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楽園世界のヴァルキュリア―破滅の少女―  作者: 愛崎 四葉
第二章 狂気の地のヴァルキュリア
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第三十三話 偽物の体のなれの果て

「そりゃあ、どういう意味だ?」


 衝撃的な言葉を聞かされたベアトリスには、理解できない。 

 作られた体と言うのは、一体、どういう意味なのだろうか。

 ヴィオレットは、何を知っているのだろうか。


「帝国にいる者の魂は、全員、作られた体に入っているんだ」


「へぇ。なんか、良くわかんねぇけど、面白れぇな」


 ヴィオレット曰く、帝国の民の魂は、作られた体に入っていると説明するが、全く、理解できない。

 同じ言葉を繰り返していただけだからだ。

 ヴィオレットは、詳しいことまで知らないのだろうか。

 だが、ベアトリスにとっては、どうでもいい。

 詳しい事が、わからなくても、今の帝国の民は、異常だったという事が知れたのだから。

 ゆえに、面白いと感じたのだろう。


「作られた体だったから、殺してたのか?」


「そうだ。作られた体で、地上に降りるとどうなるか知っているか?」


「知らねぇよ。興味ねぇ」


「だろうな」


 ベアトリスは、ヴィオレットが、帝国の民や帝国兵を殺した理由は、作られた体であるが故だと悟った。

 作られた体だという事は、本当の体は、すでに、もうどこにもない可能性がある。

 つまり、死んだという事だ。

 死人を殺していたとしても、人殺しにはならない。

 ヴィオレットは、そう言いたいのだろうか。

 ベアトリスに問いかけれらたヴィオレットは、うなずく。

 否定しないようだ。

 すると、ヴィオレットは、作られた体の状態で、地上に降りるとどうなると思うかと、ベアトリスに尋ねるが、もちろん、ベアトリスは、興味がなかった。

 ヴィオレットも、知ったうえで、尋ねてみたのであった。


「奴らが、地上に降りると、妖魔になる」


「はぁ?」


 さらに、ヴィオレットは、衝撃的な言葉を口にする。

 なんと、帝国の民が、地上に降りると妖魔になるというのだ。

 ベアトリスは、あっけにとられていた。

 今まで、自分達は、帝国とエデニア諸島を守るために、妖魔達と戦ってきたのだ。

 その妖魔が、実は、帝国の民だったと言いたいのだろうか。


「つまり、妖魔は、帝国の民のなれの果てだ。私達は、帝国の奴らを殺していたんだよ」


 ヴィオレットは、語った。

 知っていたのだ。

 帝国の民と妖魔の関係を。

 これは、カレン達も、知らない事だ。

 いや、知っていたら、ショックを受けていただろう。

 帝国の民を殺していたなど、知りたくないはずだ。

 だからなのだろうか。

 ヴィオレットが、帝国を滅ぼすと決めたのは。

 ショックを受けたのか、ベアトリスは、後退し始めた。

 それも、よろめきながら。

 うつむき、体を震わせるベアトリス。

 この事実は、ベアトリスにも、耐えられないことなのだったのだろうか。

 そう、推測し始めたヴィオレット。

 だが、その時であった。


「はは、はははは……」


 ベアトリスは、静かに、笑い始める。

 その笑いは、不気味だ。

 何を考えているかわからない。

 ヴィオレットは、警戒しながらも、立ち上がり、構えた。


「あはははははははははっ!!」


 突如、ベアトリスが、高笑いをし始めた。

 狂っているかのようだ。

 ますます、不気味に思えてならない。

 彼女は、異常だ。

 ヴィオレットは、改めて、そう思った。


「面白れぇ!!本当に、面白れぇなぁっ!!」


 ベアトリスは、狂気の笑みを浮かべながら叫ぶ。

 この異常な真実を知っても、まだ、面白いと感じるのだ。

 帝国は、まさに、狂った世界だ。

 その狂った世界を守らされていたというのに、面白いとベアトリスは、思っているようだ。


「妖魔になるから、人や精霊を殺してるのか?狂ってるな!!」


「狂ってるのは、お前の方だ!!」


 ベアトリスが、面白いと感じた理由は、ヴィオレットが、妖魔になるのを防ぐために、帝国に牙を向けたという事だ。

 妖魔になるのを止めるのではなく、殺すという手段を使った。

 それは、まさに、狂っているのだろう。

 だが、ヴィオレットは、狂っているのは、ベアトリスの方だと叫ぶ。

 もちろん、否定はしないが、ベアトリスよりは、マシだと思っているのだ。


「どうだか。帝国の奴らが、作られた体だとしたら、確かに、人殺しはしてねぇ。けどな、お前は、ルチアを殺してる。その事は、どう思ってるんだ?」


 仮に、ヴィオレットの言っている事が、真実だとしたら、確かに、人殺しはしていないと語るベアトリス。

 だが、一つだけ、ヴィオレットは、まだ、答えていない事がある。

 それは、ルチアに関しての質問だ。

 ヴィオレットは、ルチアを殺している。

 大事な仲間であり、親友を。

 彼女も、作られた体だったというのだろうか。

 いや、本当に、そうなら、ヴィオレットは、その事に関しても、語っているはずだ。

