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押入れ、ダンジョン、愛、無限(仮)  作者: 凸レンズ
ダンジョンと出会い
8/20

8. 強い魔物 その2

 強い魔物はいなくなり、ピッキーの残骸は既に地面に染み込んでもうなくなってしまっていた。俺は22歳にもなって、ワンワン泣き喚いてしまった。ピッキーの死と、自分の不甲斐なさと、色々が混ざり合った涙が地面を濡らす。しかしその涙も、ピッキーの残骸と同じように地面に染み込んでは消えた。


「ピッキー……ううっ……すまん……」

「謝ることないわ。かすり傷よ。」

「でも、ぐちゃぐちゃに。」

「当たり前よ。スライムなんておよそ水風船よ。最期は毎回あんなものね。」

「……え?」

「マスターは知らなかったのね。実は魔物は魔素があれば大体復活できるの。」

「ま?」

「ほら、これから感動の復活シーンよ。よく見ておいてね。」


地面に染み込んだピッキーの水分が青白く光り輝きながら空中に集まり、紫色の粒子がそこに流れ込んで行く。丸く成形されていくその光の塊が一段と強い光を発したとき、その中から青くて丸いものが、ポヨン、と姿を現した。


「じゃーん!」

「生きとったんかワレェ!」

「魔物は魔素があれば死なないのよ。寿命以外ではね。心配してくれてありがとう、マスター。」

「ピッキー!!!」


ピッキーを抱きしめて、俺はひとしきり泣いた。


***


 遡ること数日……


「ドルトン様、一体どちらにいらしていたのですか?」

「ちょっと異世界までな。死の世界、行ってきたぞ。」

「え!?大丈夫だったんですか?唯一帰ってきた魔物によると魔素がないとか言われてましたけど……」

「いや、魔素はなくても食事すれば死なないし、そもそも魔素をちゃんと貯めていけば問題ないぞ。」

「そうなのですか。」

「やはり百聞は一見にしかず、というヤツだな。ガハハ!」


ドルトンとモニタールームの職員が談笑をしていると、別の職員が慌ただしく報告してきた。


「ドルトン様!辻斬りが発生しました!」


辻斬りとは、簡単にいうと通り魔である。


「場所は?」

「まちまちです。ここから半径10kmの地点で偏りはなく起きています。それと、皆一撃で倒されております。」

「魔物が魔物に攻撃するのはよくある話が、あまりに強いと困るな。被害を被るのは御免だ。」


「アルト、ちょっといいか?」

「なんでしょうか。」

「博之氏とピッキーちゃんに、この辺強い魔物いないって言っちゃったんだけど、まずいかね。」

「そう簡単に遭遇しませんから大丈夫ですって。でも、今度会った時に一応話しておくのがいいんじゃないですか?」

「そうだな。」


そして数日後……


「じゃあ35の見回りしてくるから、後はよろしく頼む。」

「「「了解しました。」」」




「博之氏〜」


 ドルトンはしばらく歩き、5つの分かれ道まで来た。


「左から2番目だな。」


ドルトンは間違えなかった。しかし


「……いや、まずは隣に行くべきか。」


1番左の道をあえて選んだ。


「いるんだろ?死の世界第一生還者さん。」


ドルトンが通路に一歩踏み出したそのとき、ヒュン、と一瞬風の音がしたと思うと、遅れて金属音が聞こえた。ドルトンの白刃が、体高2m程の猛獣の爪を受け止めていた。それは豹のような身体つきをしていた。


「さすがだな、ドルトン。」

「当たり前よ。……さてはお前が辻斬りだな。」

「辻斬り?そうともいうな。だが我は強き者を求めているだけだ。」

「聞くところによると、被害を受けた魔物全員ワンパンチらしいな。」

「ハハハ。この辺の魔物は皆弱い。我を満足させるにはもっと強い魔物が必要だ。」

「そうか。ならもっと中心に向かうことだな。ここら辺は魔素の源よりかなり離れている。」

「ならばそうさせてもらおう。では、さらばだ!」

「あ、ちょっと待て。」

「あだだだだだだ!尻尾を掴むな!」

「お前この先で何倒した?」

「スライムだ。」

「お前スライムにも喧嘩売るのかよ。」

「いやいや、スライムにしては強かったんだよ。ワンパンチだったけど。」

「……思い当たる節がありすぎて困る。」

「なんだ、スライムに知り合いでもいたか?」

「そのスライム一緒に男がいなかったか?」

「あーいたわ。」

「……そのスライム知り合いだわ。それとそのスライム、お前と同じで死の世界からの生還者だ。」

「へ、へえ〜」

「……」

「……なんか体調悪くなってきたから帰るわ!じゃあな!」


その豹型の魔物はこの場を立ち去ろうとした。それを見たドルトンはその魔物の尻尾を握りしめた。


ギュウゥゥゥ!


「あばばばばばば!痛い!尻尾はダメだ!クソ!離せ!離せ!離せば分かる!」

「ピッキーちゃんに手を出した罪は重いぞ〜?」

「……あっ!なんだあの巨大なアレは!?」


魔物はドルトンの後ろを指差した。


「なんだ!?」


ドルトンは思わず振り向いたが何もなく、振り返ると魔物はいなかった。


「……ふぅ、あのクソ猫め、デカくなりおって。元気でなによりだが、倒しても魔物は復活するからといって余計なヘイトを稼ぎすぎないといいんだがな。さて、博之氏とピッキーちゃんに会いに行くとするか。」


ドルトンは通路の奥へと向かった。


***


「お取り込み中の所すみません〜ドルトンですよ〜」

「どうも、ドルトンさん。」

「あ、お久しぶりです。」

「ピッキーちゃんが襲われたようですね。あなた方に会った日くらいから、そういうの多いみたいですよ。」

「そうなんですか。」

「ちなみに襲ってきた魔物に心当たりはあったりします?」

「いや、魔物に知り合いはいないですよ。ピッキーとドルトンさん達以外。」

「そうですか、実はですね……」


 彼は襲ってきたやつが、実は俺たちの世界に入ったことのある魔物であることを教えてくれた。


「つまり、ピッキーの先輩なわけか。」

「……先輩からの当たり強すぎるよ。木っ端微塵になったわ。」

「確かに。で、お二人はこれからどうされるおつもりで?探索を続けますか?」

「そうしたいんですが、懸念材料が。ピッキーはバラバラになっても大丈夫らしいですが、俺はどうなのか、という。」

「ううんと、確か異世界からきた者はダンジョン内である程度ダメージを受けると元の世界に戻されるはずです。」

「そうなんですか。中々都合が良いですね。」

「それでも痛みなど感覚は残りますのでご注意を。」

「なら、武器や防具が欲しいんですが、どうすれば手に入ります?」

「ダンジョン内にはめったにお店はないので難しいですが、この近くにリザードマンのお店があるのでそこに行きましょう。」

「マスター、ピッキーも防具欲しい。」

「よし、じゃあ買い物に行こう。」

「では案内致しましょう。」


俺たちはドルトンの後をついていった。

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