009
「ちょっといいか?」
浮遊しながら寝ているオリビアを観察していると、カルドに声をかけられた。
「どうしたの?」
「気づいたのだが」
カルドも何かに気づいたのか……。
「おそらく……何かしら武器や防具になるものがあった方がいいと思うんだが、どうだろう?」
凄く真っ当な話をされた。
魔物と戦おうとしている僕らにはもちろん何かしら道具を持っていた方がそりゃいい。
でもこの閉じた環境だと資源なんてものは海か土か木か小屋ぐらいしかなくて、鉄の類いなんてものはどこにも見たらない。
「……それは、その通りだけど」
「ああ、言いたいことは分かる。
素材が無いと言いたいんだろう」
うん、と僕は頷く。
「どうやらな、強い体以上に物を作ることが得意なようでな」
「ん?カルドが物を作れるってこと?」
「そうそう。本能的に物を作るってことに、長けてるようだ」
「え、なんでそれが分かったの?」
「いやそれが、気づいたんだ。本能の赴くままに、こう作ってみたら……」
「作ってみたら、ってさっき素材は無いって言ってたけど」
「いや、無いと思ったらあった。ほれ、地面にいっぱいあるだろ」
「え、地面って……土?」
「そう。どうやらワシの種族は土の魔法に長けてるようで、土を粘土みたいにして成型して固めることが自由自在に出来るようになったぞ。そうしたら、この通り、簡単な装備が出来上がり、ってわけよ」
そういってカルドは半身をそらし、背後を見せる。そこには盾と斧が置かれていた。
「どうだ?みんなの武器も揃えたら、結構いい感じにならんか?」
「なるよなる!ちょっと触っていい?」
カルドに許可をもらって、僕は触れる。しっかり作られている。持ち上げてみるがそんなに重くも無い。
「すごいねこれ。土から作ったっていうのに結構軽くないか?」
「ああ、余分な水分やら何やらは全部排除したからな。
しかし作るのは楽しいな。久しぶりに心から楽しいと思えたぞ」
ガハハとカルドは豪華に笑う。
こんなに笑うカルドは初めて見た。
皆んな向けにどんな装備を作ってもらおうか考えつつ、僕は近日中に森の中を探索する決意した。