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キョウソウ  作者: HM
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互いに

互いに対峙し、剣を交えて初めてわかることもある。ただ観察していた時にはわからないことも。

怪物は途方無く、私が思っていた以上に恐ろしい存在だった。

剣を交える?そんな次元ではない。いなす、いなす、いなす、いなす、いなす、

剣のはじけるような音だけが響き続ける。

その繰り返し。私をしのぐ凄まじい剣の技術、自身の体躯の大きさを生かした重みのある大剣さばき。

武具、いや体というべきか、私と同等の魔力によるその強化。まともに打ち合えば、私の剣が例え魔力で強化していたとしてもたちまちに砕け、そのまま私の体も同じ末路をたどるのは想像に難くない。

そして何より怪物の全身、その鎧から漏れ出し絶えずまとわりついている闇の霧が、怪物自身の動きを見えづらくしているのだ。それはほんのわずかな見えづらさではあるが、ことこの戦いにおいては恐るべき脅威である。なにしろ剣の腕は怪物がわずかに勝っている。ほんのわずかな判断のミスが私にとっては命を分けることになるのだから。

私は、人界において並ぶべきものがいない剣の腕、偉大な過去の勇者にも迫る魔力の持ち主と称された者であるが、今は己の未熟さを恥じるばかりである。

いなす、という行為をただひたすらに繰り返す中、怪物によって振るわれる大剣の衝撃の余波が私の全身を吹き飛ばさんとするが、私は魔力と筋力、双方の全力も持って耐え忍ぶ。

勝機はある。戦いの中、怪物の、私に死をもたらさんとする連撃の数々をいなしながら、私は見たのだ。剣劇の余波で霧散した闇の隙間に見えた怪物の左腕、私の一撃を防いだ場所にひびが入っているのを。

怪物は無敵ではないのだ。

そんな希望を見つけた私は、自分でも気が付かぬほどほんのわずかに気が緩んでしまったのだろう。

気が付けば私は大きく吹き飛ばされていた。凄まじい勢いで地面を何度も跳ね、転がり、体勢を立て直すことすらできなかった。幸いかなり遠くに吹き飛ばされたのか、怪物からの追撃はすぐには来なかった。起き上がったときには鎧は砕け、口からは血を吐き、骨は折れ、かろうじて生きているというありさまだった。剣は見ると柄だけが残り、刀身は見る影もなかった。生存のために体に全魔力を集中させる。折れた骨、つぶれた内臓、傷ついた肉体の補強をし、再確認をする。

剣がなくとも、劣っていたとしても、まだ私は戦える。

怪物がゆっくりと再び私の前に姿を現した。

どのように倒す?

剣がない今、私の意志は折れてはいないが、戦うための手段が私にはない。

そして先ほどまでのようにいなし続けるのは不可能だ。

そう思った矢先、怪物が突然動きを止めた。

そしてあろうことか、怪物がもがき苦しみ始めたのだ!

驚きつつも私はこのチャンスを無駄にするわけにはいかなかった。

怪物が苦しんでいるからなのか、闇の霧が薄まり、私は、怪物がちぎれかけたベルトとつながった鞘を身に着けているのを見つけた。私は全力で全魔力を体に巡らせ、怪物が苦しみあばれる中、腕や足、大剣に吹き飛ばされぬよう、それらをかいくぐり、奪うことに成功した。

その鞘には一振りの剣が納められていた。

怪物が使っていた大剣よりもはるかに小さく、私が使っていた剣よりもわずかに小さい。

何の変哲もない鉄でできた剣。しかし、それはわずかではあるが淡い水色の魔力を纏っていた。

私はその剣を握り、再び怪物と対峙した。

怪物はいまだ苦しみが続いているようだが、先ほどよりは和らいでいるように思える。

2度目の失敗は許されない。

私と怪物は剣を交える。私は傷ついた体に全力で魔力を巡らせる。鎧にまわしていた分まで。

一方怪物は苦しんでいたせいか魔力の巡りが悪く、あれほどまでに恐ろしかった剣さばきに鈍りが見える。おかげで私は怪物と剣を打ち合うことに成功したのだ。


剣を打ち合った瞬間、何かが見えた気がした。


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