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楽園世界のヴァルキュリア―破滅の少女―  作者: 愛崎 四葉
第二章 狂気の地のヴァルキュリア
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第三十一話 我慢できずに

 カレンの命令により、宮殿の地下牢に閉じ込められたベアトリス。

 宝石を回収したいところではあるが、体に埋め込まれている為、回収は、不可能だ。

 故に、鉄格子の外側から、鉄の盾を設置する事で、脱獄できないようにした。

 これも、カレンの提案らしい。 

 ゆえに、ベアトリスは、脱獄せず、牢の中にいた。

 

「……あー、つまんねぇ」


 ベアトリスは、退屈そうにつぶやいた。

 何も知ることなく、ただ、時間が過ぎていくだけ。

 そうしている間にも、ヴィオレット達が、何をしているかも、わからない。

 逃げているという事は、ないだろう。

 なぜなら、ヴィオレットは、帝国を滅ぼそうとしている。

 ゆえに、自分達も、殺すつもりだ。

 ヴァルキュリアは、ヴィオレット達の目的の妨げになるのだから。


「我慢できねぇや」


 退屈で、耐えられなくなったベアトリスは、立ち上がる。

 鉄の盾は、頑丈だ。

 そう簡単に、破壊できるはずがない。 

 カレンも、そう思っていた為、設置するように、命じたのだ。

 だが、ベアトリスは、ヴァルキュリアに変身する。

 そして、力任せに、振り下ろした。

 しかも、魔技・アース・ブレイドを発動しながら。

 斧と地のオーラが、鉄の盾にぶつかる。

 すると、鉄の盾は、いとも簡単に、鉄格子と鉄の盾は、破壊されてしまい、ベアトリスは、牢から出てしまった。


「なっ!!」


 鉄の盾が、破壊され、ベアトリスを監視していた帝国兵は、振り向いて、驚愕する。

 誰も、予想していなかったのだろう。

 ベアトリスが、いとも簡単に、鉄の盾を破壊するとは。

 カレンも、ベアトリスの腕力を甘く見ていたのだ。

 帝国兵は、剣をベアトリスに向けるが、ベアトリスは、帝国兵に迫り、彼を切り裂いた。


「がはっ!!」


 帝国兵は、血を吐いて、倒れる。

 それも、動かなくなって。

 ベアトリスは、帝国兵を殺してしまったのだ。

 今まで、殺さなかったのに。

 それほど、耐えられなかったのだろう。

 ヴィオレットと殺し合いができなかったことが。


「ちっ、やっぱ、つまんねぇな。弱いすぎるぜ」


 ベアトリスは、斧を肩に担ぐ。

 殺した帝国兵は、弱かったと、失望して。

 やはり、自分の欲望を満たしてくれるのは、ヴィオレットしかいない。

 ベアトリスは、そう、改めて、思い知った。


「さて、行こうか、ヴィオレット」


 ベアトリスは、斧を肩に担いだまま、歩き始める。

 ゆっくりと、ヴィオレットの元へ。



 ヴィオレット達は、宮殿の近くまで来ていた。

 しかも、クライドの闇ギルドのメンバーとハイネのレジスタンスのメンバー達も待機した状態で。

 あれから、ハイネに、フェイを殺した事を報告。

 ハイネも、ヴィオレット達を尾行していたようで、知っていたのだ。

 ゆえに、約束通り、協力することとなった。

 建物の角に隠れて、様子を見るヴィオレット達。


「どうだ?」


「うん、お客さんが、いっぱいだねぇ~」


 クライドは、アトワナに、尋ねる。

 見る限り、帝国兵が多い。

 やはり、そう、簡単には、通してくれそうにない。 

 だというのに、アトワナは、ゆったりとした口調で答える。 

 危機感がないかのようだ。


「行けるか?」


「誰に言ってんの?あたいらが、死ぬって思ってるの?」


「まさか」


 クライドは、ミーナに尋ねる。

 ミーナは、ムキになって答えた。

 自分達が、死ぬはずないと、思っているようだ。 

 当然、クライドも、ミーナ達が、死ぬとは、思っていない。

 すると、ウォーレットが、クライドの元へ、駆け付けた。


「そっちは、どうだ?」


「あちらは、問題ないようです。オルゾの判断なので、間違いないかと」


「ありがとう」


 ウォーレットは、報告する。

 実は、地下の入り口の様子を見に行っていたのだ。

 確かに、帝国兵は多いが、自分達なら、問題ない。

 帝国兵と互角に渡り合えるだろう。

 オルゾは、そう判断したようで、ウォーレットは、オルゾの判断を信じて、クライドに報告した。


「ヴィオレット達の方は、どうだ?」


「問題ない」


「いつでも、オッケーだよ~。って、言いたいところだったんだけど……」


 クライドは、ヴィオレット達に、突入できるかどうかを確認する。

 ベアトリスを殺せるのは、ヴィオレットだけだ。

 ゆえに、ヴィオレット達の準備が、整わなければ、突入はできない。

 ヴィオレットは、問題ないようだ。

 いつでも、いけるらしい。

 ラストも、うなずきたいところであったが、何か、疑問を抱いたかのように、視線を右へと向ける。

 実は、ラストの右隣にはアマリアがいたのだ。


「な、なんですか?」


「べっつにぃ。なんで、来たのかなって思っただけ」


 ラストに視線を向けられたアマリアは、疑問を抱く。

