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ビミョーに遅れてすみません!
長いようで短かった夏休みも終わり、今日か学園生活の再スタートです。
夏休み、色々ありましたね。
可愛い弟妹と街に買い物に出かけたり、一緒にピクニックをしたり、取っておきの場所に連れて行ってもらったりしましたねぇ。
可愛い弟も増えましたし、ますます賑やかになって楽しい日々でした…
え?王太子様が押しかけてきたことを忘れてるですか?
え?そんな事ありましたっけ?
If my memory is correct,prince is not came to my house.
訳)もし私の記憶が正しければ、王太子様は私の家に来ていません。
「リリー、なにボーッとしてんの?早くこれ運んじゃわないと、残業よ?」
「んーわかってるー。」
「しっかりしてよ、リリー。わざわざ私まで借り出すほど、時間ないんでしょ?」
おっとボーッとしてたせいで、ソフィーとカイリに叱られちゃいました。
いけない、いけない。
「ったく、なんで夏休み明け早々に武闘会なんてやるのよ!」
ソフィーがキレ気味につぶやきました。
そりゃキレますよ。
ここ暫くずっと、仕事仕事に追われてますから。
「ほんと、それ!ふざけんなだよ!」
仕事増やすなら、人員増やせ!なんですよね。
我が家の使用人さんたちとは違い、ブラック中のブラック企業な生徒会です。
でも、私たち以上に先輩方は働いていらっしゃるんですよね…
休んでもられないです!
「そふ…リリー、これここでいい?」
「うん。いいと思うよ。で、それは南側の倉庫に持ってくから、はけといて。」
「はあい。」
流石、カイリです。
ソフィーがキレてるのを察して私に聞きましたね。
正解です、それ。
うっかり話しかけてみたら最後、理不尽にキレられます。
「リリー達っていつもこんな肉体労働してんの?」
「うん。」
そりゃあ、そうですよ。
何かの準備って力いるんですよ?
「これ、下手な運動部より動いてるけど…」
カイリが複雑そうに呟いてますね。
そうなんですか?
知らなかったです。
「…てか、早くやらないとマジで日が暮れそう。」
その通りです、カイリさん。
日が暮れます、このままじゃ。
日が暮れようが何しようが、仕事終わるまで帰れませんよ?
懐かしいですね、この感じ。
れっつ、社蓄道です!
それから、さっきから無言が怖いです、ソフィーさん。
あまり喋ってるとマジギレされそうなので、ちゃんと仕事しましょう。
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それから小1時間たちました。
さて、仕事はどうなったかといいますと…
「ふーおわったぁーー!」
「やっと寝れるーーーーーーーー!」
「日が暮れる前に寄宿舎に帰れるー!」
「「寮長やってる会長に怒られないー!」」
はい、やっとこさ仕事が終わりました!
解放されたよ!!
ちなみに、セリフは上から順に、カイリ、ソフィー、私、ソフィーと私です。
生徒会長さん仕事量半端ないくせに、門限にはもう帰って来てるんですよ。
私たちの2倍仕事はあるはずなのに、私らが慌てて駆け込んでくる頃には、既に鬼の形相で待っていらっしゃいます。
恐ろしく、仕事の出来るお方です。
私が82回目くらいで日本に転生した時にいらっしゃった、4つ上の先輩を思い出します。
その先輩もキャリってたんですよ、生徒会長の様に…
え?キャリるってなにかですか?
