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《5》戦争遊戯

うわぁすげぇ設定……(汗)

完結できるかなぁ。

 

 屈服した。

 もちろん俺が。

 安い挑発に乗り、突っ込んでぶった切ってやろうとしたら、足を取られ仰向けに転んで首に刀を添えられてはい終了。

 馬鹿だった。

 完全無欠の馬鹿だった。


「ま、参りました……」

「…………」


 酷く冷めた眼で見られた。

 完全に見下されている。


「……噂ほどではないですね」

「噂?」

「いわく、封印された魔王は世界最強の剣士。だそうだったのですが…………残念」

「…………」


 一体誰だそんな噂を流した奴は。

 まぁつまり、『拍子抜け』、という事だろう。

 でも魔王が世界最強の剣士って……、武闘派で安直な噂だ。


「すまないがそんな特技を人前で披露した事は、俺の頭ん中の記憶では無かったな」

「そうですか」


 落胆。

 気まずい雰囲気が流れそうだ。

 気晴らしに情報提供。


「しかし俺の知り合いにクソ強ぇやつがいる」

「エルデリカ・ヴァーリエの事ですね?」

「…………」


 知ってやがった。


「彼女は不思議な剣技を使うそうですが、まぁその内私が捻り潰します」

「…………」


 俺が考える限り、彼女たちが戦ったら多分怪獣大決戦並みにすごいバトルが繰り広げられると思う。


 

 ともあれ、勝敗は決した。

 

 負けたけれども、別に悔しくない。

 負けた。ただそれだけだった。




 ◇◆◇




「よっと…………」


 ぶった切られた左腕を拾い、治癒魔法で接着。

 幸い、綺麗に切断されていた為意外と速く繋がる。

 繋がり具合を確かめる。グー、パー、グー、パー、……よし。

 中々に上手く繋がった。少し痺れているが、すぐに直るだろう。


 小屋の方を見ると、魔女の二人の談笑が丁度終わったところだった。


「お〜、話終わった?」

「うむ、これからについてアドバイスを貰っていたところだ」


 お、彼女も彼女なりにこれからの事について考えているのか。


 と、感心したのも束の間、彼女の手の中にある本の題名が眼に入った。

 ――『下僕の正しい作り方 〜魅惑の飴と鞭〜』

 ……完全に方向が違っていた。

 

「ま、まぁそこはスルーするとして……、んで、俺が負けちゃったわけだけど……」


 サタは微笑。


「そうね、等価交換。さ、はやく居場所を教えて?」


 そうだった。俺が負けたら母さんの潜伏場所を教えるんだった。


「あ、ああ。えぇっと、確か……」


 テロテロ、ってとこだったっけ……。


「【テロアロアテロケロス】、だったかな?」

「なんだ《お膝元》じゃない」


 お膝元?


「それは本当なの?」

「多分そこであってると思うけど……」 


 確証は無いのだけれど。


「ふーん……」

 

 サタは秀兎をいぶかしげに見詰め、


「ま、どちらにせよって感じね……。いいわ、ありがとう」

「なんだぁ?らしくない。等価交換って言ったのはサタだろうに」

「あら、知らないの?感謝の言葉も《物》なのよ?」

「…………がめつッ」

 

 無理矢理セールス商品を押し付けてくるセールスマンより酷かった。

 

 しかしまぁ、負けてしまった。

 何か有益な情報は欲しかったが、仕方ない。

 

「……はぁ、結局戦い損か」


 ギャンブルに負けた人の気持ちってこんな感じだろうか。


「あ、溜め息。空気が淀むわ、お金払って」

「あ゛あ゛!?ってえ?それマジで言ってる?」

「うそうそ」

「…………」


 ちょっとウザイと思ってしまった自分はいけない子?


「それはまぁともかくとして、今回はちょっとだけ特別しようと思うの」

「は?特別?」

 

 一体何の話だ。


「可愛い息子に、義母としては贈り物をしたいわけ」

「…………」


 余りのらしくなさに背筋が凍った。

 つまり、タダで物をくれるらしい。

 どんな望みも狡猾に手に入れていく強欲な魔女が、タダで自分の物をくれるらしい。


「情報をあげる。いいかしら?」

 

 微笑。優しげな、柔らかい、微笑み。


「…………、……うん、でも、まぁ」


 今回は、気紛れな彼女に感謝する事にした。




 ◇◆◇




「良い?今日本は中小国家の中でも五列強国の一つ、《クアトロリア》を併合して益々勢いづいているわ」


 俺たちがいた世界、次元での世界地図。

 十字架のように並んだ大陸。

 

