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楽園世界のヴァルキュリア―破滅の少女―  作者: 愛崎 四葉
第二章 狂気の地のヴァルキュリア
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第三十四話 狂い始めた狂戦士

 ヴィオレットとベアトリスが、死闘を繰り広げている間、地の壁に閉じ込められたラストは、ただ、呆然としているわけではない。

 短剣で、地の壁を破壊しようとしていたのだ。

 固有技を発動しながら。


「そらっ!!」


 ラストは、力を込めて、短剣で、地の壁を刺す。

 だが、何度、力を込めても、固有技を発動しても、地の壁は、破壊できない。

 それほど、頑丈なのだ。

 アマリアも、ロッドで、たたくが、やはり、地の壁は、破壊できなかった。


「ちっ!!ビクともしねぇ!!」


「ど、どうしたら……」


 ラストは、舌を巻く。

 何をやっても、破壊できないからだ。

 このままでは、どうすることもできないであろう。

 激しい音だけが響いてくる。

 戦いは、激しさを増しているようだ。

 ゆえに、アマリアは、焦燥に駆られていた。

 どうしたら、ここから、脱出できるのか。


「……ヴィオレットが、ベアトリスを殺すしかないだろうな」


「そんな……」


 ラストは、答える。

 地の壁から、脱出できる方法は、ただ一つしかないと答えを見出したからだ。

 ヴィオレットが、ベアトリスを殺すしかないだろう。

 そうすれば、地の壁は、消滅するはずだ。

 それを聞いたアマリアは、愕然としていた。


「何?まだ、ベアトリスのこと、守ろうとしてるの?」


「……」


 ラストは、苛立ったように、アマリアに問い詰める。

 まだ、ベアトリスの事を救おうとしているのかと。

 はっきり言って、もう、救いようがないのだ。

 ラストは、ベアトリスの様子を見た時から、そう、察したのであろう。

 アマリアは、心情を読み取られた気がして、黙ってしまった。

 彼女の様子をうかがっていたラストは、ため息をついた。

 落胆して。


「いいや。ここから、出るぞ」


「はい」


 ラストは、アマリアの答えを待たずして、判断する。

 ここから、脱出することを。

 もちろん、ベアトリスを殺すために。



 ヴィオレットは、ベアトリスと死闘を繰り広げていた。

 ヴィオレットも、ベアトリスも、もう一つの力を解放した為、戦いは、激しさを増していた。

 二人が、衝突する度に、衝撃が走り、魔法や魔技が、入り乱れ、反動が起こる。

 地の壁が、変形するほどに。


「はあっ!!」


「おらよっ!!」


 ヴィオレットが、魔技・スパーク・ブレイドを発動する。

 だが、ベアトリスは、爪で、ヴィオレットの魔法を切り裂いた。

 なんという威力だろうか。

 恐ろしく感じるほどだ。

 ベアトリスは、ヴィオレットに迫り、爪で、ヴィオレットを引き裂こうとする。

 だが、ヴィオレットは、一瞬のうちに回避し、ベアトリスから、遠ざかった。


「これならどうだ!!」


 ベアトリスが、魔技・アース・ブレイドを発動する。

 それも、何発も。

 だが、ヴィオレットは、全てを回避し、ベアトリスに迫る。

 すぐさま、魔法・スパーク・ショットを打ちこんだ。

 魔法の弾は、ベアトリスを捕らえたが、ベアトリスは、笑みを浮かべる。

 互角に戦えることに対して、喜びを感じているようだ。


「やるじゃねぇか」


 ベアトリスは、構える。

 痛みすらも、受け入れているかのようだ。

 今、ベアトリスにとっては、最高の殺し合いなのだろう。

 永遠に続けばいいと思うほどの。 

 だが、ヴィオレットは、この死闘を続けるつもりはない。

 すぐさま、ベアトリスに迫った。


「終わりだ!!」


 ヴィオレットは、固有技を発動しようとする。

 だが、その時だ。

 ベアトリスが、ヴィオレットの腕をつかんだのは。

 