キャリるは、キャリアウーマンばりに仕事をしているという事を指してます。
キャリアウーマンばりに仕事をしてるから、キャリアウーマンしてるになり、最終的にキャリってるってなったんです。
私の他の先輩達とか同僚内で通じてました、キャリってる。
「さ、リリー、今日は会長より早く帰るわよ!」
「もちろん!」
「カイリもついて来なさい!」
「誰に言ってんの?私運動部だよ?」
「カイリだって仕事量見たでしょ?」
「…オツカレサマデス。」
カイリが半目になった所で、ソフィーが走り出しちゃいました。
「やーっと帰れる!ヤッターーーーー!」
「ソフィー、待ってーーーー!」
ソフィーの後を慌てて2人で追いかけます。
夜空をバックに、雄叫びを上げて走るソフィーは、さながら某人気ゲームの小太りな不死身のおじさんでした。
ちなみに、その姿は生徒会室からバッチリ拝見されており、後で会長にこっ酷く叱られました。
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そんな苦労に苦労を重ねて、生徒会の血と汗と涙の結晶ともいうべき物が開催されました。
そう、前述の通り武闘会です。
武闘会とは、夏休み明けすぐ…日本で言う9月の運動会の時期…に開催される、運動会の様な物です。
とは言っても、内容は武闘会とは程遠く、生徒が木刀で闘う、トーナメント戦です。
自由参加で、エントリーすればこの学園生徒であれば、誰でも出場できます。
とは言え、出場するのは専ら騎士爵の御子息で、研究者の息子さんや伯爵、公爵家の子息、王族の御子息もあまり出場されません。
…出場すれば、自分より身分の低い人に負けちゃいますからね。
ちなみに、女の子も出場しようと思えばできます。過去にも何人か居たそうですが、それも片手で数えられるほどです。
まあ、腕力でどうしても女子は負けちゃいますもんね。
え?このイベントは乙女ゲームに関係あるのかですか?
あります、あります。勿論あります。
騎士爵の御子息…ベリリアスくんのイベントはもちろん、他のキャラの攻略にも重要な起点です。
誰を応援するかによって、勝敗も変わりますし、何より応援したキャラは好感度が爆上がりします。応援してないキャラは下がりますけど。まあ、誰を攻略したいか決められていたら、重要なイベントでもあります。
…ルート分岐して、エンディングに入る前の最後のイベントですし。
「リリーなにしてんの?早く行くよ?」
仕事の波から解放されて、性格が優しくなったソフィーが言います。
って、ボーッとしてる場合じゃないです。
行きましょう。
「ごめん、ごめん!」
「ううん、大丈夫。疲れてるんでしょ?」
「そりゃそーだよ!疲労感半端ないもん!てか、時間大丈夫?」
「大丈夫よ、カイリが出るのはあと1時間後くらいかな。」
「じゃ、のーんびり行こうか。」
そうです、何故かカイリが出場するんです。
女の子が出るの、実に10年ぶりらしく期待がかかってるらしいですよ。
それから、席は生徒会の権限で1番前が取れてますから、そこまで血眼になって席取りしなくていいんですよ。
「あ、屋台出てるんだ。」
「本当ね!なにか買っていく?」
「うん。そーしよ…や、やっぱりカイリの試合の後にしようか。」
「そうね、そうしましょ!」
折角ならカイリも交えて一緒に買いたいですしね。
と、のんびり屋台を見ながら席に着く頃には、カイリの出場の5分前でした。
「意外とギリギリだったね。」
「うん。意外と競技場入れなくて焦ったわー。」
なぜか、武闘会のスタッフになかなか生徒会の面子だと信じてもらえなくて、困り果ててたんですよ。
そしたら…
「助けていただき本当にありがとうございます、リア先輩、タオイラ先輩。」
「全然大丈夫よ。後輩が困ってたら助けるのが当然でしょう?」
「カイリちゃんの応援だってみんないた方が楽しいしね。」
この御二方が私たちが生徒会だと証言してくださったおかげで、入れたんです。
本当、感謝感激雨あられですよ。
ちなみに、レリィ先輩達は2人で仲良く座っていらっしゃるので、なかなか邪魔はできません…
「あ、サティー達いんじゃん!おーい!」
「レリィ!やっと会えた!!」
…御二方が、呼んじゃいましたね。
レリィ先輩方、驚かれたみたいですが、嫌な顔一つせず…こちらに来ました。
いいんですか?それで…
ちなみに、見て分かる通り、生徒会からは誰もエントリーしていません。
だって忙しいですし。
…高等部の生徒会ってもっと忙しいはずですよね?
なんで攻略対象達は出場できたんでしょうか…
【まもなく、両選手の入場です。】
おっと、準備ができたみたいですね。
早速見ていきましょう!
