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楽園世界のヴァルキュリア―破滅の少女―  作者: 愛崎 四葉
第一章 裏切り者と失楽園
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第十七話 終わりへと近づいて

 深夜、数十人の男女が、モルガナイトエリアからアメジストエリアへと入る。

 移住と言うわけではなさそうだ。

 帝国に見放された四つのエリアなら、行き来できる。

 だが、何か、様子がおかしい。

 何かを狙って、入ってきたとしか思えなかった。


「潜入作戦は、成功したな」


「ああ、後は……」


 アメジストエリアへ入ると男性が、語りかける。

 どうやら、彼らは、帝国兵のようだ。

 変装して、潜入したのだろう。

 おそらく、コーデリアの作戦を実行しに来たのだろう。


「裏切りのヴァルキュリアを殺す事だ」


 彼らの狙いは、ヴィオレットのようだ。

 今までは、捕らえよと命じられてきたが、今回は、殺せと命じられているらしい。

 ヴィオレットの魂を狙っていたコーデリアが、なぜ、殺そうとしているのだろうか。

 意図は、読めないが、帝国兵達は、不敵な笑みを浮かべていた。

 これで、ヴィオレットを殺せると、喜んでいるかのようであった。



 時間が経ち、朝になる。

 ヴィオレット、ラストは、ジーリアの屋敷の中を歩いていた。

 その時だ。

 ジーリアと会ったのは。


「おはよう」


「おはよう、ジーリア」


 ジーリアは、挨拶を交わす。

 昨日、ラストが、ノラを殺したというのに、責めていないようだ。

 当然であろう。

 ジーリアが望んだことなのだ。

 裏切り者を殺してほしいと。

 ラストは、それを実行しただけだ。

 ゆえに、ジーリアは、ラストの事を恨んでいるはずがなかった。


「……聖女様はどうしている?」


「……ふさぎこんでる。まぁ、仕方がないさ」


 ジーリアは、アマリアの様子を尋ねる。

 気にしているのだろう。

 ラストは、少々、ためらいながらも、答えた。

 アマリアは、部屋に閉じこもっているのだ。

 ヴィオレットも、ラストも、拒絶して。

 仕方のない事だ。

 ラストは、そう、割り切っていた。


「あまり、自分を責めるなよ?」


「自分、責めてたら、暗殺者やれないんだけど」


 ジーリアは、ラストを心配した。

 だが、ラストは、笑って、話す。

 自分は、暗殺者だ。

 いちいち、自分を責めていたら、暗殺者などやっていられないから。

 それは、ラストが、暗殺者になると決めた時から、言い聞かせていたことであった。


「ジーリア、作戦会議を開きたい」


「あいつらを、殺すためのか?」


「……そうだ」


 ヴィオレットは、作戦会議を開きたいと、ジーリアに申し出る。

 それを聞いたジーリアは、ヴィオレットが、何をするつもりなのか、悟ったようだ。

 だが、「あいつら」とは、いったい誰の事なのだろうか。

 不明ではあるが、ヴィオレットは、うつむきながら、答える。

 もう、心情を隠しきれていないように、ラストは、思えてならなかった。


「酒場に集合だ。俺の仲間にも伝えとく」


「わかった」


 ジーリアは、酒場に来るようにとヴィオレットとラストに告げる。

 ヴィオレットは、静かにうなずいた。


「で、聖女様は、どうする?」


「……そのままにしておこうぜ」


「了解だ」


 ジーリアは、アマリアの事を気にかけているようだ。

 だが、ラストは、何も、言わないでおこうと告げる。

 今、アマリアに話すのは、良くないだろう。

 また、アマリアは、自分達を責めるだろうから。

 何も知らないほうが、幸せな事もある。

 ゆえに、ラストは、アマリアには、告げないでおこうと判断した。



 アマリアは、部屋で、ふさぎ込んでいる。

 たった一人で。


「……ノラさん」

 

 アマリアは、ノラの事を考えていた。

 ノラの死を思い浮かべてしまうのだ。

 最後の表情も、脳裏にこびりついている。

 アマリアにとって、衝撃的であり、忘れられない辛い事なのだろう。


「なぜ、あんなことを……」

 

 アマリアには、理解できなかった。

 なぜ、ラストが、ノラを殺したのか。 

 ヴィオレットは、変わってしまったのか。


――本当に、ヴィオレットは、帝国を滅ぼそうとしているの?どうして……。

 

