを感じてしまうほどに、その竜は美しく、神々しい。

 

 そしてその竜は、静かに、ゆっくりと、巨大なバルコニーに降り立った。



 ◆◆◆



「…………」

 

 その姿に見惚れていた人間は、たくさんいただろう。

 だってそれは、まるで月のように煌々とした、美しい生き物だったから。

 災いなんて言葉が、それに付随するのは、失礼な事でだとさえ思ってしまった。

 

 しかしエルデリカ・ヴァーリエは、それの手の中に誰かいる事にいち早く気が付いた。


「…………」


 直立不動で、しかしその手を気にかける。

 それに応えるかのように、竜はゆっくりと手を開いた。


 その手から、何か真っ黒な物が落ちる、……いや、あれは多分、人だ。真っ黒な鎧、といよりも法衣と鎧が合体したような、そんな服を纏った人間が、降りてきた。


 周囲の空気が、張り詰める。

 エルデリカはいつでも剣を抜ける状態になる。

 周りも、持参の剣を構える。


 黒い服を纏った人間は、こちらを見る。

 黒い、ぼさっとした髪が特徴的だ。

 性別は男。年はざっと見17歳前後。

 

 一体なんのようなのか、それはわからない。

 もしかしたら魔法でも発動させるかと思ったが、しかし、しかし彼はこちらを見て肩を竦めた。竦めるだけだった。

 

「ミラン、なんだアイツは」

「わからない。とりあえず、戦う気はないみたいだけど……」


 とそこで竜が弾ける。

 銀色の竜が、粉々に弾ける。

 

 一瞬何かの攻撃かと思ったが、しかしその粉々になった破片は空に飛んでいった。

 よくみると、その破片は、小さな鳥だ。

 うぐいすやツバメのような小さな鳥が空へ羽ばたいたのだ。


 そして、気を取られて気付かなかった。


 あの真っ黒な服の人間の横に、真っ黒なドレスを着た女が立っていた。

 彼女が黒い手袋をパチンッと合わせると、その小さな鳥たちが一斉に爆発する。

 さながら、花火のように。

 パァン!と軽快な音を立てながら爆発した。

 連続する爆発音。

 

 爆発が終わると、民衆が騒ぎ出した。

 口笛や、歓声や、その他諸々の、嬉しそうな反応。


 その反応に、真っ黒な彼らは満足げだった。ていうかハイタッチしてる。ハイタッチって。


 エルデリカはますます混乱してしまった。

 

「す、少なくとも、敵意は無い、よな……?」


 ミランに同意を求めるが、彼も相当混乱しているようだった。


「ま、まぁ、……いや、やはりもしもの場合があるからな。警戒は怠るな」


 と言っても、二人が一体何をしたいのか全くもって意味不明だ。

 と、その二人がこちらを向いて歩き出した。

 近付いてくる。

 

「おー、なんかすげぇー顔ぶれー」


 と歩きながら男は言った。


「さすがにここまでとは、それにしてもなかなかにイケメンが多いじゃないか」


 と女は言った。


「何?ひょっとして面食いなの?」

「男なんて生き物はな、所詮顔で決まるものだ」

「いやもっと他にあるでしょ!?性格とか、体格とか」

「甘いな、そんな事を考えるほど女は複雑に出来てはいないぞ」

「……お前の言ってる事、まじ意味不明なんですけど……」

「ふふ、安心しろ、私自身も言っていて意味不明だ」


 不覚にもエルデリカは、いやそこにいる全員が、呆然としてしまった。

 表情が固定された。

 というか、この二人は、一体なんなんだろうか。

 敵意とか、殺気とか、全く感じられないんですけど。

 

 そして、真っ黒な男はこちらに挨拶をした。



「ちわーす」



 ………………………………。

 一瞬、この人間は頭がぶっ飛んでいるのだと思った。

 女が不機嫌顔で言う。


「お前、限りなく馬鹿。まじ死ね」

「口調がお変わりなさってる。てかじゃどうやって挨拶するんだよ?」

「はぁ?決まっているだろう。よく見ていろ」


 と、女は一歩前に出て、



(ひざまづ)け愚民ども」



 ………………………………。

 意味不明だった。 


「おい、こいつら跪かないぞ」

「お前なぁ、まじなに言っちゃって…………あ、なんか唐突にハラ減った」

「おお、奇遇だな、私も少し小腹が空いていたところだ」



「なぁ、あんた達。メシ食わせてくれねぇ?」

「おい、愚民ども。私は食事がしたいぞ」



 全く一緒の要求で、天と地の立場の違いで、全く違った言動で、何故か二人はハモっていた。

うーん。私的には、なんといいますか、いい感じかなーと思っていますが、かなり怒られそうで、超こえぇぇぇぇぇ!って感じです……(=-=;)

感想など、お待ちしております。

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