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「ああ?」



草むらの中で動かしていた剣から金属音がする。剣を鞘に納め、鞘で草むらをもう一度探る。今度はこつん、という音と共に、夕日の光で反射光が見えた。

...金属製品?

慌てて俺はそれをひろいあげ、泥を落とした。夕日で元の色はわからないが、何かしらの鍵のような形をしているのがわかった。

それに、さびている様子が一切ない。金属製品は総じて高価だ。そのうえ鍵ならば劣化しない金や精錬時に魔力を練りこんだ魔法金属、《付与魔法(エンチャント)》を付与した

物など、差異はあれど総じて高価だ。薬草なんか比べ物にならないほどに。...これは久しぶりにいい飯が食えそうだ。

ちなみにダンジョン内では基本的に所有権が発生しない。〈魔法袋(マジックスペース)〉という魔法で拡張された袋の中に入れた場合のみ、所有権が移るようになっている。



「おう、今日は遅かったじゃねえか!」



依頼達成の報告をしに行くと若干疲れた顔をしたゼンが何かほざいている...ので無視しよう。



「...ほら、達成の書類だ!あと報酬!」



無視されたのが気に障ったのか、少し怒りながら報酬を渡してくる。いつも以上に気がったっているな...



「それとすまないが、捜索届の依頼をみたいんだが...」


「珍しいなオイ。どうしたんだ?何か拾ったのか?」


「ああ。実はこんなものをな...」


そう言ってゼンに先ほど拾った鍵を見せる。


「これは珍しく高そうな鍵じゃねえか...生憎、鍵の捜索依頼は無いけどな...一応、アレで鑑定してから売ったほうがいい。金になったら今度いい酒でもおごってくれ。」


「そうか。ありがたいが、酒は一人で飲ませてもらうとしよう。」


そう言うと、俺はギルドの隅にある立方体の前に向かう。...そういえばこいつの前に立つのも数年ぶりだな。冒険者を始めたのが15で...最後に使ったのが23の時だから

すでに今から十年前に使ったきりだな。三十超えたおっさんがいい年こいてこんなものに頼るのも珍しいだろう。

立方体の縁にあるコインを入れる穴に銅貨...これでエール酒1杯分くらいの金額になる...を投入する。

ほんのりと立方体が光る。起動したようだ。

これは〈魔導具〉と呼ばれダンジョンから発掘される、いわゆる太古の失われた遺産だ。

一部の素質を持つ人が何十年もかかってやっと獲得できるスキルという能力がある。魔力と同じく、ある程度生まれ持った素質がないと使えないが、主にその人の趣味や好きなこと、

生まれ育った環境などである程度の適性がわかるようになっている。しかし努力をしたところで素質がないものは取得が困難だ。

そこでこの魔導具が有効になってくる。すべての人に多かれ少なかれ秘められている魔力を少し消費するだけでいくつかの種類のスキルが一時的に得られるのだ。

一般的に世に広まっているのは隣国など遠距離とのやり取りに使われる《念話》やけが人のための《自動回復》、俺が今から使おうとしている《鑑定》などだ。これらは比較的ダンジョン

からの発見数が多いのでこうした施設などにはたいていの場どれか一つは置いてある状態にある。


《鑑定》の立方体に先ほどの鍵をのせ、青く光っている角張った表面に触る。魔力は...このぐらいでいいかな。


頭の中に《鑑定》の結果が流れ込んでくる。

...何かおかしい。まったく情報が足りていない。前したときはアイテムの所有者、製作者までわかったのに...

何年も昔に《鑑定》を使った時の記憶になぞらえて、立方体に流す魔力を増やしてみる。


キン!


「...あ?」



急に頭が痛む。二日酔いなど比べ物にならないほどの痛みに俺は思わず膝を折り、前のめりに倒れこむ。



「...おい!?エーベルト!?どうした!?」



ゼンだ。俺が倒れているのに気づき、向こうのほうから走ってくる。



「...エーベルト...?誰だ、それ?...」



「はあ!?お前何言ってんだよ!?マジで大丈夫か!?」



意識がどこか遠くに行ってしまうような感覚と共に、頭の中に声が響いた。



「ああ、いい人生だったな...」



そこで俺の記憶は途切れた。


???「さて、気を失ってしまった彼は、この後どうなるのでしょう?お楽しみに!」

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