静かに宿る
剣で打ち合った瞬間、怪物が怯んだように見えた。私はその好機を逃さなかった。
怪物の大剣を打ち払い、私は怪物の懐深く潜り込み、下から上への突き上げるような一閃を繰り出した。
わずかな魔力が宿っているだけのはずの鉄の剣は怪物をいともたやすく両断し、怪物は真っ二つとなり、
闇を散らしながら、倒れ伏した。
私は勝ったのだ。生き残ったのだ!
正直なところ死を覚悟したが、あきらめなかったことがやはり良かったのでは?
私は気が一気に抜けたせいか、そんなどうでもいいことを考えながら、床に寝転がった。
疑問が一つわいてくる。あの時、怪物はなぜ苦しみ始めたのだろうか?
ただの偶然と考えるにはあまりに不自然だった。
しかし、私には原因が思い浮かばず、全く分からなかった。
私は思考を切り替えることにした。怪物を倒したことを生きて報告する義務が私にはある。
ひとまず傷を治さなければ、そう考えながら、私は怪物から奪った剣がふと気になった。
何故怪物はこの剣を持っていたのだろうか?
そうして剣をよく見ると、剣の柄、その先端に仕掛けがあることに気が付いた。
かなり目を近づけなければわからないほどの細かい仕掛けがそこには施されていた。
仕掛けを解くと、柄の中に丸まった紙が一枚、詰まっていた。
何か書かれているようだが、これは私が読むべきものではないな。私はそう考え、仕掛けを元に戻した。
紙からは、花のかおりがした。
お読みいただきありがとうございました。