↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/101

第七十三話 クライドの動向

 時間が経ち、翌朝になった。

 ヴィオレットとアマリアは、未だ、部屋に閉じ込められている。

 ラスト達の動きは、まだつかめていない。

 アトワナとキャリーも、そう簡単に、動けないのだろう。

 ラストを裏切ることになってしまうのだから。


「外の様子は、どうなっているのでしょうか?」


「さあな」

 

 アマリアは、ルビーエリアが、どのような状態になっているのか、気になっているようだ。

 彼女達の部屋は地下だ。

 ゆえに、外の様子がうかがえない。

 ヴィオレットも、気になってはいるのだが、知る方法は、今のところない。 

 アトワナ達から聞くしかなかったのだ。


「ラスト……」


 アマリアは、ラストの名を呟く。

 あれほど、冷たく突き放されたのに、彼の事を信じているかのようだ。

 ヴィオレットは、アマリアの心境の変化に気付いていた。


「ラストの事が気になるのか?」


「え?あ、はい……」


 気になったヴィオレットは、問いかける。

 アマリアは、正直にうなずいた。

 少々、戸惑いながらも。


「意外だな。あんたは、あれほど、ラストを拒絶してたのに」


「そ、そうですね……」


 ヴィオレットは、正直に話す。

 以前のアマリアなら、ラストの事を拒絶していたのだ。

 シャーマンを殺した暗殺者を受け入れる事はなかった。 

 だが、いつからだろうか。

 アマリアが、ラストの事を気にかけるようになったのは。

 ヴィオレットは、カレン達を殺すことだけを考えていた為、気付いていなかった。

 アマリアは、戸惑いながらも、うなずいた。


「似ているんです」


「似ている?誰に?」


 アマリアは、正直に理由を語る。 

 ラストは似ているのだ。

 アマリアの知っている「カイリ」に。

 だが、ヴィオレットは、この事を知らない。

 ゆえに、誰なのか、問いかけた。


「私の知っているお方に」


「そう……」


 アマリアは、答えると、ヴィオレットは、それ以上、問いかけなかった。

 誰に似ているのか、悟ったからだ。

 アマリアの知っている人物は、たった、一人しかいない。

 幼い頃、アマリアが、良く語っていたから、知っているのだ。

 「カイリ」の事を。

 その時だ。

 ノックの音が聞こえてきたのは。


「どうぞ」


「失礼しまーす」


 アマリアが、反応すると、ドアが開く。

 部屋に入ってきたのは、ハイネとミーナの二人であった。

 朝食を持ってきたのだ。

 しかも、いつも通りの様子で。

 ヴィオレットに、敵意を向けていないのだろうか。

 それとも、ヴィオレットを騙しているのかもしれない。


「今度は、お前達か」


「何?文句あるわけ?」


「いいや」


 ヴィオレットは、あえて、悪態をつく。

 ヴィオレットの様子をうかがっていたミーナも、いつも通りの反応を返した。

 まるで、ヴィオレットをあざ笑っているかのようだ。

 と言っても、それも、いつも通りなのだが。

 ヴィオレットは、少々、自嘲気味に笑いながらも、朝食を口に運んだ。

 しかも、疑う様子を見せずに。


「へぇ、食べるんだ」


「お前達は、私達を殺すつもりはないのだろう?」


「まぁね」

 

