8
「こっちだ。ここで待っていろ。」
そう言って受付の男は俺を部屋に案内し、最後まで無愛想なまま出て行った。...今すぐ剣で袈裟切りにしてやりたい。
それにしても立派な部屋だ。宗教が絡むとお金が動くというのがよくわかる。
「すみません。お待たせしてしまって...」
治療室にイザーシャが入ってきた。...本当にイザーシャかどうか疑わしい。どう見ても20代前半にしか...
「単刀直入にお伺いします。...あなた、あの時のエーベルト君じゃないかしら?」
向こうはどうやら俺のことを覚えているようだ。...ということはまずいな。まだ子供だったとはいえ、あんな暴言を言ったとなれば...
「...いや、知らないな。」
とりあえず嘘をついてみる。
「いいえ!そんなはずはありません!第一にその剣、あの時私の見た剣と同じ剣じゃないですか?...鞘の大きく欠けている部分や髪の色、手の傷の位置までも一緒なんて本人以外あり得ませんよ?」
...ふむ、確かに一理ある。俺の白い髪は少々珍しいものだし、剣も昔のまま変えていない。...手の傷の位置まで覚えているのは想定外だったが。
「何より...その剣の柄の布...」
「...はあ。もういい。...そうだ。俺がエーベルトだ。これでいいか?」
観念して嘘をあきらめる。
「やはりですか。...エーベルトさん、いや、エーベルト様!あなたに再び会えることを私は夢みておりました!」
「...は?」
うっかり腑抜けた声が漏れてしまった。俺に対して怒っていると踏んでいたんだが...どういう風の吹き回しだ?
「私があの感覚に目覚めてからもうはや20数年...あの時、あなたに罵倒された快感といえば...そのころまでの私は周りから褒められるばかりで、あれほどの強い衝撃を受けたことはありませんでした!」
え。それじゃああの時の表情は...もう一度会話を詳しく思い出してみる。
???「...なんか風の吹き回しが怪しいね。」