表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
楽園世界のヴァルキュリア―破滅の少女―  作者: 愛崎 四葉
第三章 小悪魔の風のヴァルキュリア
38/101

第三十八話 まるで、小悪魔のように

 ヤヤが、慌てて戻ってきたことにより、ライムは、立ち上がる。

 しかも、わざと、不機嫌そうな表情で。

 ヤヤの様子をうかがっているようだ。


「何?紅茶はどうしたの?紅茶よりも、大事な事があるって言うのかしら?」


「は、はい……」


 ライムは、わざと、怒りを露わにしたかのように、尋ねる。

 彼女に尋ねられたヤヤは、怯えながらも、うなずいた。

 恐ろしく感じていたが、紅茶どころではないらしい。


「へぇ」


 ライムは、不敵な笑みを浮かべる。

 その笑みは、まるで、ヤヤをあざ笑っているかのようだ。

 もし、自分が納得できない話であれば、どうしようかと考えているのだろう。

 ライムの表情を目にしたヤヤは、息を飲んだが、心を落ち着かせるために、息を吐いた。


「あ、あの、兵長から報告がありました」


「言いなさい」


 ヤヤは、正直に話す。 

 実は、紅茶を淹れなおしている間に、王宮エリアの帝国兵が、ヤヤの元へやってきたのだ。

 しかも、兵長から報告を受けたとのことで。

 ヤヤは、どうしても、紅茶を淹れなければと思っていたのだが、それどころではない事を察した。

 ゆえに、怯えながらも、戻ってきたのだ。

 兵長から報告があったとなれば、何か起こったに違いない。

 そう察したライムは、報告を話すように、ヤヤに命じた。


「う、裏切りのヴァルキュリアが、エメラルドエリアに侵入したとのことです!!」


 ヤヤは、恐る恐る報告する。

 なんと、ヴィオレット達が、このエリアに侵入した事が、知れ渡ってしまったのだ。

 それを聞いていたユユは、驚愕する。

 今度は、ライムを殺しに来たのではないかと察して。

 ユユとヤヤは、恐る恐るライムの方へと視線を向けた。 

 様子をうかがう為に。


「そうなんだぁ」


 ライムは、不敵な笑みを浮かべている。

 ヴィオレットに殺されるかもしれないというのに。

 まるで、この時を待ちわびているかのようだ。

 ライムの表情を目にしたユユとヤヤは、背筋に悪寒が走った。

 何か、良からぬ事が、起きるのではないかと察して。


「で、それだけじゃないよね?」


「は、はい……」


 ライムは、報告は、まだ、あるのではないかと、推測して、尋ねる。

 これだけでは、満足できないのだ。 

 ヴィオレットは、自分のエリアにいる。

 待機せよなど、生ぬるい命令では、面白くないと。

 ヤヤは、震えながらも、うなずいた。


「こ、コーデリア様から伝言を授かったそうです。指示があるまで、待機となっていましたが、その命令を解くとの」


「へぇ、それで?」


 ヤヤは、帝国兵から受け取った報告をそのまま伝える。

 なんと、待機の命令は、解くとのことだ。

 これは、ライムにとって、喜ばしい事だ。 

 待機など、ライムにとっては、実に、退屈でしかなかったのだから。

 それゆえに、ユユとヤヤに、八つ当たりをしていたくらいだった。

 ライムは、さらに、問いかける。

 新たな命令があるのではないかと、察して。


「う、裏切りのヴァルキュリアと暗殺者を抹殺せよとのことで……」


「そう、ありがとう」


 ヤヤは、報告を続ける。

 今度は、ヴィオレットを殺せとの命令を受けたのだ。

 それを聞いたライムは、笑みを浮かべた。

 満面の笑みを。


「ふふ、きゃははっ!!」


 ライムは、笑い始める。

 狂っているかのようだ。

 今の彼女は、まさに、小悪魔のようだ。

 何をするかわからない。

 ユユとヤヤは、怯えながら、ライムを見ていた。

 ライムは笑っているというのに。


「最高ね。ヴィオレットちゃんを殺せるなんて!!」


 ライムは、喜んでいるのだ。

 これで、ヴィオレットを殺せると。

 退屈しのぎには、持ってこいなのだ。

 ライムにとっては、うれしくてたまらなかった。


「でも、早くしないといけないなぁ」


「な、なぜですか?」


 ライムは、急いで、ヴィオレットを殺そうとしているようだ。

 だが、なぜなのだろうか。 

 ヴィオレットが、自分を殺そうとしているからと言う理由ではない気がする。

