001
ーーパッと切り取った一瞬のような日々が終わり、この日僕は建国した。
長命の種族であるエルフと呼ばれる僕の周りには、他にエルフと呼ばれる種族はいなかった。
ここには身寄りのない生き物しかいない。人間、ドワーフ、獣人、ヴァンプ、戦人、半妖、エルフ。これらバラバラの種族の共通点を挙げるとすれば、みんな活力がなく目がうつろになっていることだろう。
種族の坩堝と化したこの地は”捨てられた島”と呼ばれているらしい。一番歳を取っているように見える”長老”が言っていた。
つまり、いらなくなった生き物を”捨てる”島ということだ。
ここには森があり、そこには恐しい化物がうじゃうじゃいる。そんな環境で、捨てた側の生き物はまだ生きているなんて思っていない。そういう悲しい場所だ。長老はそう言って悲しそうな顔をしていた。
ーーー
「よし、決めた」
「アルフ、何を決めたの?」
僕の決心に対して返事を返してくれたのが人間のイリアだった。
「僕は長老の悲しい顔を見たくないし、ここの生き物に生きる活力を持って欲しい。希望を持って欲しい。」
「ーー突然、どうしたの?大丈夫かしら?頭かしら・・・」
「今のこの状態がいいとは思えないんだ。日々、なんとか食べるだけの食料を探し、森から出てくる化物に怯えて暮らす、これが幸せだろうか?」
僕らはいつ建てたのか分からないオンボロな家に身を寄せて住んでいるけど、これがいつ壊れるかも分からない。
常に不安がつきまとうこの環境で、いいとは思えなかった。
「そうかもしれないけどーーじゃあ、どうするの?」
「島を開拓しようと思う。」
「どうやって?森には魔物が出るし、到底倒せないわよ」
「一人じゃ無理だ。でも、他の生き物と力を合わせればできると思う。いや、できる」
確信がある。個人の力だけ見るとそれぞれの種族が何かに特化しているが、特化していない部分が貧弱すぎてすぐに殺されるのがオチだが、そこを他の種族が埋められるようになれば、勝算は十分にあった。
「だから僕は、皆にお願いしたいんだ。イリア、ウーフ、エルド、オリビア、カルド、僕らでこの島を救おう」
一緒に暮らしている獣人のウーフ、ヴァンプのエルド、半妖のオリビア、ドワーフのカルドに僕はお願いする。
皆は僕の言っていることを理解しているのかしていないのか分からないが、コクリと頷いて賛同してくれた。
「ちょっと。ーーもう、皆が理解できる年齢じゃないから言っているのね」
「そんなことはないよ。僕は本当にできると思っているし、やらないといけないと思っているよ。皆の為ではなく、自分の為にね」
「あー、そう。分かったわ。じゃあ手伝うしかないわね。それで、明日から何をするの?」
「まずは、能力を伸ばしていこうと思う。」
僕はそう言ってニヤリと笑った。