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13. 黒い魔物 その1

「「はぁ、はぁ」」

「ここまで来れば奴ももう追ってこないだろ。」

「そうね。」


 俺たちは命かながらメタルなスライムから逃げ出した。いつもは逃げる側のあいつから逃げるのは非常に不本意だったが、流石に日本刀さながらの剣で一太刀は食らいたくなかったので仕方なかった。そもそも、相手が固すぎてこちらの攻撃が通らない以上倒す術がないというのが問題だった。


「次、アイツに出くわしたらどうする?」

「あれはレアモンスターだから中々会わないわよ。スライム1000体のうち1体生まれるレアものよ。」

「へえ。だからスライムなのにめちゃくちゃ強いわけだ。」


 俺たちはしばらく進むと、またスライムが飛び出してきた。


「「「ピキー!」」」

「またかよ〜」


と思いながら構えたが、あいつらは珍しく俺たちをスルーしていった。そそくさと俺たちの脇を通り過ぎ、その姿は見えなくなった。どことなく、やつらは焦っているように見えた。


「マスター?」

「なんか様子が変だな。」


これまでが一本道だったことから、俺たちの選択肢は、スライムが逃げてきた方向に進むのか、戻って日本刀スライムの機嫌を伺うのかのどちらかだった。


「マスター、別に私の魔法でいつでも帰れるんだから、そんな真剣に考えなくても大丈夫だよ。」

「確かに。じゃあ先に進んで、魔法で逃げよう。逃げる知能があるかすら怪しい一般スライムがこぞって逃げるなんて、何かあるに違いない。」

「そうだね。一応確認しに行こう。」


 少し歩くと、少し開けた場所に出たが、そこの惨状は異常だった。


「ひ、酷い。」


スライム何体分に相当するだろうか、その空間に飛び散っているスライムの残骸の量はとてつもなかった。しかも、スライムの色に混じってドス黒いシミのようなものが多くについていた。しばらく部屋の中を散策したが、スライムのドロップアイテムがたまに落ちているだけで、スライムの黒ずんだ残骸しかなかった。5分ほど見回ったところで、ピッキーがあることに気づく。


「マスター、このスライム達、復活しないね。」

「確かにそうだ。いつもすぐに復活するのに。何故だ?」

「分からない。でも、いつもの違うのは、やっぱりこの黒ずみ。」

「迂闊に触らない方がいいかもしれん。何かの毒や呪いの類いかも……」


自分の知ってるファンタジーの世界を必死に押し広げながら、この現象の原因を考えるが、全く思いつかない。とりあえず言えることは、スライムを復活不能の死に至らしめる出来事があったということだ。


「……帰ろうか。」

「そうだね。ここはなんか、嫌な感じがする。」

「押入れからまっすぐ行ったところの分かれ道に行こう。ここから出来るだけ離れたい。」


俺たちはこの部屋から出た。ピッキーを抱き、俺の家に帰ろうと集中したその時だった。ぴょん、ぴょんと聞き慣れたスライムの跳ねる音がした。生き残り?いや、あそこには死骸しかなかったはず。意識を音のする方に向け、目を開いた。


「……ッ!」


そこにいたものを、俺は明らかな異質物だと判断した。血の気が引く音がした。形こそ普通のスライムと全く変わらないが、その色はドス黒かった。さっきの残骸の色と、同じ色……


「……」


スライム特有のピキーという鳴き声はなく、機械のようにこちらに迫ってくる。なんというか、ヤツには生物感がないのだ。


「ピッキー!」

「分かってる!」


俺たちはまた集中を始めた。しかし、ヤツはそれを許さなかった。


「ぐはぁ!」

「きゃあ!」


それは強烈な体当たりだった。俺たちは数メートル吹き飛ばされた。


「げほ!げほ!」

「マスター!しっかり!」


黒いスライムは、ジワジワと距離を詰めてきている。


「アイツは、ここで倒さないとダメだ!」


俺は本能的にヤツから逃げ切れないことを察知した。倒せるかは分からない。けれど、倒さなければ死ぬことは確かだった。


「マスターは復活できないんだよ!?逃げようよ!」

「ダメだ!アイツはどこまでも追ってくる!ここで仕留めないとダメだ!……またくるぞ!ピッキー!」

「もう!」


ピッキーが羽衣で受け止める。羽衣は体当たりの勢いを殺すことに成功していた。よし、この間に何か打開策を……


「「「ピキー!」」」


後ろから聞こえたのは、スライム達の声だった。いつも以上にぴょんぴょん跳ね回っていた。


「ピキキ!」


そして、ほくそ笑んだような鳴き声の奴もいた。煌めく白刃をびゅんびゅん振り回している。


「「囲まれた!?」」

次回予告『博之死す』

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