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少し遅れてすみません!
「こっちやよー!」
「こちらです!お姉様!!」
現在、幼子2人に手を引かれ、秘密基地がわりの花畑へ連れて行かれております。
キラッキラの笑顔を振りまいているアンと、珍しく年相応に楽しそうにしているタグは2人とも可愛いです。
可愛すぎてニヤニヤが止まりません。
…これだけ聞けば、私がまるで危ない人みたいですが、側から見れば私も幼子です。
お姉ちゃんです。
「ついたよー!」
アンの可愛い声につられて前を見ると、広がっていたのは、素晴らしい花畑です。
一面に白と黄色と桃色が広がり、その間に葉や茎の黄緑色が見え、見事なコントラストです。
それこそ、アル◯スの少女◯イジに出てくる花畑みたいです。
こんなの今までの人生でもかなりレアなレベルです!
「みてみてーきれいでしょー?」
「うん。綺麗ね!それに空気もおいしい!」
「空気が…おいしい…ですか?」
あ、やっちゃいました。
空気がおいしいでは伝わりませんよね。
「えーっとね…ほら、いつも住んでいる家の辺よりも、空気が澄んでいて綺麗でしょう?だから、おいしいっていうの。」
たぶんですけど。
ニュアンスですが。
「うーん…」
やっぱり伝わり切らないですよね。
仕方ないです…
「でもねーアンねーわかるよー」
「え?」
「ほら、あっちとかこっちとか、キラキラしてゆのー!」
キラキラ…ですか?
なんかちょっぴりニュアンス違いますけど…
「だからねーアンねーここすき!」
最後に可愛くしめてくれました。
まあいいでしょう!
アンだって頑張って考えてくれたんですし!
「…そんな…アンは分かるのに…僕だけ…」
あ、タグが拗ねちゃいました。
そりゃそうですよね…
姉と妹は理解できるのに、自分は分からないなんて、嫌ですもんね。
…でも、伝えようがないですし…
あ!
「みて!四葉のクローバー!」
正しくクローバーかは分かりませんが、前世でのクローバーにそっくりなものがありました。
前世ではラッキーの象徴だと言われていたので、プレゼントしちゃいましょう!
「…四つ葉のクローバー…ですか?」
「そう!これって、ものすごーく貴重でね、持ってたら運が良くなるんだって!」
「運が良くなるんですか?」
「そう!だから、はい!」
「え、下さるんですか?!」
「うん!こんなに良いところに連れてきてくれたお礼よ。」
「そんな…僕は何も…」
「いいから、はい!」
押し渡しました。
タグは四葉のクローバーをみてニコニコしてますね。
やっぱり嬉しいんでしょうか…
「…」
っと、アンが自分も欲しそうにみてますね。
でも、アンには別のものがあるんですよ。
「アンには…これ!」
「これ、なあに?」
「花冠!お姫様みたいでしょう?」
「うん!アンおひめさまー!」
「…花で作った冠だから花冠ですか…なるほど。」
アンは嬉しそうにくるっと回ってくれました。
可愛いです!
タグはなにかを納得したみたいです。
一体なにを納得したんでしょう…?
「お姉様、それ手作りですか?」
「うん。誰でも作れるよ。」
「差し支えなければ、僕も作りたいです…」
「アンもー!」
「よし!じゃあ、みんなで作ろうか!」
「うん!」
「はい!」
それから3人でずーっと花冠を作ってました。
日が暮れかけて帰ってきたので、お母様にこってり絞られましたけど、楽しかったです!
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と、2日前は天国のような日だったのに、今日は相反して地獄のようです。
「久々だね、遊ぼうか?」
「お久しぶりですね…」
目の前にいるのは王太子様です。
ニッコニコ笑顔で、遊ぼうとの事です。
久しぶりって、この前学園で会ったじゃないですか。
なにをふざけたことを抜かしてるんでしょうか、この人は。
っと、危ないですね。
不細工な性格になるところでした。
「どちらに参られるんですか?」
「もちろん、城下町だ!」
「…かしこまりました。」
ため息をつかなかった私偉いです!
