↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
楽園世界のヴァルキュリア―破滅の少女―  作者: 愛崎 四葉
第三章 小悪魔の風のヴァルキュリア
42/101

第四十二話 追い詰められていたのは

 ユユとヤヤは、アマリアの手を引いて、必死に裏路地を駆けていく。

 行先は、ただ一つ、宮殿だ。 

 早く戻らなければ、ライムの機嫌が悪くなっているかもしれない。

 そう思うと、ユユとヤヤは、焦燥に駆られる。

 だが、長く、走っていることもできず、立ち止まってしまった。

 息を切らす、ユユとヤヤ。

 アマリアも、ずっと、走っていた為、息を整えるのに、時間がかかってしまった。


「お、追手は?」


「き、来てないよ……」


 ヤヤは、ユユに尋ねる。

 ウォーレットが来ていないかと懸念しているのだろう。

 ユユは、あたりを見回すが、追手は着ていないようだ。

 何とか、うまく逃げ切れたのだろう。

 今の所は。


「……」


「ヤヤ……」


 ヤヤは、うつむいてしまった。

 逃げ切れたことを喜び、安堵したいところだ。

 だが、思い返すのは、クロスボウで、帝国の民を殺してしまった事だ。

 罪悪感を感じているのだろう。

 ヤヤの様子を見ていたユユは、うつむいた。

 自分が、ヤヤを追い詰めてしまったのだと。


「私、殺しちゃった……どうしよう……」


 ヤヤは、体を震わせる。

 いくら、相手が、レジスタンスのメンバーだと言っても、一方的に、殺してしまった。

 これは、重罪だ。

 正当防衛で済まなくなるかもしれない。

 大丈夫と自分に言い聞かせてきたのだが、限界だったのだろう。


「し、仕方がないよ……だって……だって……」


「ユユ……ヤヤ……」


 ユユは、体を震わせ、自己防衛を始める。

 仕方がないのだ。

 もし、アマリアを連れてこなければ、ライムから、ひどい仕打ちを受けてしまうだろう。

 そう思うと、自分達を守るために、帝国の民を殺すしかなかったも知れない。

 アマリアは、心が痛んだ。

 ユユとヤヤが、どれほど、ひどい仕打ちを受けてきたのかと思うと。


「ひどい仕打ちを受けたんですね……」


「ち、違います……」


「こ、これは……」


 アマリアは、悟った。

 ライムは、本当に、ひどい事をしてきたのだと。

 だが、ユユは、否定した。

 ライムの事が、知られれば、ライムは、黙っていないだろう。

 ヤヤも、言い訳しようとし始める。

 だが、その時だ。

 アマリアが、二人を優しく抱きしめたのは。


「アマリア様……」


「辛かったですね……」


 アマリアは、涙を流し始めた。

 もし、自分が、ライムの事を知っていれば、ユユとヤヤを救えたかもしれない。

 これは、自分の責任でもあると思っているのだろう。

 ユユとヤヤも、涙を流す。

 自分の事を理解してくれたのだ。

 自然と涙が流れたのだろう。

 だが、もたもたしている暇はない。

 ユユとヤヤは、アマリアから、離れた。


「アマリア様、申し訳ございませんが……」


「行きましょう。ヴィオレット達が、来る前に」


「……はい」


 ユユは、アマリアに謝罪する。

 急がなければならないのだ。

 アマリアも、理解しており、急いで、宮殿に行くことを決意した。

 ヴィオレット達には、申し訳ないが。

 ユユとヤヤの事が、心配だ。

 自分は、どうなっても、構わない。

 ユユとヤヤを守らなければと思っているのだろう。

 ヤヤは、申し訳なさそうに、うなずいた。

 だが、その時だ。

 短剣が、ユユとヤヤに向かって放たれたのは。

 二人は、殺気に気付き、クロスボウをとっさに、つかみ、引き金を引いて、短剣をはじいた。


「きゃっ!!」


 突然の事で、アマリアはおびえる。

 だが、怯えているのは、アマリアだけではない。

 ユユとヤヤも、怯えているのだ。


「だ、誰!?」


 ヤヤは、怯えながら、あたりを見回す。

 まさか、追手が来たのではないかと、推測したのだろう。

 だが、一体、誰が、来たというのか。

 レジスタンスのメンバーなのか、闇のギルドの幹部なのか。

 それとも、ヴィオレットとラストなのか。

 もし、ヴィオレットとラストであれば、最悪の事態だ。

 ヴィオレットとラストは、ユユとヤヤにとって、厄介なのだから。


「よう」


「お、お前らは……」


 ラストが、飄々とした様子で、手を上げる。 

 なんと、追ってきたのは、ヴィオレットとラストだ。

 実は、倒れているウォーレットを発見し、どこに逃げたのか、聞いたのだ。

 もちろん、入り組んでいる為、見当もつかない状態であったが。

 ウォーレットの事をアトワナに任せ、二人は、ユユとヤヤを追ってきたというのだ。

 これは、ユユとヤヤにとって、最悪の事態だ。

 ユユは、体を震わせていた。


「アマリアを返してもらうぞ」


 ヴィオレットは、ヴァルキュリアに変身し、鎌を振り回す。

 ユユとヤヤを殺すつもりだ。

 容赦なく。

 ラストも短剣を取り出し、構えた。


「待って、話を……」


「駄目、聞かない」


 アマリアは、説得を試みるが、ラストは、聞くつもりは、毛頭なかった。

