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第九十四話 アマリアを取り込んで

 ついに、コーデリアは、倒れた。

 ヴィオレットの固有技で、一撃を食らったのだ。

 コーデリアは、目を開けたまま、動かない。

 ピクリとも。


「死んだか」


「かもしれないな」


 ヴィオレットとカイリは、コーデリアの方へと覗き込む。 

 死んだかをどうかを、確認するためであろう。

 覗かれても、コーデリアは、動かない。 

 やはり、死んだのだろうか。


「コーデリア……」


 動かなくなったコーデリアを目にしたアマリアは、目を閉じた。

 コーデリアを殺したことを悲しんでいるのではない。

 憐れんでいるのだ。

 コーデリアによって、運命を狂わされたヴァルキュリア達の事を思うと。

 もっと、早く、気付いていれば、こんなことにはならなかったかもしれない。

 ヴィオレットも、カイリも、苦しむことはなかったであろう。

 アマリアは、そう思っていた。

 だが、その時であった。


「あは、あはははは!!」


「なっ!!」


 突然、コーデリアが、笑い始めた。

 やはり、まだ、死んでいなかった。

 ヴィオレットとカイリは、あっけにとられながらも、とっさに、後退する。

 懸念したのであろう。

 コーデリアが、今まで、異常に狂っていると、勘付いて。


「バカね、これで、死ぬわけないじゃない」


 コーデリアは、むくっと起き上がる。

 その起き上がり方は、異常だ。

 天井を見ながら、起き上がったのだから。

 しかも、傷口も、宝石も、すでに、復活していた。

 なぜ、コーデリアは、死ななかったのだろうか。

 宝石も、破壊し、胸元も貫いたというのに。

 思考を巡らせるヴィオレット達。

 だが、誰も、見当がつかなかった。


「さあ、もっと、いたぶってあげるわ。徹底的にね」


 コーデリアは、狂気の笑みを浮かべながら、手を伸ばす。

 その時だ。

 コーデリアの目の前で、突風が、吹き荒れたのは。

 その突風は、アマリアを捕らえ、攫おうとしていた。


「きゃっ!!」


「アマリア!!」


 突風に捕らえられた途端、アマリアは、コーデリアの方へと引きずり込まれる。

 まるで、アマリアを捕らえようとしているようだ。

 アマリアは、必死に、踏ん張るが、突風の勢いは、止まらなかった。

 ヴィオレット達も、突風のせいで、動くことができずに。


「貴方をいただくわ。アマリア。貴方は、邪魔だもの」


 コーデリアは、アマリアを邪険にしている。

 アマリアの固有技は、特別だ。

 しかも、コーデリアの弱点でもあるのだ。

 だからこそ、アマリアを捕らえよとしているのだろう。


「ど、どうやって……」


「ひ・み・つ」


 アマリアは、怯えながらも、問いかける。

 恐れているのだろう。

 コーデリアは、何を企んでいるのか。

 コーデリアも、答えるつもりはないようで、不敵な笑みを浮かべる。

 その笑みは、恐ろしく感じた。

 その時であった。 

 ついに、アマリアが、耐え切れず、突風に巻き込まれてしまったのは。


「あっ!!」


「させるか!!」


「アマリア!!」


 突風にさらわれ、アマリアは、宙に浮き始める。

 カイリが、飛びあがって、アマリアを手をつかみ、ヴィオレットが、さらに、カイリの手をつかむ。

 アマリアを助けるために。


「カイリ……ヴィオレット……」


 アマリアは、どうすることもできず、ただ、必死に、カイリの手をつかむばかりだ。

 ヴィオレットも、カイリも、歯を食いしばって、アマリアを助けようとしている。

 このままでは、アマリアが、攫われてしまう。

 ヴィオレット達は、必死に、アマリアを自分達の元へと引き込もうとするが、突風の威力に負けそうになっていた。


「無駄よ」


「ぐっ!」


 コーデリアは、魔法・ストーム・スパイラルを発動する。

 風の力で、一気に、突風の威力が高まってしまう。

 ついに、カイリは、アマリアの手を離してしまい、ヴィオレットは、吹き飛ばされてしまった。

 アマリアは、見る見るうちに、コーデリアにとらわれる。

 しかも、コーデリアは、妖艶な笑みを浮かべながら、抱き寄せるように。


「さあ、一つになりましょう。アマリア」


「い、いや……」


 コーデリアは、アマリアに語りかける。

 しかも、殺そうとしないのだ。

 コーデリアが、何を企んでいるのか、想像もつかない。

 アマリアは、怯えながら、首を横にふった。

 だが、その願いをむなしく、コーデリアの宝石が、妖しく光り、まがまがしい力が、放たれた。

 アマリアを覆い尽くしながら。

 