この王太子様、本当に城下町大好きですね。
…たしかにマルシェとかあって面白いですけど、お金払わないで食い逃げするので、あんまり行きたくないです…
しかも、本人はお忍びで誰にもバレてないと思っているようですが、がっつり護衛さんいます。
こっそり出て行って問題になるとは思わないのでしょうか、この王太子様。
ついつい、護衛さんを労ってしまいます。
…時々差し入れ渡してるのに、王太子様は気付きません。
大丈夫なんでしょうか…
「ふぃふぃー!ふぉふぇおひひい!」
訳)リリー!これおいしい!
…少し目を離したら、また無銭飲食してますね。
仕方ないです…
「どこで買われ…貰われたんですか?」
「あふぉふぉと、あふぉふぉ。あふぉ、ふぉふぉ」
訳)あそことあそこ。あとそこ。
「少し待っててくださいね!」
だいぶ離れてますね。
これじゃ、また帰られちゃいますかね…
と、思ったら護衛の方が払っててくれました。
すみません…
ここはガツンと叱らなくてはですね!
「王太子様!いいですか?!何度も言っていますが、物を買うにはお金がいるんです!払わないで貰ったら犯罪なんですよ!」
「僕は王太子だから、大丈夫だ!」
「なんですか、その理屈…というか、貴方は今お忍び中ですよね?それではお忍びになりませんよ?」
「…あ。」
今、気づいたとばかりな顔ですね…
まあ、まだ10歳です。
仕方ないと言えばそうなのかもしれないですね。
根気よく教えていきましょう。
「お金は渡してありますよね?ちゃんと払ってください。それから、折角お忍びされるなら、食べたり遊んだりする以外にも、街の人のお話を伺うとかされて下さい。」
「別に遊んでたっていいじゃん。何もしないでも僕は頭がいいんだから。」
いや、それランキング圏外だった方がいいますか…
全く…いつになれば王太子らしくなるんですかね…
まあ、まだ伸び盛りですし、未来に期待しますか…
この人に嫁ぐ気はさらさらないですが、住む国がアホな人に治められていると考えると、恐ろしいですし。
「ていうか、お前家庭教師みたいなこというんだな。そんな事言うならお前のこと嫌いになるぞ!」
…流石にキレていいですか?
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ストレスにしかならない1日が終わり、夜が明けると…屋敷が戦場になっていました。
いよいよ…なんですかね。
「リリー様おはようございます。申し訳ありませんが、私も本日は奥様の方の応援に行かなくてはならないのですが…」
「大丈夫よ。お疲れ様。タグとアンを連れて図書館の方へ行っているわね。」
「かしこまりました。」
軽く朝食も取りましたし、私は弟妹の面倒を見てますか…
「おはようございます、お姉様。」
「おはよう、タグ。」
「おはよーございます!おねーさま!」
「おはよー、アンー!」
「お姉様、本日は屋敷が騒がしいですね…」
「ええ…どうやら今日みたいだから。」
「なにがですか?」
「アンとタグの弟が妹が産まれるのよ。」
「なんと!」
「アン、おねーちゃん?」
「そうよ。」
タグもアンもちょっぴり嬉しそうですね。
アンにも前々からお姉ちゃんになるんだよーと伝えていましたから。
「でも、もっと時間がかかるから、今日はお姉様と遊んでいようね。」
「うん!」
「はい。」
よし!
下知いただきました!
今日はお父様も使用人さん達も手が離せないでしょうから、私がおちびちゃん2人の面倒を見てましょう!
「まずは図書館行きましょ!」
「はあい!」
「はい!」
なんで、図書室かですか…?
1番遠いんですよ、お母様の部屋から…
もう分かりますね?
そういう事です。
…結局産まれたのはその日の夜でした。
タグとアンを(寂しがったので)私の部屋で寝かしつけて、水を飲もうとしたら産声が聞こえました。
男の子で、名前はカトラスだそうです。
翌朝知ったタグもアンも嬉しそうにニコニコしてました。
私に推しが1人増えちゃいました。