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...おい!人間!よく聞け!!このままじゃお前もこの体ごと消されちまうぞ!力を貸せ!
ベリトと呼ばれた、今まで俺の中にいた自称魔侯爵が話しかけてくる。
でも力を貸すって...何をすればいいんだ?
簡単だ!俺ちゃんは今からお前に体を返す。...ついでに主導権はくれてやる。だから俺が言う呪文を復唱してくれ。...ああ、クソ、時間がない。行くぞ、ほれ!
一気にそれまで感じていた暗闇から、急に現実に引き戻された。
それで、その呪文は?
簡単だ。《灼熱の業火》だ。わかったな?
そんなのでいいのか?案外簡単だな。
いいからさっさと!
...はいはい。
「《灼熱の業火》!」
ゴバアアアアア!
辺り1面が炎に包まれる。その炎はイザーシャへと向かい...呑み込んだ。
「何!?」
おいおい、なんだこのばかげた威力は!?
チッ!やっぱ中級程度ではこの威力か!
...え?
は?
「ふむ...封印、とはいきませんがかなり弱体化しているようですね。これなら...」
イザーシャが火の中から何事もなかったように出てくる。おいおい、嘘だろ...
ふん。当然だ。あいつは回復の魔力の持ち主。あの程度の火力ではどうしようもない。
???「魔法の威力について少し認識に違いがあったみたいですね。」