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俺ちゃんはベッドからすぐさま起き上がり、自分の持ち物を確認する。
「なんだ、えらく年季が入ってんな。まあいい。」
そのまま先ほど上った階段を駆け下りた。
「おう、女将さん、ちょっと用事を思い出した!暫くしたら帰る!」
「あいよ!...どうしたんだい!いつになく元気だね!」
「ああ!まるで別人みたいだろ!」
ああ、夜は良い。俺ちゃんみたいな奴も動きやすくなる。...久しぶりに肉体を得たし、ちょっくら現世を散歩でもするか。
「《悪魔の身体強化》!」
周りの家を伝い、立体的な動きで近場にあった高台に上る。クライミングウォールの要領だ。
...この体じゃ俺ちゃんの魔法なしでこんなことはまず出来ないだろうな。
さて、まずは...お、スリ発見。いいもん持ってんな。
・・・
「兄貴!今回もたっぷりはいってますぜ!」
「でも警邏に見つかると面倒っすよ?...今日はそろそろ切り上げたほうが...」
「とられるほうが悪いんだから問題ねえだろ?...にしてもあの旅行客ども、ホント馬鹿だなw」
いかにもスリを本業にしてそうなテンプレ5人組が裏道で馬鹿笑いしている。
「はーい、そこまで!」
「!?何だ!?どこだ!?」
「ここだよーっと!」
どこから声をかけられたかわからず、一瞬戸惑う5人組。優しい俺ちゃんは声をかけてあげたのに...。
「てめえ、いったいどこから!?」
「はいはい、そんなにカッカしない。おじさん、その財布に用があるだけだから。渡してくれるなら痛い目見なくてすむよ?」
「な...!この野郎!」
5人のうち1人がナイフで刺してくる。短気は損気って知らないのかな?
???「悪魔の魔法を使っているみたいだね。それでは。」