021
僕が狩場に利用しているのは芝生がびっしりと生えている小高い丘の上で、空には小型のワイバーンが時々飛んできて、北のほうにはポイズンラットなど毒を持つ魔物がいる沼地も見える。東にはうっすらと街の入り口である門が見え、南には森が見えるが木々が光を遮り中を直視することはできないようになっていて、西には延々と道が続いてる。
この狩場で僕は小型のワイバーンと沼地に生息するモンスターを弓矢で討伐していた。
沼地まではかなり遠く、通常ならモンスターはまず見えない距離なのだが、僕がこの弓を得た時にもらった力のおかげで十分に見えることができた。
僕が得た能力は五つだ。そのうちの一つはバクベアから逃げる時に使った、矢で射った対象をどこかに飛ばす能力だ。親指と小指で矢を放つことで発動することができる。
そして魔物を狩る時に使う能力は、親指と人差し指で矢を射ることで発動する。それは、目に見えている範囲であれば矢が到達するという能力だ。この能力の副産物として力が与えられ、僕の目には通常では到底見えない範囲の距離が見えるようになった。ただし到達できるというだけで、実際に当たるかどうかは僕の実力次第であり僕はこの世界に来る前と同じように研鑽する必要がある。
あとは中指と薬指と弓自体に能力があるがーー使う日は来るのだろうか。
得た能力を使うために制約が五つ付けられた。
一つ目は、魔法が一切使えなくなること。これによりエルフ種族の一番の特徴が無くなった。
二つ目は、弓と矢以外の武器は一切扱えないこと。この世界の武器には魔法や加護などの力がエンチャントできるようで、赤子でも英雄になれるような聖剣なども存在するらしい。そういった武器を使えない代わりに、いつでも弓と矢を取り出せる力を得た。
三つ目は、加護を受けられなくなること。武器だけではなく、個人にも加護と呼ばれる力を身につけることができるようだが、それが身に付かなくなった。
四つ目は、与えられた能力についての詳細は伏せられていること。能力を作った時にどんな能力なのかは僕の方で決めたが、その能力を得るための制約と、能力の細部については神が決めた。魔物を狩っていると詳細が分かるようになると神が言っていたため僕はそれを信じて魔物を狩り、詳細が判明する日を待つことにした。
五つ目は、矢を射るごとに寿命が一日減ること。出来るだけ節約していかないとすぐに死んでしまうので気をつけようと思う。
ーーこれで5体目、と。
ワイバーン3体とポイズンラット2体を矢で仕留めたところで僕は体の緊張を解き、伸びをして体をほぐす。
んー、っと気持ちよく背を伸ばしているところ、目の端に何か捉えた。西の方だ。
南側に広がっている森が南西方向にも広がっていて、西の延びている道の方に大きな魔物が移動している。魔物が移動する先には……人間(?)が道に向かって走っていた。逃げているように見える。
僕は逡巡し、助けることにした。
ーーこの手助けが、僕の冒険者生活を一変させることになった。