「なっ!!」


「甘いな」


 ヴィオレットは、驚愕する。

 なんと、ベアトリスは、ヴィオレットのスピードに反応したのだ。

 一瞬にして、移動できてしまうというのに。

 だからこそ、ヴィオレットは、動揺した。

 何が起こったのかと。

 ベアトリスは、笑みを浮かべる。

 ヴィオレットを捕らえたことに対して、喜びを感じているかのようだ。

 ベアトリスは、固有技・シトリン・テラを発動した。

 バーサーカーモードで、発動できる固有技を。

 爪から宝石の刃が出現し、ヴィオレットを捕らえた。


「うああああっ!!」


 ヴィオレットは、何度も、体を切り裂かれ、絶叫を上げる。

 衝撃により、吹き飛ばされたヴィオレットは、体から、血を流した。

 しかも、固有技を受けたことにより、回復の速度が遅い。

 痛みで、動けなくなってしまったのだ。

 だというのに、ベアトリスは、容赦なく、ヴィオレットに迫った。


「お前の力はすげぇと思ってるよ。その速さは、異常だ。でも、力は、あたしの方が上だ」


 ベアトリスは、なぜ、ヴィオレットのスピードに反応できたのか、語る。

 それは、自分の力を使って、強引にスピードを上げたというのだ。

 ヴィオレットなら、どう動くは、予想して。

 ゆえに、ベアトリスは、ヴィオレットの腕をつかむことができたのであった。


「だから、その力を使って、スピードを出したと?」


「その通りさ!!」


 ヴィオレットは、ベアトリスの力が、それほどまでだったとは、思いもよらず、状況を把握できない。

 だが、確かに、ベアトリスは、ヴィオレットのスピードに反応した。

 認めるしかないのだろうか。

 認めたくはないのだが。

 ベアトリスは、狂気の笑みを浮かべる。

 まるで、勝ち誇ったかのように。


「これで、あたしは、お前よりも、上だぜ!!あたしが、最強だ!!」


 ベアトリスは、確信を得たかのように、天を仰いだ。

 ヴィオレットに勝ったと思い込んでいるのだろう。

 ヴィオレットを殺す事はできるかどうかは、不明だ。

 だが、ヴィオレットを打ち負かすことができれば、自分が、最強だと言いたいようだ。

 ヴィオレットは、何も、反応しなかった。

 反応する力すら、なくなってしまったのかもしれない。

 ベアトリスは、上機嫌で、構えた。


「じゃあな!!」


 ベアトリスは、固有技・シトリン・テラを発動する。

 今度こそ、ヴィオレットを仕留めるためだ。

 だが、ヴィオレットは、すぐさま、回避し、ベアトリスの背後に回った。

 ベアトリスは、驚き、反応できていない。

 今が、チャンスだ。

 ヴィオレットは、魔法・スパーク・スパイラルを発動。

 ベアトリスは、回避できず、直撃を受け、片膝をついた。


「なるほどな。お前が、殺し合いを望んでるのは、お前自身が、一番強いと、証明したいからか」


「い、いつの間に!?」


 ヴィオレットは、察したようだ。

 なぜ、ベアトリスが、殺し合いを望んだのか。

 自分に執着したのか。

 それは、ヴィオレットが、ヴァルキュリアの中で、最強だとベアトリスが認めているからだ。

 だからこそ、ベアトリスは、ヴィオレットと殺し合いを望み、打ち負かす事で、自分が、最強である事を証明したかった。 

 だが、それは、適わない。

 その理由は、ヴィオレットは、打ち負かされた振りをしたからだ。

 ベアトリスを油断させるために。

 ヴィオレットの作戦通り、ベアトリスは、油断した。

 しかも、動揺を隠せないようだ。

 今、隙だらけの状態であろう。


「だが、残念だったな。私が、全力を出したと思っているのか?」


「何?」


 なんと、ヴィオレットは、全力を出していたわけではなかった。

 今まで、手を抜いていたというのだ。

 これには、さすがのベアトリスも、驚きを隠せない。

 ベアトリスは、全力を出していたというのに。

 ヴィオレットは、彼女よりも、戦闘能力が、上だと言いたいのであろうか。


「ここからが、本番だ」


 ヴィオレットは、構える。

 本当に、ベアトリスを殺すつもりだ。

 ベアトリスは、後退した。

 怯えているようだ。

 ヴィオレットに殺されるのではないかと、察して。


「行くぞ!!」


 怯えるベアトリスに対して、ヴィオレットは、容赦なく迫った。

 それも、一瞬のうちに。

 ヴィオレットは、魔技・スパーク・ブレイドを発動。

 それも、何度も。


「うっ!!ぐっ!!」


 ベアトリスは、ヴィオレットのスピードに反応できず、直撃を受けしまう。

 それでも、ヴィオレットは、移動しながら、魔技・スパーク・ブレイドを発動し続けた。

 治癒能力が、追いつかないほどに。


「止めだ!!」


「うがあああああああっ!!!」


 徹底的に追い詰められたベアトリス。

 だが、ヴィオレットの攻撃が、収まるはずがない。

 ヴィオレットは、止めを刺せると確信して、ミラージュモードで発動できる固有技・スギライト・ライトニングを発動。

 ヴィオレットの手から宝石の刃が、出現した。

 それも、鎌の形となって。

 ヴィオレットが、手を水平に降ると、鎌も動く。

 ヴィオレットに命じられるがままに。

 鎌は、ベアトリスの腹を切り裂いた。

 ベアトリスは、絶叫を上げ、仰向けになって倒れる。

 回復の速度は、遅く、ベアトリスは、起き上がることができなかった。


「やはり、回復の速度が遅いな」


 ヴィオレットは、ベアトリスに迫る。

 しかも、ヴァルキュリアであっても、固有技を受けたものは、回復の速度が遅い事を確認するかのように。


「今なら殺せるかもしれないな」


 回復の速度が遅いため、ベアトリスは、起き上がる事も、抵抗することもできない。

 ヴィオレットは、そう、察し、通常モードに切り替えて、鎌を出現させた。

 このまま、ベアトリスを殺すつもりのようだ。


「はっ。どうだか……」


「何?」

 

 殺せると言い放ったヴィオレットに対し、ベアトリスが、鼻で笑う。

 まるで、見下しているかのようだ。 

 ヴィオレットは、ベアトリスを見下ろした。

 それも、にらむように。


「あたしが、この程度で死ぬはずがねぇ。だって、ヴァルキュリアは、不死身なんだからよ!!」


 ベアトリスは、自分が死ぬはずがないと、確信を得ているらしい。 

 なぜなら、ヴァルキュリアは、不死身だからだ。

 いくら、切り裂かれても、再生する。

 固有技を発動されてもだ。

 ゆえに、ベアトリスは、笑みを浮かべていた。

 自分達は、殺されるはずがないと。


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