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押入れ、ダンジョン、愛、無限(仮)  作者: 凸レンズ
ダンジョンと出会い
7/20

7. 強い魔物 その1

 彼らが去って数日、ご飯を食べた後などにふと思うことがあった。


―当たり前とはなんだ?

―普通とはなんだ?


最近、世界がゴロッと変わってしまったような気がしてならない。実際は世界が変わったのではなく、また一つ世界の真実を知ったことで俺が変わったのだ。俺はその変化に俺はついていけてない。しかし、俺はこれでも理系の端くれ、科学的根拠のないものを信じるわけにはいかないが、こうも見せつけられたら信じるしかない。


 俺は今まで努力はしたが苦労はしなかった。あまり大きな失敗もなく22年分の人生を歩んできたが、それすらも疑問に思えてくる。このまま普通に卒業して普通に就職することが良いことなのだろうか。


何かやってやりたい。


楽器は弾けないし、習い事もしてこなかった。中高の部活の成績も輝かしいものはなく、これといった趣味もない。しかし友達には恵まれ、友達と遊ぶのが好きだった。では一人で何をするのか?……人生の夏休みが訪れることに歓喜はしたが、よくよく考えると何もすることがなかった。


自分だけにしかできないことがやりたい。


ずっとそう思っていたが、今の状況、やはりチャンスではないだろうか。俺にしかできないこと、目の前にあるじゃない。もはやただの押入れとは言えないそれを俺は見つめた。


「行くか、ピッキー。」


「うん、行こう。」


最低限の準備をして、俺たちは再びダンジョンに潜入した。


 アウトドア用の服装を用意し、ピッキーにはヘルメットをつけさせた。俺は紙と鉛筆で地図を書きながら歩くことにした。


「ハロー、ヒフキソウ。」


ピッキーが挨拶をすると、やはり手を振って見送ってくれる。かわいいので育ててみたいが、何かの間違いで家が全焼したら困るのでヒフキソウにはここにいてもらう。ここまで直線だが、とりあえずヒフキソウのいる位置はチェックしておこう。


 そこそこ道なりに歩いたが、ここで開けた場所に出た。そこで振り向くと分かるが、俺はどうやら左から2番目の道から来たらしい。これは重要だ、メモメモ。


「さて、どうするか。」

「分かれ道を進むか、奥に進むか、ね。」


例えばゲームだと、実績を出来るだけ埋めながら進める人とそうでない人がいるが、俺は後者である。しかし、奥に進めば進むほど入り口からは遠くなるので、とりあえず隣の、左から1つ目の通路に向かおうと考えた。


「ピッキー、隣の分かれ道の方にいこうと思うんだけど。」

「いいと思う。」

「よし、進もう。」


左の1つ目、L1とでも呼ぼうか。L1の構造は、例えるならずっと続く急なS字クランクだった。死角があるので、俺たちは少し慎重に進んでいた。しかし、


「なあピッキー、ドルトンたちに気づいたように、この道の先に魔物がいるか分かったりしないのか?」

「うーん、ある程度しっかりした魔物じゃないと分からないわね。それこそスライムやヒフキソウなんかじゃ実際に知覚しないとわからないわ。」

「ところでお前はどこで何を知覚してるんだ?」

「あなたと同じように五感揃ってるわよ。見た目になくとも、目鼻口耳あと触覚。」

「ふーん」

「あ、そうだ。博之は私のマスターなんだから、これからはマスターって呼ぶね。」

「ん?そうか。」

「ご主人様の方が良かった?」

「……マスターで。」

「そう。じゃあよろしくね、マスター。……さて、マスターたるもの私を自在に操ってくれないと困るわ。」

「ピッキー、ちなみにマスターとやらになった覚えはないんだが?」

「やあね、マスター。名前をつけた時点であなたは私のマスターよ。」

「そうkオボフッ!」

「マスター!」


カーブの死角から、何者かによるアンブッシュが懐に直撃し、俺は思わず尻餅をついた。しかし、そこまでダメージはなかった。現れたのは3体のスライムだった。


「「「ピギー!」」」


スライムたちは騒ぎながら跳ねていた。寄り添うピッキーを撫でる。


「大丈夫、お前の最初の体当たりより少し強いくらいだ。さて、コイツらどうする?」

「もちろん倒すよ。」

「お前と同じ種族だけどそういうのは大丈夫なのか?」

「同族は味方でも敵でもないわ。中立が基本ね。でも、マスターに手出しするならこちらもそれなりに、ね。……んん〜」


ピッキーは力を貯めた。体を圧縮してどんどん小さくなっていく。


「見ててね、マスター。これが今の私の力よ。昔の体当たりと比べてもらっちゃ困るわ!」


ズギューン!


「「「ピギャー!!!」」」


パパパン!


圧縮されたボディにスライム特有の弾力はなく、それはさながら硬質ゴム弾のようだった。直撃した3体のスライムは水風船が割れるように弾けた。そして収まらない勢いのまま、ピッキーは壁に向かって飛んで行った。


「危ない!」


その勢いのままだとピッキーは確実に怪我をすると思ったが、攻撃が強すぎてピッキーがスライムであることを忘れていただけだった。


ポヨーン


当たる直前に圧縮を解除することで、スライム特有の弾力が衝撃を吸収したのだ。


「ピッキー!お前すげえな!」

「えへへ〜」


倒したスライムの残骸が消えると同時に、ピッキーの体が光り始めた。またレベルが上がったのだろう。……そういえば最近ピッキーのステータスを確認していなかったので、ここで見てみることにする。


ーーー


スライム(ピッキー)【スライム族】

Lv8


生命力 20

身体能力 15

知力 24

魔力 5

愛 25


称号

【命名】

【秀才】


---


これならここら一帯で負けないだろう。と思ったその時だった。突然、ピッキーが俺に体当たりを仕掛けてきた。


「マスター!危ない!」


思わぬ攻撃に俺はまたしても尻餅をついた。その時、俺は目の前を何かが通り過ぎるのを見た。それはとてもしなやかで、空を切る音が僅かにするだけだった。遅れて、辺りに何かが飛び散った。


ピチャ……


それは、先ほどの襲ってきたスライムの残骸のようだった。残ったスライムはいなかった、つまり


「ピッキー!!!」


飛び散っていたのは、ピッキーの残骸だった。しかし、それを悲しむ間も無く、俺は息を飲んだ。


「……いる。」


ピッキーを失った感情が、強制的に押さえ込まれるほどの強烈な気配を感じた。ヤツはまだ近くにいる。そして俺を見ている。


「狙ってるのか?」


空に問いかけた。


「……我、強きを追い求めし者。汝らが勝負を制し時、また相まみえん。」

「どういうことだ!?」


シュッと風を切る音がしてから、その声の主が喋ることはなかった。


***


???【???族】

Lv40


生命力 ?

身体能力 65

知力 ?

魔力 ?

愛 ?


称号

【偉大なる狩人】

【隠密】

【??】

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