017
この世界では一つの大陸に全ての国が収まっているらしく、合計で5つの国があるようだ。
一つ目は、人間の国。その名の通り、人間が主に暮らす国だ。
二つ目は、亜人種の国。獣人やヴァンプなど人間にない特徴がある生き物が暮らす国だ。
三つ目は、掃き溜めの国。どこにも行く当てがない者が集まった国だ。
四つ目は、宗教の国。何かの宗教を信仰していれば入国できる宗教信者が集まる国だ。
五つ目は、魔物の国。魔物と呼ばれる生き物が主に暮らす国だ。
大陸はざっくり言うと横に長い長方形の形をしていて、横を3等分にした際の面積1/3の領域が魔物の国になる。
魔物の国を起点とすると、その左側に宗教の国と掃き溜めの国が上下2分割で国境を作っている。上が宗教の国だ。
右側も同様に、亜人種の国と人間の国が上下に分割で国境を作っている。上は亜人種の国だ。
この世界は球であるため、宗教の国と亜人種の国は隣り合っているし、人間の国と掃き溜めの国も隣り合っている。
それぞれの国がいがみ合っていて常に戦争状態という話ではない。
それぞれの国の国境付近の住人は問題なく暮らしているし、日常で行き来することもあるようだ。
またこの大陸には川がいくつも流れており、航海して国を行き来することもあるようだ。
僕らがいた”果ての島”は、魔物の国の南側、海を渡ったところにあるらしい。
その”果ての島”から僕がバクベアに飛ばされたのは、掃き溜めの国だ。そしてその国の中央都市に僕は来ていた。
この国は人間、亜人、魔物、全ての生き物が集まっていて無法地帯なのだろうと思っていたが、実際は国として実権を握っている人物がいるようで、治安警察が存在しているようだ。
しかし、街中で亜人種が人間を殴っているところを見つけても治安警察らしき人物は動かず、この国では暴力は罪ではないのか、と考えていると、殴られている人間がやり返した。そこで治安警察が動いて人間を拘束し、どこかに連れて行った。
「……うーん、控えめに言って、この国は腐っているな」
僕は思わず呟く。推測だが、殴っていた亜人種があらかじめ賄賂を渡していたのだろう。もしくは人間には何をしてもいい、という法律があるか。
でも前者のような気がする。人間は普通にそこら辺を歩いているし。
街に入るやいなや嫌な光景を見せられたが、これから僕はこの街で何をすればいいか考える。
何かアルバイト的なことはできるのだろうか?一文無しな僕にはまず働くことが先決である。例えば、冒険者のような職業はあるのだろうか?
街を歩いていると剣や盾を持った人間が出入りする建物があった。すごいそれっぽいな、って僕は思って中に入ってみる。