024
冒険者団体に魔物の報告をしたところ、死体を確認するということで報酬は後日となったが、先に倒していたいつもの魔物の分の報酬はいただくことができたので、今日も宿に困ることは無くなった。
そんな僕の隣にいるのはアイリでパーティー申請用紙に必要事項を書き込んでいる。
「これで……OKと」
「書けた?」
「うん、へへへ。これでパーティーだね」
何がそんなに嬉しいのか笑顔を見せながらアイリは言うが、その顔を見ていると僕もなぜか嬉しくなって照れ臭い。
「じゃ、出してくるね」
そう言ってポニーテールをなびかせながら窓口に申請用紙を出しに行った。
パーティーを組んだことで行動の幅を広げることが出来ると思う……けど、一抹の不安がある。だからまずはその不安の確認からするべきだな、と僕は思う。
そのため戻ってきたアイリに僕は提案する。
「じゃあ晩御飯でも食べながら今後のことを話し合おうか」
「いいね〜。そうしよっか。どこがいい?」
「あ、僕が泊まっている宿の一階でご飯が食べられるから」
「分かった、いいよ。あ、でも部屋には行かないからね?」
「大丈夫、そんなつもりはないよ」
「うん、よろしい」
僕らは席を立ちひとまず移動する。
着いた宿屋は豪華でもなくボロくもなく、平均的な宿屋であったが繁盛していて、その理由の一端が目の前で元気に働く看板娘だろう。
いい声で返事をし、よく動き、接客がスムーズで気配りができる。見ているだけで元気が出てくるのはきっと気のせいじゃなくて、生きるエネルギーをもらっていると思う。
「あの子凄いねー。見ていて気持ちいい働きっぷりだね」
「そうだね。夕飯時はいつもあんな感じみたい。僕も初めて見たときから凄いと思ったよ」
「うんうん。まさに、正しく働いているって感じ」
正しく働く、ってどういう意味だろう?正しくない働き方があるってことか?……それはどんな働き方なんだろう?
聞いてみたくもあるけど、その前に確認したいことを確認して、明日からの行動を決めたい。
「ところで、パーティーを組んだしお互いの力を知っておくべきだと思うんだけど、どう?」
「ん……。そうだね。うーん、そうですよね〜。そうだなぁ……」
「え、何?そんなに言いたくないの?」
「いや、そんなことはないよ……」
と言いつつアイリはため息を吐く。
「きっと前衛職とか期待しているのかなぁ、って思って少しだけ気が重くなっただけ。
ま、もうパーティー組んでるし、逃げられることはないから、いっか」
「その開き直り方はどうかと思うけど」
「いやいやいや、事実です。それに、アルフの能力だって私にとってメリットになるか分からないでしょう?」
「いや、アイリが倒せなかった魔物を倒したよね?」
ひゅ、ひゅーひゅー、と空振った口笛をアイリは吹きはじめて、こんなに露骨に動揺する奴がいるのかと僕は笑う。
「ま、じゃあ私の能力をお教えしましょう。ーーこれです」
どこから出したのか一枚の紙を僕の前に出してきた。
「何これ?」
「航海の一端《ピース オブ ボヤージュ》って言うの」