 何か、問題でもあるのかと。

 ラストは、理解できなかったのだ。

 なぜ、アマリアが、ここにいるのかと。

 どういうつもりなのか、知りたいのだろう。

 実は、アマリアは、自分も、参加させてほしいと、懇願したのだ。

 今から、ベアトリスを殺すというのに。

 なぜ、反対しようとしなかったのだろうか。

 アマリアは、騙している様子は、見られず、クライドは、承諾した。


「安心してください。あなた達を止めるためではありません」


「へぇ、じゃあ、なんで?」


 アマリアは、ヴィオレット達を止めるためではないらしい。

 だったら、尚更、理解できない。

 なぜ、ここにいるのか。

 ラストは、問いかけた。

 理由が知りたくて。


「……ベアトリスは、おそらく、脱獄していると思います。ですから、こちらで捕らえるためです!!」


「いい推測だけど、考え方はあまちゃんのまんまだな」


「なんとでも、仰ってください」


 アマリアは、ベアトリスが、大人しく牢にいるとは思っていないらしい。

 ゆえに、脱獄していると考えたようだ。

 だが、ベアトリスを野放しにするつもりはなく、自らの手で、ベアトリスを捕らえるつもりだ。

 彼女を捕らえて、罪を償ってもらう為に。

 ラストは、アマリアの推測には、感心しているが、自らの手で、捕らえるという事に関しては、甘いと思っているらしい。

 それでも、アマリアの決意は変わらなかった。


「行くぞ」


「わかった」


 ヴィオレットは、クライドに合図を送る。

 準備万端のようだ。

 クライドは、ラセル達にも、合図を送り、突撃の為、構えた。


「突撃だ!!」


 クライドが、叫ぶと、闇ギルドのメンバーとハイネのレジスタンスのメンバーは、地面を蹴り、帝国兵達に向かっていく。

 帝国兵達は、クライド達に気付き、斬りかかった。

 だが、ここで、クライド達が、遅れを取るわけがない。

 クライド達は、帝国兵を切り裂いていく。

 と言っても、帝国兵も、押されているわけではない。

 宮殿前は、乱戦状態となった。


「私達は、地下から行く、いいな?」


「了解」


「はい!!」


 クライド達の様子をうかがっていたヴィオレット、ラスト、アマリア。

 状況を確認しているようだ。

 今なら、突入できるかどうだ。

 だが、見たところ、自分達が、気付かれることはないようだ。

 乱戦状態だ。

 当然であろう。

 今のうちに、ヴィオレット達は、地下から侵入して、ベアトリスを殺す事を決意した。

 もちろん、アマリアは、別の目的で、地下に向かうが。



 その頃、ベアトリスは、斧を肩に担いで、歩いていた。

 斧には、大量の血がついている。

 しかも、ベアトリスの後ろには、血を流して、倒れている帝国兵の姿があった。

 全て、ベアトリスが、殺したのだろう。


「ん?なんだか、騒がしいな」


 足音や物音が聞こえる。

 ベアトリスは、何かあったのではないかと、察したようだ。


「ヴィオレットが来てるかもしれねぇな」


 ベアトリスは、ヴィオレットの仕業ではないかと、踏んでいるらしい。

 相当、ヴィオレットに執着しているようだ。

 その時であった。


「ん?あいつらは……」


 ベアトリスは、ヴィオレット達が、地下牢の中を走っているのを目にした。

 もちろん、ラストとアマリアも、いたが。


「一緒にいやがるのか……」


 ベアトリスは、イラついているようだ。

 ラストとアマリアがいる。

 これでは、ヴィオレットと殺し合いができない。

 彼らが、邪魔だったのだ。

 ベアトリスにとって。


「けど、ちょうどいいかもな」


 ベアトリスは、不敵な笑みを浮かべる。

 ヴィオレット達は、まだ、気付いていないからだ。

 ベアトリスがどこにいるのかを。

 ゆえに、ベアトリスは、静かに、ヴィオレット達を尾行し始めた。



 そうとも、知らないヴィオレット達は、広い部屋にたどり着く。


「いたか?」


「いないな」


「どこに行ったのでしょうか……」


「わからない。地下は、全部、探したが……」


 ベアトリスは、どこにもいなかった。

 くまなく探したはずなのだ。

 一体、どこに行ってしまったのだろうか。

 アマリアは、振り返り、戻り始めようとする。

 もしかしたら、ベアトリスが、来ているのではないかと、推測して。

 だが、その時だ。

 アマリアの足元から、魔方陣が、浮かび上がったのは。


「待て!!アマリア!!」


「え?」


 ラストは、アマリアの足元から浮かび上がった魔法陣に気付き、叫ぶ。

 とっさに、アマリアの名を呼んで。

 初めてラストに名前を呼ばれたアマリアは、振り向くが、魔法はすでに発動されようとしていた。

 ラストは、地面を蹴り、アマリアを押しのけた。


「きゃっ!!」


 アマリアは、突き飛ばされ、尻餅をつく。

 だが、地の壁は、ラストとアマリアを取り囲んでしまった。


「ラスト!!アマリア!!」


 ヴィオレットは、少々、遅れて、ラストとアマリアが、地の壁に閉じ込められてしまった事に気付き、二人の元へと駆け寄った。


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