 ユユは、見当もつかず、怯えながら、問いかけた。


「決まってるでしょ?そんな事も、わからないの?」


「も、申し訳ございません」


 尋ねられたライムは、少々、不機嫌になってしまった。

 自分に仕えているくせに、そんな事も、わからないのかと。

 ユユは、びくっと体を跳ね上がらせながらも、謝罪する。

 彼女の様子をうかがっていたライムは、ため息をつきながら、語り始めた。


「カレン達が、先に殺しちゃうかもしれないでしょぉ?」


 ライムが、早く、ヴィオレットを殺そうとしている理由は、ただ、一つ。

 カレン達に、獲物をとられないようにするためにだ。

 おそらく、カレン達にも、ヴィオレットの事や殺せと言う命令は、伝わっている。

 となれば、カレンは、躍起になるだろう。

 ヴィオレットを殺すために。

 自分のエリアに来るかもしれない。


「まぁ、セレスティーナは、ないかぁ。だって、ヴィオレットちゃんに執着してるし。あの女は、ヴィオレットちゃんを自分のものにしたいもんね~」


 と言っても、セレスティーナは、別だ。

 なぜなら、彼女は、ヴィオレットに執着している。

 自分のものにする為に、殺したくないと願っているのだ。

 逆に、邪魔されてしまう可能性はあったが、コーデリアの命令を背くとは、思えない。

 彼女は、一応、コーデリアの命令を聞くのだから。

 表向きは。


「でも、カレンは違う。あいつは、ヴィオレットちゃんを殺したがってたし」


 カレンは、ヴィオレットを憎んでいる。

 コーデリアからの命令を聞いて、イラついていたほどだ。

 なぜ、ヴィオレットを殺さないのかと。


「まぁ、仕方がないか~。だって、ルチアちゃんを殺したのは、ヴィオレットちゃんだもんね~」


 ライムは、なぜ、カレンが、ヴィオレットを憎んでいるのか、知っている。

 それも、殺したいほどに。

 それは、ルチアを殺したのが、ヴィオレットだからだ。

 大事な仲間を殺された。

 仲間想いのカレンにとっては、許しがたい事なのだろう。

 だからこそ、人一倍、ヴィオレットを殺したがっているのだ。


「だから、カレンが来る前に、ライムが、ヴィオレットちゃんを殺すんだから!」


「そ、そうですね……」


 カレンは、このエメラルドエリアに到着する前に、ライムは、ヴィオレットを殺すつもりだ。

 そうでなければ、カレンは、すぐに、来てしまうだろう。

 ヴィオレットを自分が殺すために。

 ユユは、怯えながらも、うなずいた。

 ライムは、上機嫌ではあるが、恐ろしく感じていたのだ。

 今までで、一番。


「でもなぁ。ただ、殺すだけじゃ、面白くないよね~」


「え、ええ」


 ライムは、瞬殺は、面白くないと思っているようだ。

 何か、企んでいるらしい。

 一体どうするつもりなのだろうか。

 ヤヤは、恐ろしさを感じていた。

 ライムが、何をするのか、予想できず。


「どうせなら、痛めつけないと。徹底的に」

 

 ライムは、ヴィオレットを徹底的に痛めつけてから殺すつもりらしい。

 やはり、恐ろしい少女だ。

 どうして、こんな恐ろしい小悪魔のような少女になってしまったのだろうか。 

 以前は、本当に、優しかったのに。

 そう思うと、ユユとヤヤは、今のライムの姿を嘆いていた。


「あ、そうだ」


 ライムは、思いついたらしい。

 だが、良からぬことであろう。

 そんな気がしてならないのだ。

 ユユもヤヤも、怯えながら、息を飲んだ。

 何を思いついたのか、想像もつかないほどに。


「ねぇ、あんた達」


「は、はい!!」


 ライムは、ユユとヤヤに歩み寄る。

 それも、満面の笑みで。

 何か、命じるつもりなのだろうか。 

 それでも、拒絶する事も、逃げることもできず、ユユとヤヤは、ただただ、うなずくだけであった。


「ライム、お願いがあるんだけど、もちろん、聞いてくれるよね?」


「……はい」


 やはり、ライムは、ユユとヤヤに、何か、させようとしているらしい。

 しかも、尋ねたのだ。

 断っては、何をするかわからない。

 これ以上、ライムを怒らせてはならない。 

 そう察したユユとヤヤは、怯えながら、うなずいた。

 ライムの命令を受けるしかなかったのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