「いやああああああっ!!!」


「アマリア!!」


 アマリアは、絶叫を上げる。 

 それも、涙を流しながら。

 カイリは、手を伸ばそうとするが、時すでに遅し。

 まがまがしい力は、アマリアを完全に覆い尽くした。

 ヴィオレットとカイリは、まがまがしい力に吹き飛ばされそうになるが、耐え抜く。 

 まがまがしい力は、収まるが、ヴィオレットとカイリの前に現れたのは、コーデリアだけであった。


「なんてことだ……」


「アマリアと融合したのか?」


 ヴィオレットは、あっけにとられている。

 信じられないようだ。

 それもそのはず。 

 コーデリアは、先ほどとは違い、黄金の鎧を身に着けていたのだ。

 しかも、純白のレースをその身に纏いながら。

 その姿は、まるで、聖女だ。

 だが、彼女は、アマリアではない。

 だというのに、アマリアの力を感じ取ってしまう。

 カイリは、コーデリアが、アマリアと融合してしまったのではないかと、推測し、愕然としていた。


「そうよ。これも、あの方から頂いたからこそなのよ」


 コーデリアは、カイリの問いに答える。

 なんと、魔神の力によるものだというのだ。

 恐ろしい力だ。

 アマリアでさえも、融合させてしまえるのだから。

 ヴィオレットも、カイリも、唖然として動けなかった。


「あはははは!!」


 コーデリアは、笑い始めた。

 しかも、狂ったように。

 コーデリアは、思い込んでいるのだろう。

 これで、ヴィオレット達に勝てると。


「素敵だわ!!力が、みなぎってくる!!」


 コーデリアは、天を仰ぐ。

 アマリアの力は、コーデリアにとって、弱点であったはずだ。

 だというのに、融合を果たしたことにより、コーデリアの体に、馴染んでしまったのだろう。

 そう思うと、魔神の力は、本当に、恐ろしかった。


「さて、殺してあげるわ。大丈夫よ。死んだとしても、貴方の魂は、使えるもの。カイリの体だって、私が、治してあげる。その後は、私の意のままに操るけどね」

 

 コーデリアは、カイリとヴィオレットの息の根を止めるつもりだ。

 魔神復活の為には、彼女達が、必要であるというのに。

 コーデリアは、殺した後で、ヴィオレットの魂を手に入れ、カイリを操り人形として、生き返らせるつもりだ。

 しかも、アマリアは、二人を殺した後で、殺すつもりなのだろう。

 アマリアの命を奪う為に。


「ふざけるな!!」


「カイリ!!」


 カイリは、歯を食いしばり、コーデリアに向かっていく。

 それも、無防備な状態で。

 感情のままに、動いてしまったのだろう。

 大事なアマリアを奪われてしまったからであろう。

 カイリは、短剣で、コーデリアを刺そうとするが、コーデリアは、魔剣を前に出し、カイリの短剣を防いだ。


「アマリアを返せ!!」


「……どうしても、あの子がいいのね。悲しいわ」


 カイリは、声を荒げる。

 冷静さを失っているようだ。

 それほど、アマリアの事を大事に思っているのだろう。

 そう思うと、コーデリアは、アマリアが、憎かった。

 今すぐにでも、殺してしまいたいほどに。

 そして、同時に、カイリの事も、憎んだ。

 コーデリアは、まがまがしい力を帯びた闇の固有技・デスぺラート・ダークネスを発動した。


「ぐあっ!!」


 カイリは、反撃する事も、回避する事もできず、直撃を受けてしまう。

 その威力は、凄まじい。

 だが、ここで、立ち止まるわけにはいかない。

 アマリアを救わなければならないのだ。

 ヴィオレットは、床を蹴り、コーデリアの元へと迫った。


「はあっ!!」


「無駄だって、言ってるでしょ!!」


 ヴィオレットは、固有技・スギライト・ライトニングを発動する。

 もう一度、宝石を破壊するためだ。

 宝石の鎌は、コーデリアの宝石を捕らえた。

 だが、破壊することはできなかった。

 ヴィオレットは、目を見開き、唖然とする。

 動揺しているのだ。

 まさか、宝石が破壊できないとは、予想もしていなかったのだろう。

 コーデリアは、その隙を逃さず、固有技・デスぺラート・レイディアントを発動する。

 まがまがしい光は、ヴィオレットを捕らえた。


「ぐあっ!!」


 ヴィオレットも、回避することができず、直撃し、吹き飛ばされてしまう。

 吹き飛ばされたヴィオレットは、地面にたたきつけられた。


「ヴィオレット……」


 カイリは、ヴィオレットの元へと歩み寄る。

 ヴィオレットを守ろうとしているのだろう。 

 ヴィオレットは、痛みに耐え、立ち上がった。

 だというのに、コーデリアは、笑みを浮かべたまま、立ったままだ。

 まるで、余裕と言わんばかりに。


「大丈夫だ。だが……」


「これは、まずいことになったな……」


 ヴィオレットは、構える。

 痛みにもだえている暇はないのだ。

 だが、ヴィオレットも、カイリを舌を巻いていた。

 コーデリアは、アマリアと融合した事で、強大な力を手に入れてしまったのだ。

 しかも、回復魔法を唱えられる者がいなくなってしまった。

 これは、ヴィオレット達にとって、相当の痛手であろう。


「ふふ、うふふふふ」


 コーデリアは、笑みをこぼす。

 まるで、狂ったように。

 その笑みは、妖艶であり、恐ろしかった。


「さあ、楽しみましょう!!死ぬまでね!!」


 コーデリアは、構えた。

 ヴィオレット達を殺そうとしているのだ。

 それも、徹底的に痛めつけて。

 ヴィオレット達は、劣勢を強いられてしまっていた。


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