 最東端に位置する日本。

 

 最北端に位置するマジスティア。


 最西端に位置するフリギア。


 最南端に位置するグノーシア。


 中央大陸に広がる中小国。

 

 なぜ中央大陸の国々だけがバラバラなのか、その答えは簡単だ。

 《魔女(メガミ)》がいないからだ。

 マジスティアにもグノーシアにも、魔法体系にならった、四人の魔女が、その国いるのだけれど、中央大陸にはいないのだ。

 だからまとまらない。

 しかしまぁ今は関係の無い話だ。

 

 問題は、その配置。

 かなり奇妙な、奇怪な、まるで何かを囲っているのかのような配置。

 この地図を見て、多分八割の人はこの中心に何かあるのでは?と、勘繰ってしまうような、そんな配置。


「中学生が考えそうな地図だよなぁ……」

「そうね、でもこういう配置は形式美とか様式美とか、少なからずそういう要素が入っているから(あなど)れないのよねぇ」

「…………中学生すげぇ」


 ともあれ。


「貴方たちがまず最初にしないといけない事はね……」


 サタはトンッと日本を指差す。


「《宣戦布告》」


 そうなのだ。秀兎はまず日本で「俺魔王でーす。復活しましたー」と宣言しなければならないのだ。

 そうしなければ、ある術式が発動せず、目標にまで手が届かないのだ。

 ある術式とは、よくわからないのだが。

 

「それも、劇的な登場じゃないといけないの。周囲を圧倒するような、そんな感じでね」

 

 サタは真剣な口調で言う。


「日本は五列強国のクアトロリアを併合した事で大規模な式典を催すそうよ。そこを狙うの」


 つまり、併合を記念する大規模な式典に乗り込み、挨拶して来い。という事だ。

 魔王という存在を、日本のニンゲンに知らしめる、それをしてやっとある術式が完成、起動する。らしい。


「いい?幸いにも、中央大陸の中小国は未だに日本に《魔王》が潜んでいる、もしくは日本政府の管理下にある、と勘違いしているわけ。日本は自分たちにびびってると勘違いしてるみたいだけどね。それに、中央大陸の連中は連合を始めてるの。だから、貴方が《魔王》だとばれたらあっと言う間に中央大陸は火の海よ」

「…………」


 ちょっと待て。

 俺がもし魔王だという事で日本の式典に顔を出したとして、それで術式は発動する。

 日本は、多分、七割方俺を敵だと見なすだろう。

 その兆候が、他国にバレれば、中央大陸にバレれば、一瞬にして中央大陸と日本は全面戦争だ。

 

「……どういう事だ?これは」


「遅かれ速かれ、って事よ。どちらにせよ中央大陸は『戦場』になるの。だから、その決まりきってしまった行き先を有効に利用していくのよ」


「いや決まりきったなんて言うなよ。そういう性格はしていないけど、でも何かしらの『逃げ道』はあるだ――」


「無い」

 

 完膚なきまでの否定。


「無いわ。少なくとも連合に戦争を止める気はないでしょう。だって、連合の方の連中は皆戦争大好きだもの。金とか、資源とか、自分の欲望を生成、消費するのに本当に都合が良いんだもの、『戦争』は」


「まぁ、そりゃそうだけどさ……」


 反論は、出来ない。

 

「あえて言うなら『子供』と一緒よ。ニンゲンはみんな、自分の欲望に従っている事が好きなの。子供のうちはそれが出来るけど、大人になると、理性とか、ルールとか、倫理観とか、そんな物で『自縛』する。『戦争』はその『自縛』を解くのに都合の良いシチュエーション、言い訳といってもいいわね。だからニンゲンは、みんな戦争大好きなの」


 奇妙な例え方。確かに正論だと思う。だが


「皆が皆、戦争が好きなわけでないだろう?」


「いいえ、いない。もしいるのであれば…………」


 彼女は憂いげな表情で、言った。




「そういう人間は、ニンゲンじゃない。それは、人形か――――《化物》よ」



 

 ◇◆◇



 

 ともあれとにかく、秀兎たちはまず日本に向かう事になった。

 

 併合記念式典まであと二日。


 だからって別に、これと言った準備や何やらをするわけではないのだけれど。


 秀兎は、黒宮秀兎は、


 なんとも言えない、不可解な思いでその日を待つことになった。


 期待ト不安。


 何に期待し何に不安を感じるのか。


 理由不明。


 それすら全くわからないまま、黒宮秀兎は、魔王は、


 勇者と対峙することになった。

感想、評価、指摘を待ってたりします。

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