 アマリアは、思考を巡らせる。

 なぜ、ヴィオレットは、帝国を滅ぼそうとしているのか。

 その時であった。

 昨日、ヴィオレットが、告げたあの言葉。

 「裏切り者は、殺す。だから、私も、狙われている。どんな理由があってもな」と言う言葉を。


――どんな理由があっても……あの子は、そう言ってた。もしかして、何かあったって事?ヴィオレットにも、あの人にも……。


 アマリアは、推測した。

 どんな理由があっても、裏切り者は、ノラのように、殺される。

 ヴィオレットは、そう言っていたが、ヴィオレットが、華のヴァルキュリア・ルチアを殺したのも、何か理由があるのではないかと。

 そして、ラストにも。

 そう思うと、アマリアは、立ち上がり、ドアの前に立った。


「ねぇ、誰か来てください。お願いです」


 アマリアは、ドアを強くたたく。

 誰でもいいから、来てほしいと呼んでいるようだ。

 すると、すぐさま、ドアが開き、女性がアマリアの部屋に入った。

 その女性は、レジスタンスのメンバーだ。

 アマリアの監視をしろと命じられていた。

 不本意であったが。


「なんでしょうか?聖女様」


 女性は、苛立ったように問いかける。

 アマリアの事を快く思っていないようだ。


「お願いがあります」


「だから、何でしょうか?」


 自分が、忌み嫌われていると感じたアマリア。

 それでも、怖気づくことなく、話しかけた。

 女性は、ため息をつきながら、問いかける。

 彼女の我がままに着き合わされるのではないかと、懸念しながら。


「……ヴィオレット達の元へ連れて行ってください。逃げも隠れもしませんから」


「え?」


 アマリアは、ヴィオレット達に会せてほしいと懇願する。

 逃げるつもりも、隠れるつもりもないと、言って。

 これには、女性も、予想外であり、驚き、あっけにとられていた。



 ヴィオレットとラストは、屋敷を出て、酒場にたどり着く。

 すると、酒場では、ジーリアを中心としたレジスタンスのメンバーが、集まっていた。

 ジーリアが呼びかけてくれたようだ。


「集まったぜ」


「サンキューな」


 ヴィオレットとラストを目にしたジーリアは、笑みを浮かべる。

 待っていたようだ。

 ラストは、手を上げて、お礼を述べた。


「よし、皆、聞いてくれ。俺達は、本格的に、帝国を滅ぼしに行こうと思ってる。だから、協力してくれないか?もちろん、礼は、弾むぜ」


 ラストは、説明する。

 帝国を滅ぼすつもりだと。

 もちろん、彼らも、そのつもりだ。

 そのために、レジスタンスを結成したのだから。

 だが、改めて、ラストは、宣言したのだろう。

 協力してくれれば、礼をすると告げて。


「いいけどよ、具体的に何するんだ?」


「やっぱ、女帝を暗殺するのか?」


「それは、最終目的だ」


「最終?他に何かするってことか?」


 もちろん、レジスタンスのメンバーが、反論するはずがない。

 だが、何をするのかは、明確になっていない。

 男性が、問いかける。

 帝国を滅ぼすという事は、女帝・コーデリアを殺すのかと。

 だが、ヴィオレットは、うなずくが、彼女は、最後の標的のようだ。

 つまり、彼女を殺す前に、何かするという事なのだろう。


「私達の最初の目的は……」


 ヴィオレットは、最初の目的は何なのかを答えようとする。

 だが、その時だ。

 足音が聞こえてきたのは。

 それも、バタバタと。


「ん?なんだ?」


 酒場にいた者たちは、騒ぎ始める。 

 一体、どうしたのだろうかと。

 ヴィオレット達も、動揺した。

 すると、フードをかぶったアマリアが、女性と共に、酒場に入った。

 それも、堂々と。


「あ、あいつ……」


「アマリア……」


 ヴィオレットとラストは、動揺している。

 当然であろう。

 まさか、アマリアが、ここを訪れるとは思いもよらなかったのだ。

 ゆえに、二人は、アマリアが、なぜ、ここを訪れたのか、見当もつかなかった。


「聞きたいことがあります」


「何だ?」


 アマリアは、真剣な眼差しで、ヴィオレット達に話す。

 何を聞こうというのだろうか。

 ヴィオレットは、戸惑いを隠して、アマリアに尋ねた。

 しかし、アマリアは、尋ねようとした直後、複数の男女が、酒場に押し寄せてきたのだ。

 アマリアは、バランスを崩しそうになりながらも、振り向いた。


「あ、貴方達は……」


「今度は、なんだよ!!」


 アマリアは、驚き、戸惑っているようだ。

 酒場にいる者達も、声を荒げた。

 一体、何が起こっているのか、理解できないのだろう。

 苛立っているようだ。

 その時だ。

 複数の男女が、魔法や魔技を発動しようとした。


「待て!!」


 ラストは、何かを察したようで、アマリアの服をつかみ、強引に、自分の元へと引き寄せる。 

 その直後、彼らの魔法と魔技は、放たれた。

 オーラは刃や矢と化し、渦となって酒場にいた者たちへと襲い掛かった。


「うわっ!!」


「ぎゃっ!!」


 レジスタンスのメンバーは、うめき声を上げる。

 魔法や魔技に直撃してしまったのだろう。

 反応することすらできないまま。

 だが、ヴィオレットは、反応したようで、魔法・スパーク・ショットを発動して、反撃する。

 オーラがぶつかり合い、爆発を引き起こす。 

 ラストは、アマリアの前に立ち、彼女をかばった。


「だ、大丈夫か?」


「え、ええ……ですが、いったい何が……」


 ラストは、歯を食いしばっている。

 魔法や魔技を受けてしまったようだ。 

 アマリアを守るために。

 アマリアは、どうやら、無事らしい。

 だが、何が起こったのか、見当もつかないようだ。

 その時だ。

 魔法や魔技を発動した者達が、帝国の腕章を取り出したのは。


「っ!!」


 アマリアは、絶句した。

 まさか、帝国兵が、乗り込んできたとは、思いもよらなかったのだろう。


「見つけたぞ!!裏切りのヴァルキュリア!!」


 帝国兵達は、ヴィオレットに剣を向けた。

 ヴィオレットを狙っているようだ。

 ヴィオレットは、彼らをにらみ、構えた。


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