 知っていたからだ。

 ライムに脅されていることくらい。

 だからこそ、尚更、アマリアの説得など、聞く気がなかった。


「ど、どうしよう……」


「こうなったら……」


 ヤヤは、焦燥に駆られる。

 ヴィオレットとラストを相手に、生き延びれるはずがない。

 だが、ライムの元へ行かなければならない。

 それも、アマリアを連れて。

 死にたくないのだ。

 だが、その時であった。

 ユユが、覚悟を決めたのは。


「ヤヤ、行って?」


「え?」


「アマリア様を連れて、逃げて」


「ユユ!!」


 ユユは、アマリアを連れて逃げるように、ヤヤに告げる。

 一人残って、時間を稼ごうとしているのだ。

 これには、さすがのヤヤも、驚きを隠せない。

 アマリアも、呆然と立ち尽くしていた。


「駄目だよ!!ユユ、死んじゃう!!」


 ヤヤは、ユユの提案を受け入れられなかった。

 このままでは、ユユが、死んでしまうからだ。

 確実に。

 ゆえに、ヤヤは、残って、共に戦おうとしていた。

 体は、震えていたが。


「大丈夫。あとで、追うから」


「……ごめんなさい!!」


 ユユは、穏やかな表情で、ヤヤに伝える。

 後で追うと。 

 生き延びれるはずがない。

 相手が、ヴィオレットとラストなのだから。

 それでも、ユユは、ヤヤを守ろうと決意を固めたのだ。

 たとえ、命を落とすとわかっていても。

 ヤヤは、怯えながら、謝罪して、アマリアの手を引き、ユユを残して、逃げてしまった。


「へぇ。覚悟を決めたんだ」


「まさか……」


 ラストは、笑みを浮かべる。

 死ぬつもりになったのかと。

 ユユは、死ぬつもりなど毛頭ない。 

 死ぬかもしれないとわかっていながらも、受け入れることなどできなかったのだ。

 ヤヤを残して死ねるはずがなかった。


「お前達を殺して、逃げ延びてやる!!」


 ユユは、クロスボウを手にして、構える。

 そして、引き金を引いて、矢を放った。

 ヴィオレットは鎌を振り回しながら、矢をはじく。

 それでも、矢を放ち続けるユユ。

 ラストは、回避して、ユユに迫ろうとした。

 だが、ユユは、後退しながら、逃げていく。

 生き延びる為に。


「お前達のせいだ!!お前達のせいで、ライム様は!!」


 ユユは、怒りをヴィオレットとラストにぶつけながら、矢を放つ。

 ライムが、豹変してしまったのは、ヴィオレットとラストのせいだと思っているようだ。

 考えてみれば、そんな事はあり得ない。

 彼女に仕えていたのであれば。

 だが、その事に対して、深く考えられないほど、追い詰められているのだろう。

 ラストは、ユユの元へと迫るが、ユユは、ラストに矢を放つ。

 矢は、ラストの集中して、飛ばされ、ラストは、全てを回避しきれず、左肩に刺さった。


「ちっ!!」


「ラスト!!」


 ラストが、苦悶の表情を浮かべる。 

 ラストの危機を察知したヴィオレットが、鎌を振り回しながら、魔法・スパーク・ショットを発動する。

 ユユは、後退しながら、魔技・ストーム・アローを発動し、ヴィオレットの魔法を相殺した。


「絶対に、許さない!!お前達だけは!!」


 ユユは、怒りを露わにしながら、歯を食いしばり、涙を流す。

 怒りが、収まらない状態なのだろう。

 ヴィオレット達さえいなければ、平和だった。

 ライムも、豹変しなかったのにと、言いたいのだろう。

 だが、その時だ。

 ラストが、短剣を投げつけたのは。

 短剣は、ユユの左胸へと突き刺さった。


「かはっ!!」


 ユユは、血を吐くが、短剣を引き抜こうとする。

 だが、ここで、ラストは、ユユに迫り、短剣を握りしめ、さらには、ユユの心臓へと深く突き刺そうとした。

 確実に、殺すために。


「ライムが、豹変したのは、俺達のせいじゃないから。勘違いすんなよ」


 ラストは、ユユに語る。

 ライムが豹変した原因は、自分達ではないと。

 他に、何か、原因はあるようだ。

 だが、決して、語ろうとはしなかった。


「く……そ……」


 ユユは、悔しさをにじませながら、仰向けになって倒れようとする。

 すると、ラストは、止めを刺すかのように、短剣を深く突き刺し、ついには、短剣は、心臓へと刺さった。

 その瞬間、ユユは、目を見開いたまま、仰向けになって倒れた。 

 ラストに殺された瞬間でもあった。


「大丈夫か?」


「おう」


 ヴィオレットは、ラストに歩み寄る。

 怪我を追ってしまった為、心配しているのだろう。 

 だが、ラストは、矢を肩から、引き抜き、フードの端を破いて、肩に巻き始めた。

 アマリアがいてくれれば、治療してもらえるのだが、彼女は、攫われてしまった。

 回復魔法を発動できる者は、他にいない。 

 ゆえに、止血するしかなかったのだ。

 何度も、危険な目に合ったからなのだろうか。

 ラストは、一人で、いとも簡単に布を巻き、止血してみせた。


「急ごうぜ」


「ああ」


 ヴィオレットとラストは、アマリアとヤヤを追った。

 アマリアを連れ戻すために。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。