 朝食を口にしたヴィオレットを目にしたハイネは、驚いている。

 ヴィオレットは、警戒せずに、食べたのが、意外だったのだろう。

 もちろん、ヴィオレットも、初めから信用していたわけではない。

 だが、ハイネ、ミーナとやり取りをして、察したのだ。

 彼女達も、ヴィオレットに敵意を向けているのではないのだと。

 ヴィオレットに問いかけられたハイネは、うなずいた。


「じゃあ、信用してくれたついでに、教えてあげるよ」


「何をだ?」


 信頼を得た為、ハイネは、ヴィオレットに情報を流す。

 ミーナも、同じことを思っていたようだ。

 だが、彼女達は、どのような情報を手にしているというのだろうか。

 ヴィオレットは、見当もつかないため、問いかけた。


「そりゃあ、クライドの事だよ」


「そうそう」


「クライドは、何をしようとしている?」


 ハイネは、クライドの情報を手に入れたらしい。

 ミーナも、うんうんとうなずいていた。

 だが、それでも、クライドが、何をするつもりなのか、不明だ。

 ラストの事も、気になる。

 クライドの情報を得られれば、ラストの目的も、わかってくるかもしれない。

 そう思うと、ヴィオレットは、情報を得る為に、ハイネとミーナに問いかけた。


「王宮エリアに乗り込むつもりだよ」


「と言っても、戦力が足りないっぽいんだよね~」


 ハイネ曰く、王宮エリアに乗り込もうとしているらしい。

 これは、予想通りだった。

 だが、ミーナは、話を続ける。

 戦力が足りないと感じているようだ。

 多くのギルドを傘下に置いているというのに。

 戦力は、十分ではないかと、思うほどだったのだ。

 それでも、王宮エリアの帝国兵は、戦力が高い。

 ゆえに、クライドは、恐れているのだろう。


「だから、各エリアにいって、説得してる。ヴァルキュリアの事もぜーんぶ明かしてね」


「うまくいくのか?」


 クライドは、戦力を集める為、各エリアに赴き、自分達に協力するよう説得しているようだ。

 と言っても、一般の帝国の民が、闇ギルドに協力するとは、到底思えない。

 そのため、クライドは、ヴァルキュリアの本性を話しているらしい。 

 そこから、帝国の信用を落とすつもりなのだろう。

 話を聞いたヴィオレットであったが、それだけで、うまくいくとは、到底思えなかった。


「さあね。でも、ルビーエリアの連中も、同行してるし」


「まぁ、集まるんじゃないの~」


「かもしれないな」


 もちろん、クライドだけでは、説得力に欠けるであろう。

 ゆえに、カレンの本性を見てしまったルビーエリアの住民も同行しているらしい。

 ミーナは、協力者が増えると予想しているようだ。

 ルビーエリアの住民が、カレンの本性を見てしまったのだ。

 それだけでも、十分に、説得できる材料となるだろう。

 そう思うと、ヴィオレットも、うなずいた。


「つまり、王宮に乗り込むには、まだ、時間がかかると言う事ですね」


「そういう事。なんだ、聖女様も、わかるようになったじゃん」


「ええ。一応ですが」


 話を聞いたアマリアは、クライドの目的を言い当てる。

 ミーナは、アマリアをからかうが、アマリアは、正直に答えた。

 クライドの目的は、あまりにも、わかりやすかったからであろう。

 戦力を集める事は、たやすいことではない。  

 だが、可能ではある。

 となると、時間がかかるのは、アマリアでさえも、目に見えていた。


「ヴィオレット。あいつらは、一週間以内に、王宮に乗り込むつもりだよ」


「どうするよ。あたいらも、行くつもりなんだけど」


 クライドは、遅くても、一週間後には、決行するつもりのようだ。

 帝国と決着をつけるつもりなのだろう。

 ハイネとミーナも、王宮に乗り込むつもりだ。

 そうなると、クーデターが起こる。

 歴史がひっくり返ることになるだろう。

 ヴィオレットは、どうするつもりなのだろうか。

 もちろん、答えは、ハイネもミーナも、わかっている。

 それでも、ヴィオレットの口から聞きたかった。


「……決まってるだろう」


「へぇ、どうすんの?」


「ラストをブッ飛ばす」


 ヴィオレットの答えは、シンプルであった。

 自分達を裏切ったラストをブッ飛ばす事。

 ただ、それだけだ。

 それは、自分の為でもあり、アマリアの為でもあった。

 


 その日の夜、ヴィオレット達が、情報を得たとは、知らずに、ラストは、とある場所にたどり着く。 

 そこは、ルビーエリアと王宮エリアをつないでいる橋であった。 

 橋の前で警備していた帝国兵は、血を流して倒れている。

 ラストが、殺したのだろう。


「さて、どうすっかな」


 ラストは、歩いていく。

 飄々とした様子で。

 だが、ふと、何かが気になったのか、ラストは、立ち止まり、振り向く。

 背後には誰もいない。

 カレンが、殺されたからか、街は、静まり返っていた。


――結界も解けたし。クライド達も、戦力を集めてくれてる。後は、帝国を滅ぼすだけだ。


 全ての結界は、解かれた。

 カレン達も、殺された。

 クライド達は、帝国を滅ぼすために、戦力を集めてくれている。

 帝国を滅ぼす時は、着々と近づいているというわけだ。


――コーデリアを殺せば、うまくいくだろ。後の事は、海賊の連中に任せればいいしな。


 残りは、コーデリアだけだ。

 彼女さえ、殺せば、帝国は、滅んだも、同然。

 自分が、皇帝になることもできる。

 と言っても、後始末もしなければならない。

 それは、クライド達を殺す事だ。

 帝国兵も、生き残っている可能性がある。

 そのため、ラストは、海賊に押し付けようとしているのだろう。

 だが、もし、仮に、全ての帝国の民が、死んだら、帝国として成り立つわけがない。

 ラストが、皇帝になる意味は、あるのだろうか。

 答えは、ラストだけしか、わからないだろう。


――その前に、あれを取りに行かないと。


 ラストは、帝国を滅ぼす前に、やるべきことがあるらしい。

 ゆえに、ラストは、橋の中に入ろうとしていた。

 だが、その時であった。


「どこに行くつもりだ?ラスト」


「え!?」


 ラストの背後から、ヴィオレットの声が聞こえる。

 だが、そんなはずはない。

 ヴィオレットとアマリアは、部屋に閉じ込めたのだから。

 ラストは、驚愕し、思わず、振り向いていしまう。

 なんと、ラストの背後には、ヴィオレットとアマリアが立っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。