 語らないという事は、ルチアは、作られた体に入っていない可能性がある。

 ゆえに、ベアトリスは、ヴィオレットに問いかけた。


「思い出したくもないな」


「逃げるのかよ」


 ヴィオレットは、ベアトリスの問いを拒絶する。

 本当に、思い出したくないのだ。

 ベアトリスは、ヴィオレットが、逃げたと推測した。

 実際、逃げたのだろう。

 ルチアの事を、今は、思い出したくないようだ。


「まぁ、いいや。そろそろ、この姿で殺し合いも、飽きてきた頃だしな」


「何?」


 ベアトリスは、ヴィオレットが、答えない事に関しては、問い詰めないようだ。

 しかも、今の姿で戦う事に対して、飽きてきたという。

 それを聞いたヴィオレットは、警戒した。

 ベアトリスが、何をするのか、察したようだ。


「あれ、使ってやるか!!」


 ベアトリスは、力を解放する。

 おそらく、もう一つの力を使うつもりなのだ。

 宝石が光り始め、ベアトリスを包みこんだ。


「まずい!!」


 ヴィオレットは、危険を察知し、ベアトリスの元へと迫る。

 もう一つの力は、ヴィオレットにとって、厄介なのだ。

 その理由は、ベアトリスが宿しているもう一つの力は、危険なのだ。

 厄介と言ってもいいだろう。

 しかも、今のベアトリスなら、尚更だ。

 ゆえに、ヴィオレットは、すぐさま、ベアトリスを殺そうと鎌を振り下ろした。

 だが、光が、鎌をはじき、ヴィオレットを吹き飛ばした。


「うっ!!」


 吹き飛ばされたヴィオレットは、壁に激突する。

 その間に、光が止み、ベアトリスが、姿を現した。


「あは、あははははは!!!」


 ベアトリスは、高笑いをし始める。

 しかも、狂っているかのように。 

 ヴィオレットは、立ち上がり、構えた。

 ベアトリスの姿は、黄色のビキニを身に着け、黄色のレース素材のパレオを腰に巻き付けていた。

 しかも、爪は長くなっている。

 まるで、獣のようであった。


「どうよ、この力、すげぇだろ!!」


 ベアトリスは、笑みを浮かべる。 

 それも、獲物を見ているかのように。

 これこそが、もう一つの力なのだ。

 その名は、バーサーカーモード。

 攻撃力が、格段に上がり、暴走してしまう力だ。

 だが、ベアトリスは、その暴走すらも、制御している。

 ゆえに、ヴィオレットにとって、厄介であった。


「こうなったあたしは、誰も、止められねぇ。お前でもな、ヴィオレット」


 ベアトリスは、叫ぶ。 

 まるで、勝利を確信したかのようだ。

 この状況をヴィオレットは、どうするべきなのかと、推測しているのだろう。

 殺されるか、抵抗するか。

 ヴィオレットは、何も言わず、構える。

 だが、その時だ。

 ベアトリスが、力任せに、地面を蹴り、ヴィオレットに迫ったのは。


「おらああああああっ!!!」


「くっ!!」


 ベアトリスは、爪を振り下ろす。

 ヴィオレットは、鎌で、受け止めるが、ベアトリスの力の方が、上だ。

 故に、押されかけたヴィオレットは、強引に、ベアトリスの爪をはじき、後退した。

 自分も、ミラージュモードに切り替えるためだ。

 だが、ベアトリスは、すぐさま、ヴィオレットに迫る。

 そして、ヴィオレットに向けて、爪を振り下ろした。

 しかも、魔技・アース・インパクトを発動しながら。

 ヴィオレットは、魔法・スパーク・スパイラルを発動するが、ヴィオレットの魔法はかき消され、ベアトリスの爪は、ヴィオレットの左腕を引き裂いた。


「うあっ!!」


 ヴィオレットは、苦悶の表情を浮かべる。

 だが、ベアトリスは、容赦なく、ヴィオレットに迫った。


「しねえええええっ!!」


 ベアトリスは、叫びながら、爪を薙ぎ払うように、振るう。

 ヴィオレットの首を捕らえようとしていた。

 だが、ヴィオレットは、宝石の力を発動する。

 賭けに出たのだ。

 宝石の力で、ベアトリスを吹き飛ばせるかもしれない。

 宝石から光が、放たれ、ベアトリスは、吹き飛ばされた。


「がっ!!」


 吹き飛ばされたベアトリスは、地面にたたきつけられる。

 今度は、ヴィオレットが、ベアトリスに迫った。


「見くびるなよ。私も、もう一つの力がある。お前とは違うけどな」


「だろうな」


 ヴィオレットは、もう一つの力・ミラージュモードを発動したのだ。

 今のベアトリスに対抗するには、この力を発動するしかない。

 ベアトリスを確実に仕留めるには。

 ミラージュモードが発動されたというのに、ベアトリスは、笑みを浮かべている。

 待ちわびていたかのように。


「いいね、いいね!!楽しみになってきたぜ!!」


 ベアトリスは、狂気の笑みを浮かべる。

 これで、最高の殺し合いができると、確信したのだろう。

 やはり、自分の欲望を満たしてくれるのは、ヴィオレットしかいないと。


「じゃあ、続きと行こうぜ、ヴィオレット!!」


 ベアトリスは、構える。

 こうして、二人の最強の殺し合いが、始まろうとしていた。


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