「あ、カイリ出てきたわ!」
「カイリちゃん!!」
右側の入り口からカイリが出てきました。
ちょっと緊張してるのか、肩に力が入ってます。
相対する左側は…
「ああ!ローか!!」
「ローランドは流石に勝ち目ないって…」
テラクレス先輩方が声を上げます。
そう、出てきたのは一つ上の、ローランド・カレクトリー先輩です。筋肉隆々でパッと見た感じでも、強者である事をひしひしかんじます。ちなみに攻略対象ではないです。
この武闘会、完全にクジで対戦相手を決めるのでこんな風になる事もあるんですよ…
【それでは、両者向かい合って…開始!】
まずは睨み合いですね。
どちらも動きを見せません…と思ったら、カイリが素早く剣を鳩尾に当ててきました!
素早いけれど、やはり軽くあまり効いてません。
「ローランドって動きは遅いけど、固いんだよなぁ…」
そう見たいですね、テラクレス先輩。
でも、カイリはそれに一撃で気付いた様です。だからなんでしょうか、何度も何度も続けて攻撃を続けます。
おそらく力業になれば負けてしまうのを、カイリ自身分かってるんでしょう。
でも、カレクトリー先輩もその動きにきちんとついていきます。
さすがですね。第一騎士団の次期団長と謳われるその実力に、偽りなしです!
…初めの方こそ攻撃を何発か当てていたカイリも、さすがに疲れてきてしまったのか、鈍くなってきました。そして、ついに…
【おおっと、ここでレトナス選手の木刀が弾かれてしまった!ここで終了です!】
木刀が弾かれるか、盤外に放り出されるまたは、参ったと降参すれば負けになります。
つまり、カイリは負けちゃいました。
仕方ないですよ、あの人には勝てませんって。
まだ1年生、来年もあります。
「惜しかったなー。」
「まー、よく持った方だろ。」
周りの観客達も口々に言ってます。
そうですね、よく健闘しましたよ。
カレクトリー先輩もカイリに何か声をかけてみたいです。
カイリが嬉しそうにしている所を見ると、称えてくれたんでしょうか。
良かったですね、カイリ。
…その後、慰めようとした私たちの意に反し、カイリはめちゃくちゃキラキラしてました。
「私、1年にしては強い方だ、このまま頑張れば第一騎士団初の女騎士も夢じゃないって言われちゃった!」
「ソレハヨカッタネー。」
「私、騎士になる!」
「ソッカー…ソレデコレナンカイメ?」
「通算、35回目。」
流石に飽きますよ、カイリ。
ちなみに、勝負の行方はというと、3年のフィラスト先輩という方が勝利しました。
剣道部の主将さんらしいです。
カレクトリー先輩も準決勝で負けてしまいました。
って、準決勝まで残るって、すごいですね…
え?王太子様はどうなさったかですか?
自分も出場したいとおっしゃったので、全力で止めさせて頂きました。
出ても負けてしまうでしょうし、王族の剣なんて、無闇矢鱈に他人に見せるものじゃありませんし。
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と、久々にテレポートしまして、ただいま自室です。
この世界の騎士団についてちょっとお話しします。
この世界には、王族などをお守りする為に騎士がいます。その騎士が所属するのが騎士団です。
騎士団など、全ての軍部を纏めているのが、国の将軍様です。
その下に、騎士団長と近衛兵長と軍師長がいらっしゃります。
見て分かる通り、軍部は大雑把に分けると3つに分かれています。
軍師長が纏めているのが、軍師さんなどが作戦などを立てる立策部と呼ばれる機関です。
近衛兵長さんは、もちろん王族や貴族の周囲を警護する近衛を纏めています。
騎士団長はもちろん、騎士団のトップです。
そして、騎士団も大きく分けて2つです。
黒騎士団と聖騎士団です。
黒騎士団は、騎士団の暗部…所謂暗殺やスパイをこなし、誰が入っているのか分かりません。
聖騎士団は反対に、表の部分…戦いに行ったり、街を警護したりなどなど…をしています。
聖騎士団は人数が多いので、第一、第二、第三まで分かれます。
第一騎士団は完全なエリート、貴族や騎士伯を持つ家出身の強い人のみが所属できます。
第二騎士団は、街をよく警護しています。貴族や騎士伯だけでなく、平民でも強ければ所属できます。
第三騎士団は、平民のみで作られた部隊です。軽い出来事なら彼らが派遣されます。
まあ、なのでカイリはあんなに浮かれていたわけです。
それくらいすごいよ〜と認められた事になりますからね。