006
この世界には魔法ってものが存在して、僕にもその才能が勿論ある。
オリビアが精霊を使役して魔法を使うと言っていたが、エルドの体を霧にする能力も魔法だ。おそらく、ウーフの身体能力も魔法の一種だと考える。
さて、では僕がどんな魔法が使えるかというと、今のところは回復だとか相手を眠らせるとか味方を打たれ強くするだとか、そういった支援になりそうなものが多い。あ、そうそう、水も出せる。島でのこのスキル、重要。
なので、魔法の質を上げることに力を注ぐことにする。
確か、長老が言っていたような。
ーーイメージが重要だ。何事もイメージすれば、良い結果に結びつくぞ、と。
イメージする。僕は自分の体の皮膚から2mm離れた場所に薄く、しかし鉄のように硬い膜が出来ることをイメージする。
この魔法で仲間が傷つかないように、出来るだけ硬く守れるように。
強く意識し、魔法を行使する。
見た目上は何も変わっていないが、今、僕の体は通常時よりも打たれ強くなっているはずだ。効果を確かめるのが怖いが、確かめないと意味がない。
どうやって確かめるか……とあたりを見渡すとイリアがいた。
「イリア。ちょうど良かった、僕を殴って」
「! アルフ、大丈夫?頭おかしいの?」
「大丈夫、大丈夫。魔法で打たれ強くなってみたんだ。効果を試したいからお願い」
「ああ、そうなの。てっきりーー」
「てっきり?」
「ううん、何もないわ。じゃあ……これでやるわね。」
イリアは手を背中の腰の辺りに周したと思ったら、トンカチを取り出した。
「……え、いつも持ち歩いてる?」
「たまたまトンカチ日和だったから、持ち歩いていただけだよ」
「トンカチ日和って……そんな日って、ある?」
「細かいことはいいじゃない。これをやって欲しかったんでしょう。えいっ!」
ガチン!と僕の頭に当たる。
……あ、大丈夫だ。良かった効果あった、いや待って。魔法すごいけど、待って。……怖えええええええええ!!
この子、ノーモーションで殴ってきたよ!避ける暇もない!何この暗殺者ばりの不意の突きかた。
やばくない!?普通腕とか死ぬことがなさそうな場所を殴るでしょ?!
躊躇いもなく頭って!この子あれだ。怒らせたらあかんやつだ。ちょっとしたトラウマを植え付けられそうになるわ。
「うん。大丈夫大丈夫。その調子だね。じゃ、継続して頑張ってね〜」
イリアは笑顔で去っていった。